162 / 393
文化祭編
第9話
しおりを挟む
「というか、なっちゃんも水臭いね~。なんで何にも話してくれなかったのさ? いつノロケ話が聞けるのかなって、楽しみにしてたのに」
「だ、だってそんな……こんなこと、おおっぴらに話せないじゃないか」
翔太はたまたま偏見のない人だったが、他の人もそうとは限らない。「男同士でつき合うなんてキモい!」とか「現役教師と生徒の交際なんてけしからん!」と思う人は、山のようにいる。
急に不安になってきて、夏樹はこっそり翔太に聞いた。
「……あのさ。翔太が気付いたってことは、他の人たちも薄々感付いてるのかな」
「んー……まあ、噂にしてる人はいるかもね。でもなっちゃんがハッキリ認めない限りは大丈夫じゃないかな?」
「……そうか?」
「そうだって。こういうのは決定的な証拠を掴まれない限り、とぼけ続ければなんとかなるもんだし。先生だって、なんだかんだで言い訳上手だから……なっちゃんが気を付ければ多分バレないと思う」
俺が気を付けなきゃいけないのか……と思ったけれど、確かに一番ボロを出しそうなのは自分かもしれない。以後、注意しよう。
キチンとネクタイを結び直し、夏樹は翔太と校舎裏の離れに向かった。
普段は滅多に来ることのない(というか、ぶっちゃけ初めて来た)場所には、確かにこぢんまりとした和風の建物があった。小さいけれど決して貧相ではなく、ほのかな品格が漂っている。
(これが茶室か……)
初めて訪れた場所なのに、不思議と身体に馴染むような気がする。日本人のDNAに組み込まれている「和」の心が、静かに刺激されるような感覚がある。
茶道ってハードルが高いと思ってたけど、俺……意外とこういうの好きかも……。
「おっ! やっと来たな。準備できてるぞ~」
タイミングよく市川が茶室から出て来てくれた。いつものジャージ姿ではなく、ちゃんと着物に袴を纏っている。
「だ、だってそんな……こんなこと、おおっぴらに話せないじゃないか」
翔太はたまたま偏見のない人だったが、他の人もそうとは限らない。「男同士でつき合うなんてキモい!」とか「現役教師と生徒の交際なんてけしからん!」と思う人は、山のようにいる。
急に不安になってきて、夏樹はこっそり翔太に聞いた。
「……あのさ。翔太が気付いたってことは、他の人たちも薄々感付いてるのかな」
「んー……まあ、噂にしてる人はいるかもね。でもなっちゃんがハッキリ認めない限りは大丈夫じゃないかな?」
「……そうか?」
「そうだって。こういうのは決定的な証拠を掴まれない限り、とぼけ続ければなんとかなるもんだし。先生だって、なんだかんだで言い訳上手だから……なっちゃんが気を付ければ多分バレないと思う」
俺が気を付けなきゃいけないのか……と思ったけれど、確かに一番ボロを出しそうなのは自分かもしれない。以後、注意しよう。
キチンとネクタイを結び直し、夏樹は翔太と校舎裏の離れに向かった。
普段は滅多に来ることのない(というか、ぶっちゃけ初めて来た)場所には、確かにこぢんまりとした和風の建物があった。小さいけれど決して貧相ではなく、ほのかな品格が漂っている。
(これが茶室か……)
初めて訪れた場所なのに、不思議と身体に馴染むような気がする。日本人のDNAに組み込まれている「和」の心が、静かに刺激されるような感覚がある。
茶道ってハードルが高いと思ってたけど、俺……意外とこういうの好きかも……。
「おっ! やっと来たな。準備できてるぞ~」
タイミングよく市川が茶室から出て来てくれた。いつものジャージ姿ではなく、ちゃんと着物に袴を纏っている。
0
お気に入りに追加
621
あなたにおすすめの小説

就職するところがない俺は男用のアダルトグッズの会社に就職しました
柊香
BL
倒産で職を失った俺はアダルトグッズ開発会社に就職!?
しかも男用!?
好条件だから仕方なく入った会社だが慣れるとだんだん良くなってきて…
二作目です!





ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる