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夏休み編
第4話
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小一時間くらいで、市川の車が家の前にやってきた。いつも学校帰りに乗っている国産車だ。夏樹は自然と気分が高揚してきた。
「おー、夏樹! お待たせ!」
運転席から市川が顔を出してくる。今日はさすがにいつものジャージ姿ではなく、二十代の若者らしいラフな格好をしていた。
夏樹は当たり前のように助手席のドアを開け、これまた当たり前のように乗り込んだ。
市川が嬉しそうに話しかけてくる。
「腹減ってない? 昼飯食べに行く?」
「いらないです。最近そんなに食欲なくて」
「なんだ? 夏バテか? 俺、夏バテとか全然経験ないわ」
「そりゃ、先生は体力馬鹿の変態教師ですからね」
自分より十歳も年上だけど、言いたい放題に言えるところもまた気に入っている。
市川がなめらかに車を走らせ、しばらく行ったところで赤信号に引っ掛かった。
「なあ、夏樹」
「なんですか?」
振り向いた途端、市川はハンドルから左手を離し、夏樹の首に回してぐいっと引き寄せた。シートベルトのせいで座席からはほとんど離れなかったけれど、動くこともできなかった。
市川は一瞬だけ夏樹の髪に顔を埋め、うなじの辺りを軽く抱くと、またパッと突き放した。
「なんだー、髪洗って来なかったのかー」
「……えっ?」
「せっかくリクエストしたのにー」
と、子供っぽく口を尖らせる市川。
不意打ちの行動に返す言葉が見つからず、夏樹はかあっと頬を染めた。生え際の辺りに、唇が押し付けられた感触が残っている。
信号が変わり、車は再び走り出した。
何か言ってやらなくてはと思い、夏樹はやっとこれだけ言った。
「……この変態」
「かもな。でもそういう変態教師が好きなんだろ?」
「っ……!」
ますます何と言っていいかわからなくなり、夏樹はぷいっとそっぽを向いた。
「おー、夏樹! お待たせ!」
運転席から市川が顔を出してくる。今日はさすがにいつものジャージ姿ではなく、二十代の若者らしいラフな格好をしていた。
夏樹は当たり前のように助手席のドアを開け、これまた当たり前のように乗り込んだ。
市川が嬉しそうに話しかけてくる。
「腹減ってない? 昼飯食べに行く?」
「いらないです。最近そんなに食欲なくて」
「なんだ? 夏バテか? 俺、夏バテとか全然経験ないわ」
「そりゃ、先生は体力馬鹿の変態教師ですからね」
自分より十歳も年上だけど、言いたい放題に言えるところもまた気に入っている。
市川がなめらかに車を走らせ、しばらく行ったところで赤信号に引っ掛かった。
「なあ、夏樹」
「なんですか?」
振り向いた途端、市川はハンドルから左手を離し、夏樹の首に回してぐいっと引き寄せた。シートベルトのせいで座席からはほとんど離れなかったけれど、動くこともできなかった。
市川は一瞬だけ夏樹の髪に顔を埋め、うなじの辺りを軽く抱くと、またパッと突き放した。
「なんだー、髪洗って来なかったのかー」
「……えっ?」
「せっかくリクエストしたのにー」
と、子供っぽく口を尖らせる市川。
不意打ちの行動に返す言葉が見つからず、夏樹はかあっと頬を染めた。生え際の辺りに、唇が押し付けられた感触が残っている。
信号が変わり、車は再び走り出した。
何か言ってやらなくてはと思い、夏樹はやっとこれだけ言った。
「……この変態」
「かもな。でもそういう変態教師が好きなんだろ?」
「っ……!」
ますます何と言っていいかわからなくなり、夏樹はぷいっとそっぽを向いた。
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