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第8話
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その男性は、エンデと名乗った。
「きみは『ゼクス』と言ったね」
「はい! 六番目に生まれた犬だから『ゼクス』だそうです。でも、他の兄弟はみんなそれぞれ違うペットショップに売りに出されたんで、兄弟の顔はわからないんですけどね。ちなみに親の顔もよくわかりません。でもきっと、両親とも揃って美形だったんだろうなって思います。ほら……俺、この傷がなければ結構な美形でしょ?」
冗談交じりにそう聞いたら、さらりとこんなことを言われた。
「傷があってもきみは美しいよ」
「えっ……?」
「人の美醜は外見だけじゃない。私を助けてくれたきみは、十分美しい」
「でも、それならエンデさんだって俺を……」
「いや、私は誰かを助ける以上に誰かを殺しているから」
「え……でも……」
先程のガルーのボスのことを言っているのだろうか。でもそんなこと言ったら、ゼクスだって何匹かガルーを撃ち殺しているのだが……。
「ここだよ」
エンデの家は、道なき道を進んだ先にあった。太い木々に囲まれるように、ひっそりと木造の小屋が建っており、山の奥の隠れ家という印象を受けた。
(犬の耳や鼻がなかったら、ここまで帰って来られないかもな……)
どうやらエンデという魔法使いは、極力人と関わらないように生きているらしい。
やはり彼の特異体質が原因なんだろうか。それとも、もっと別の理由が……?
「……で、どうかな」
「えっ? 何がですか?」
急に話を振られて、ゼクスはエンデに向き直った。
「明日、きみの飼い主を捜しに行こうと思うんだけど、何か希望はあるかい?」
「……はい? いや、飼い主ってそんな。俺、まだエンデさんに恩返ししてません」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。私の元にいるより、他の家族に囲まれた方がきみも幸せになれるはずだ」
「それは……。でも、エンデさんは一人で寂しくないんですか?」
「……どうかな。そんな感覚、もうとっくに忘れてしまった」
エンデの目が少し遠くなった。外見は若いのに、雰囲気だけ一気に老けてしまったように見えた。
「エンデさん……」
聞くなら今しかないと思い、ゼクスは思い切って尋ねてみた。
「きみは『ゼクス』と言ったね」
「はい! 六番目に生まれた犬だから『ゼクス』だそうです。でも、他の兄弟はみんなそれぞれ違うペットショップに売りに出されたんで、兄弟の顔はわからないんですけどね。ちなみに親の顔もよくわかりません。でもきっと、両親とも揃って美形だったんだろうなって思います。ほら……俺、この傷がなければ結構な美形でしょ?」
冗談交じりにそう聞いたら、さらりとこんなことを言われた。
「傷があってもきみは美しいよ」
「えっ……?」
「人の美醜は外見だけじゃない。私を助けてくれたきみは、十分美しい」
「でも、それならエンデさんだって俺を……」
「いや、私は誰かを助ける以上に誰かを殺しているから」
「え……でも……」
先程のガルーのボスのことを言っているのだろうか。でもそんなこと言ったら、ゼクスだって何匹かガルーを撃ち殺しているのだが……。
「ここだよ」
エンデの家は、道なき道を進んだ先にあった。太い木々に囲まれるように、ひっそりと木造の小屋が建っており、山の奥の隠れ家という印象を受けた。
(犬の耳や鼻がなかったら、ここまで帰って来られないかもな……)
どうやらエンデという魔法使いは、極力人と関わらないように生きているらしい。
やはり彼の特異体質が原因なんだろうか。それとも、もっと別の理由が……?
「……で、どうかな」
「えっ? 何がですか?」
急に話を振られて、ゼクスはエンデに向き直った。
「明日、きみの飼い主を捜しに行こうと思うんだけど、何か希望はあるかい?」
「……はい? いや、飼い主ってそんな。俺、まだエンデさんに恩返ししてません」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。私の元にいるより、他の家族に囲まれた方がきみも幸せになれるはずだ」
「それは……。でも、エンデさんは一人で寂しくないんですか?」
「……どうかな。そんな感覚、もうとっくに忘れてしまった」
エンデの目が少し遠くなった。外見は若いのに、雰囲気だけ一気に老けてしまったように見えた。
「エンデさん……」
聞くなら今しかないと思い、ゼクスは思い切って尋ねてみた。
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