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第百九話
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「……俺は九尾が好きだ。九尾がいない人生なんて全然楽しくないし……それに何より、俺自身が俺のことを許せなかった。一番大切な人を守れなかったくせに、このままのうのうと生きていくなんてできなかった……」
「晴斗……」
「それに、玉藻前もさ……。あいつ、やりたい放題やってたけど……本当はずっと晴明さんのこと忘れられなかったみたいだから」
「えっ……?」
晴斗は、玉藻前が抱えていた本当の気持ちを簡単に話して聞かせた。
九尾は何も言わずに晴斗の話に耳を傾けていたが、一通り話が終わるとポツリと呟いた。
「……彼女も、私と全く同じだな」
「いやいや、全然違うだろ。九尾は……」
「……いや、根本的な気持ちは同じだ。私も晴明に裏切られたと思って、心が壊れてしまいそうなほど辛かった。あの時の気持ちをずっと抱えたまま生きていたら、私もきっと玉藻前のようになっていただろう。私は晴斗に出会えたから傷を癒す機会にも恵まれたけど、玉藻前はそういう機会に恵まれなかった……それだけの差だ」
「九尾……」
「きっと彼女は……私以上に、晴明を愛していたんだろうな……」
「…………」
「ところで、その玉藻前はどこに行ったんだ? もう三途の川を渡ったのか?」
「あ、ああ……そう言えば姿が見えないな。玉藻前のことだから、さっさと晴明さんに会いに行ったのかもしれないぞ」
晴斗はその場に立ち上がり、九尾に手を差し伸べた。九尾もその手を取って立ち上がった。
「そろそろ行くか。ずっとここにいてもしょうがないしな」
「ああ……。でも、舟乗り場はどこなんだろう?」
「そこら辺にあるんじゃないか? ちょっと歩いてみようぜ」
手を繋ぎながら、二人は三途の川の岸辺を歩いた。
「晴斗……」
「それに、玉藻前もさ……。あいつ、やりたい放題やってたけど……本当はずっと晴明さんのこと忘れられなかったみたいだから」
「えっ……?」
晴斗は、玉藻前が抱えていた本当の気持ちを簡単に話して聞かせた。
九尾は何も言わずに晴斗の話に耳を傾けていたが、一通り話が終わるとポツリと呟いた。
「……彼女も、私と全く同じだな」
「いやいや、全然違うだろ。九尾は……」
「……いや、根本的な気持ちは同じだ。私も晴明に裏切られたと思って、心が壊れてしまいそうなほど辛かった。あの時の気持ちをずっと抱えたまま生きていたら、私もきっと玉藻前のようになっていただろう。私は晴斗に出会えたから傷を癒す機会にも恵まれたけど、玉藻前はそういう機会に恵まれなかった……それだけの差だ」
「九尾……」
「きっと彼女は……私以上に、晴明を愛していたんだろうな……」
「…………」
「ところで、その玉藻前はどこに行ったんだ? もう三途の川を渡ったのか?」
「あ、ああ……そう言えば姿が見えないな。玉藻前のことだから、さっさと晴明さんに会いに行ったのかもしれないぞ」
晴斗はその場に立ち上がり、九尾に手を差し伸べた。九尾もその手を取って立ち上がった。
「そろそろ行くか。ずっとここにいてもしょうがないしな」
「ああ……。でも、舟乗り場はどこなんだろう?」
「そこら辺にあるんじゃないか? ちょっと歩いてみようぜ」
手を繋ぎながら、二人は三途の川の岸辺を歩いた。
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