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第十七話
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――あ、キツネって綺麗好きなんだっけ……。
触るなと言われたから見ているだけにしているが、手櫛ではやりにくいのではないだろうか。尻尾が九本あると一人でやるのも大変だと思う。
晴斗は引き出しからブラシを取り出し、九尾に言った。
「これ使うか? 手でやるより、毛繕いしやすいと思うぞ」
「……どうも」
彼は素直にブラシを受け取り、尻尾の毛を丁寧にブラッシングし始めた。乱れた毛並みがあっという間にツヤツヤに整っていき、キラキラ輝き始めた。
ほう……と溜息を洩らしつつ、晴斗は聞いてみた。
「俺も手伝おうか?」
「いい。自分でやる」
「でも、尻尾九本もあると大変じゃないか?」
「別に。いつもやっていることだし……。それに、手が足りない時は晴明が……」
「え? 晴明さんに?」
「……いや、なんでもない」
九尾はくるりと晴斗に背を向け、一人で毛繕いを再開してしまった。その背はどこか悲しげに見えた。
――自分の毛繕い、晴明さんにやってもらってたのか……。
やはり安倍晴明とはかなり親しい間柄だったらしい。人にあまり懐かないキツネが自分の毛繕いを任せるくらいなのだから。確かに、今までの九尾の取り乱し方を見ると、ただならぬ関係だったのはなんとなく想像できるが……。
「なあ……九尾って、晴明さんとはどういう関係だったんだ?」
「どうって……」
「安倍晴明って陰陽師だよな? 陰陽師と妖怪って仲良くできるものなのか? どちらかというと敵対してるイメージの方が強いんだが……」
そう言った途端、九尾の雰囲気が一変した。今まで落ち込みがちでやや厭世的だった空気が、一瞬にして火を噴くようなものにすり替わった。整えたはずの九本の尻尾が全て逆立ち、耳までピンと尖ったように張り詰める。
――やべ……!
地雷を踏んでしまったことに気づき、謝ろうとした時にはもう遅かった。
触るなと言われたから見ているだけにしているが、手櫛ではやりにくいのではないだろうか。尻尾が九本あると一人でやるのも大変だと思う。
晴斗は引き出しからブラシを取り出し、九尾に言った。
「これ使うか? 手でやるより、毛繕いしやすいと思うぞ」
「……どうも」
彼は素直にブラシを受け取り、尻尾の毛を丁寧にブラッシングし始めた。乱れた毛並みがあっという間にツヤツヤに整っていき、キラキラ輝き始めた。
ほう……と溜息を洩らしつつ、晴斗は聞いてみた。
「俺も手伝おうか?」
「いい。自分でやる」
「でも、尻尾九本もあると大変じゃないか?」
「別に。いつもやっていることだし……。それに、手が足りない時は晴明が……」
「え? 晴明さんに?」
「……いや、なんでもない」
九尾はくるりと晴斗に背を向け、一人で毛繕いを再開してしまった。その背はどこか悲しげに見えた。
――自分の毛繕い、晴明さんにやってもらってたのか……。
やはり安倍晴明とはかなり親しい間柄だったらしい。人にあまり懐かないキツネが自分の毛繕いを任せるくらいなのだから。確かに、今までの九尾の取り乱し方を見ると、ただならぬ関係だったのはなんとなく想像できるが……。
「なあ……九尾って、晴明さんとはどういう関係だったんだ?」
「どうって……」
「安倍晴明って陰陽師だよな? 陰陽師と妖怪って仲良くできるものなのか? どちらかというと敵対してるイメージの方が強いんだが……」
そう言った途端、九尾の雰囲気が一変した。今まで落ち込みがちでやや厭世的だった空気が、一瞬にして火を噴くようなものにすり替わった。整えたはずの九本の尻尾が全て逆立ち、耳までピンと尖ったように張り詰める。
――やべ……!
地雷を踏んでしまったことに気づき、謝ろうとした時にはもう遅かった。
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