4 / 21
第3話 アンの夫視点
しおりを挟む
はじめて会った時から気に入らなかった。 どこから見ても貴族令嬢の型を押したように、貴族としての教養と礼儀を身に付けたどこに出しても恥ずかしくない令嬢。容姿もまあ見苦しくはない。しかし人形のように大人しく無言なのが気に入らなかった。
緊張しているのかと思い、めずらしく女に興味がない彼にしては気を十分につかったつもりだった。
でも余計彼女はなにかを硬化させるばかりで、なかなか打ち解けられなかった。
彼はその時点で怒っていた。何故女ごときに気をつかわなければならぬのか? 当時、男尊女卑は激しかった。
それなりの地位を持つ父親をもたなければ女などいつでも処分できる玩具に過ぎなかった。
彼もまだ若く傲慢だったのだ。そして、女に興味を持たず、男のほうに性癖が向いていると気づいた頃だった。
そんな折、父には逆らえず、彼、ジェイムスはしぶしぶ興味がないあったこともない女と父と王の命で政略結婚をすることになった。
これは父に厳しくも愛されたジェイムスにとって与えられた理不尽であった。
何故、興味もない疎ましい女と結婚を?
家のためか? 俺は家のための繁栄の道具か?
今更のように、ジェイムスは貴族の家制度の厳しさと恐ろしさに身を震わせた。
アンの父親は、ジェイムスと親しく同盟を結んでいる権力がある有力な貴族だった。
彼は理不尽な怒りと屈辱に身を震わせていると、アンはすまなそうに眉をよせた。
「あの・・申し訳ありません。 殿方と話すのは父と親戚位のもので、どう話したらいいのかわかりませんでしたの
怒らせてしまいごめんなさい。」
見透かされてしまい、彼はカツと頬を紅潮した。
この凡庸な女に気をつかわされるなんて・・とジェイムスは支離滅裂な怒りがあった。
彼は逆上しそうだった。余計怒りが増した。
頼りなげな大人しい貴婦人だった。そんな彼女にまで見透かされる俺って・・。
情けなく屈辱を感じた。最低最悪の出会いであった。
渋々と何度か儀礼的に逢瀬を繰り返して、お互いの気質が解ってきた。
ジェイムスは情熱的だが、アンは水のようにひやりと冷たい何かが心の奥に潜んでいた。
彼女は、貴婦人だが、役目を果たすだけに専念している。そこには夫の入る余地はなかった。
彼女は透明な何かに包まれているようだった。ジェイムスが迂闊に手を伸ばすと、何かが排除した。
変な女だった。 ジェイムスは結婚の後、初夜はあったが、無理だった。ジェイムスが男色家だったこともあり、
やせ細った魅力のない娘に性的な魅力はなく、男根が立たなかった。
このことは、二人だけの秘密にしようとジェイムスはアンに半ば脅迫して口止めした。
恐らくアンは今だ清らかな身だ。
アンは性的な事には無知で、夫が男色家であることも知らぬだろう。
「お前じゃ起たない。お前は魅力がない。」
彼は男色家であることを隠してアンの性的魅力がないから性交できないと嘘をついた。
「ま、まあ。それは申し訳ありません。」
アンは頬を赤らめて謝った。この事は絶対話しませんと彼女は誓い、その通り沈黙した。
処女の鮮血はどうやってごまかすかと二人は話し合った。
アンはふと自分のふとももの奥に護身用ナイフを少し当てて切った。鮮血が寝台のシーツに迸った。
ぽたりぽたりと少々落ちて、ほっとアンは安堵の溜息をした。
「これで私たちは初夜の儀式を無事に迎えたことが証明されたことになります。」
鮮血が流れた白い細い太ももにジェイムスは目が釘付けになった。なにか煽情的だったのだ。
驚くべきことにわずかに男根がもたげた。彼は必死でそれを隠した。
白い布切れで自分で止血をしたアンは長いスカートで傷を隠し、身だしなみをきちんとしようとした。
ジェイムスはそれを制止し、髪は少し乱れた方が良い。そのほうが信憑性があると言った。
「ああ・・なるほど。」
アンは子どものように納得した。うんうんとうなずいている彼女は愛らしかった。
ジェイムスは不可解な己の心を抑え、初夜の儀式を確認する教会の使者に寝台のシーツの鮮血を見せた。
この時代、宗教勢力は強く、王族と宗教権力は密接に結びついて、その神の教えを広める組織は権力を増し、
王族や王族に近い貴族の初夜の確認の儀式もあった。
馬鹿馬鹿しい・・と内心ジェイムスは腹が立っていた。覗き魔め。そんなに監視したいのか?気持ちが悪い。
他にも気に入らないと宗教関係の者達を疎む貴族や王族に縁の或る者も居たが、今は、この儀式を続けるしかなかった。
彼らは白い結婚をしていたが、この事は二人だけの秘密だった。
それ以降、形式上は妻であるアンを戸惑いながらも交流を続けた。
時折、男色家であるジェイムスにもアンに性欲を催すことがある。それはアンが転んで足に傷をつけた時などだ。
どうもジェイムスは、血が流れる白い足に惹かれるらしい。
彼は己の性癖に悩んだが、すぐに開き直った。彼は密かに男娼や、その性癖の相手を探しては、寝ていた。
性欲は十分に満たされている。
しかし妻という女にどう扱えばいいか彼には解らなかった。アンは立派に貴婦人として妻として恥じぬように人形のように心を見せず、ひっそりと淑女として生きている。
それがジェイムスには気に入らなかった。彼女はいつも頑張って生きているが、夫との心の交流は望んでいない。
無意識にそれが解って、理不尽にも彼は腹を立てた。
彼は思わず妻の侍女に妻の悪口や愚痴を言った。
「妻は俺との心の交流を望んていない。政略結婚といわればそれまでだがここまで拒絶されるとはな・・」
侍女は黙って意外そうにジェイムスを見て頭を下げて食器を取り下げた。
ある社交界の時、美しい女と踊った。
だが男色家であるジェイムスにとっては何も感じなかった。
とても珍しく聡明な美しい女だなと鑑賞物のようにしか思えなかった。
まさか周囲が彼らは一対のようにお似合いだと思って、アンを不相応ではないかと扇の中で陰口を叩くとは思わなかったのだ。
アン自身でさえもお似合いだと思っていたと彼女が言った時、ジェイムスは思わず頭を抱えそうになった。
「お前はつまらない女だ・。」
ある日、うんざりしてアンに不満をぶちまけたことがある。アンはいつもより大人しく黙っていた。
やがて、アンは「承知しております。何かが足りない女であることも・・離縁なさいますか・・。」
離縁。それはジェイムスにとって喜ばしい事だった。
離縁した妻は後宮へ行く。そこでひっそりと暮らすのだ。それはアンにお似合いだ。妻という女にも煩わされずに済むと彼は密かに喜んだ。
最後の別れの時、「申し訳ありません。至らぬ妻で・・どうしても合いませんでしたね。わたし達・・。お許しください。ジェイムス様。」
アンのすまなそうな声にジェイムスは不可解な気持ちがまた自分に侵入しているのを感じた。
ジェイムスは黙って妻だった女 アンが去っていく姿を見ていた。
数か月、彼は喜んで男の愛人を呼び寄せて、家で飽きもせず性交した。酒も飲み、麻薬も少しやった。
そのせいで気分が大きくなり、いつもより傲慢で加虐的な性交を好むようになった。
アンはジェイムスの頭痛の種だったが、何かを抑える女でもあった。
アンが居なくなって、ジェイムスは自分でも知らなかった加虐欲と残虐性を知った。
寵愛していた男娼が、ある日、ジェイムスとの性交は最悪だと愛人に言っていた事を聞いたのだ。
男娼はジェイムスが家にいない間、愛人を呼び寄せてジェイムスの寝台に乗せて厚顔にもまぐわっていたのだ。
ジェイムスとの性交は最悪だ。乱暴で身勝手だった。気持ち良くなかったよと愛人にべらべらと軽薄に喋っていた。
この口も頭も尻も軽い男娼め・・。
ジェイムスの心から、寵愛していた男娼への情は冷めきった。冷徹な貴族の面が露わになった。
お前が悪いのだ・・。愛人に軽薄に人との情事を話すから・・。
ジェイムスは子飼いの密偵を呼び寄せて、愛人と寵愛していた男娼を惨たらしく、最悪の運命を与えよと命じた。
彼らは泣き喚きながら、ジェイムスに命乞いをしたが、赦さなかった。
彼らは一番劣悪で最悪の暴力的な娼館へ性奴隷として連れていかれた。
運が良ければ1年。運が悪ければ数か月で命を落とすと密偵から聞いた。
ジェイムスは運がいいといいなと思った。そうすれば生き地獄も長くなるだろう。いい気味だ。
彼は薄く微笑んで壮絶な笑みを見せた。これがジェイムスの自分の加虐性と残虐性を自覚した瞬間である。
その後、彼は、優しく寵愛しようと好みの男娼を見つけては、愛人として囲った。
しかし、どの男娼もなぜかジェイムスを忌避するようになった。何も知らないはずなのに、弱者の本能だろうか?
ジェイムスの狂気を感じ取っていたのだ。
次第にジェイムスは飽きた男娼を己の残虐性と加虐性を露わにして嬲って殺した。
だれも探さない身寄りのない者や、いなくなってもいい弱くて美しい男を選んだから、ジェイムスの罪は暴かれなかった。
これは神の幸運だなとジェイムスは能天気に考えた。
殺した後は、高揚感と性欲が一番高ぶる。面白くてたまらない。
彼は水浴びをして頭を体を冷やすようしていた。共犯者は子飼いの密偵である。
彼も下衆な本能を露わにして獲物を切り刻んで殺した。その代償に、父や国王にこの事を知らせないようにした。
そんなある日、見たことがある侍女が白い便箋をジェイムスに渡しに訪問に来たと執事から連絡があった。
アン・・?かつての妻だ。どうして今ごろ・・?
彼は不思議がりながらも、何故か手紙をよこせと命じた。
白い美しい便箋。 綺麗な紋様。 良い匂い。なんだがジェイムスの荒々しい獰猛な気が穏やかになるようだった。
手紙の内容はアンらしい内容だった。
馬鹿だな。俺は男色家で女じゃ起たないんだよ。思わずジェイムスは笑いそうになった。妻として不合格と解ったと
アンは今頃分かったようだ。いや。本当は妻などいらなかったんだよ。アン。愚かな女。
嘲笑しながらも、ジェイムスは何故が心が穏やかになるのを感じた。
今頃、俺の好みとか生き方とか教えてほしいというのか。夫婦だった時は全く心の交流はなかったのに・・。
アンの離宮での生活は密偵で聞いている。聖女のように、生き方を放棄した女達を介抱して、立ち直らせたという。
離宮は修道院のように健康的で、女達は生き返ったように生き生きしているという。アンはいつも綺麗にしようと掃除したり、建物の修繕や食べ物の自給自足を試行錯誤しているようだ。
アンは修道女になるべきだったのかもしれない。
彼女は生娘だ。善良な神に愛されているのかもしれない。よかったな。アン。俺のような男に純潔を奪われなくて・・。
でもいいのか。アン。俺ともう一度交流を持つことは、自覚した悪魔や堕落した男に穢されることなんだよ・・
かつての妻にいくばくかの良心を残していたジェイムスはなるべくこの罪を隠そうと思った。
何も知らない無知な子どものようだった娘。太ももから出た鮮血。痩せた体を貪りたい。
骨までしゃぶりたい。彼は獣性がそう囁いていた。しかし良心と理性がそれを拒絶していた。
アンの筆跡や、良い匂いを嗅ぐと落ち着く。この獰猛な気性も抑えられるかもしれない。
彼は無意識にアンの安らぎと穏やかさを求めていた。
緊張しているのかと思い、めずらしく女に興味がない彼にしては気を十分につかったつもりだった。
でも余計彼女はなにかを硬化させるばかりで、なかなか打ち解けられなかった。
彼はその時点で怒っていた。何故女ごときに気をつかわなければならぬのか? 当時、男尊女卑は激しかった。
それなりの地位を持つ父親をもたなければ女などいつでも処分できる玩具に過ぎなかった。
彼もまだ若く傲慢だったのだ。そして、女に興味を持たず、男のほうに性癖が向いていると気づいた頃だった。
そんな折、父には逆らえず、彼、ジェイムスはしぶしぶ興味がないあったこともない女と父と王の命で政略結婚をすることになった。
これは父に厳しくも愛されたジェイムスにとって与えられた理不尽であった。
何故、興味もない疎ましい女と結婚を?
家のためか? 俺は家のための繁栄の道具か?
今更のように、ジェイムスは貴族の家制度の厳しさと恐ろしさに身を震わせた。
アンの父親は、ジェイムスと親しく同盟を結んでいる権力がある有力な貴族だった。
彼は理不尽な怒りと屈辱に身を震わせていると、アンはすまなそうに眉をよせた。
「あの・・申し訳ありません。 殿方と話すのは父と親戚位のもので、どう話したらいいのかわかりませんでしたの
怒らせてしまいごめんなさい。」
見透かされてしまい、彼はカツと頬を紅潮した。
この凡庸な女に気をつかわされるなんて・・とジェイムスは支離滅裂な怒りがあった。
彼は逆上しそうだった。余計怒りが増した。
頼りなげな大人しい貴婦人だった。そんな彼女にまで見透かされる俺って・・。
情けなく屈辱を感じた。最低最悪の出会いであった。
渋々と何度か儀礼的に逢瀬を繰り返して、お互いの気質が解ってきた。
ジェイムスは情熱的だが、アンは水のようにひやりと冷たい何かが心の奥に潜んでいた。
彼女は、貴婦人だが、役目を果たすだけに専念している。そこには夫の入る余地はなかった。
彼女は透明な何かに包まれているようだった。ジェイムスが迂闊に手を伸ばすと、何かが排除した。
変な女だった。 ジェイムスは結婚の後、初夜はあったが、無理だった。ジェイムスが男色家だったこともあり、
やせ細った魅力のない娘に性的な魅力はなく、男根が立たなかった。
このことは、二人だけの秘密にしようとジェイムスはアンに半ば脅迫して口止めした。
恐らくアンは今だ清らかな身だ。
アンは性的な事には無知で、夫が男色家であることも知らぬだろう。
「お前じゃ起たない。お前は魅力がない。」
彼は男色家であることを隠してアンの性的魅力がないから性交できないと嘘をついた。
「ま、まあ。それは申し訳ありません。」
アンは頬を赤らめて謝った。この事は絶対話しませんと彼女は誓い、その通り沈黙した。
処女の鮮血はどうやってごまかすかと二人は話し合った。
アンはふと自分のふとももの奥に護身用ナイフを少し当てて切った。鮮血が寝台のシーツに迸った。
ぽたりぽたりと少々落ちて、ほっとアンは安堵の溜息をした。
「これで私たちは初夜の儀式を無事に迎えたことが証明されたことになります。」
鮮血が流れた白い細い太ももにジェイムスは目が釘付けになった。なにか煽情的だったのだ。
驚くべきことにわずかに男根がもたげた。彼は必死でそれを隠した。
白い布切れで自分で止血をしたアンは長いスカートで傷を隠し、身だしなみをきちんとしようとした。
ジェイムスはそれを制止し、髪は少し乱れた方が良い。そのほうが信憑性があると言った。
「ああ・・なるほど。」
アンは子どものように納得した。うんうんとうなずいている彼女は愛らしかった。
ジェイムスは不可解な己の心を抑え、初夜の儀式を確認する教会の使者に寝台のシーツの鮮血を見せた。
この時代、宗教勢力は強く、王族と宗教権力は密接に結びついて、その神の教えを広める組織は権力を増し、
王族や王族に近い貴族の初夜の確認の儀式もあった。
馬鹿馬鹿しい・・と内心ジェイムスは腹が立っていた。覗き魔め。そんなに監視したいのか?気持ちが悪い。
他にも気に入らないと宗教関係の者達を疎む貴族や王族に縁の或る者も居たが、今は、この儀式を続けるしかなかった。
彼らは白い結婚をしていたが、この事は二人だけの秘密だった。
それ以降、形式上は妻であるアンを戸惑いながらも交流を続けた。
時折、男色家であるジェイムスにもアンに性欲を催すことがある。それはアンが転んで足に傷をつけた時などだ。
どうもジェイムスは、血が流れる白い足に惹かれるらしい。
彼は己の性癖に悩んだが、すぐに開き直った。彼は密かに男娼や、その性癖の相手を探しては、寝ていた。
性欲は十分に満たされている。
しかし妻という女にどう扱えばいいか彼には解らなかった。アンは立派に貴婦人として妻として恥じぬように人形のように心を見せず、ひっそりと淑女として生きている。
それがジェイムスには気に入らなかった。彼女はいつも頑張って生きているが、夫との心の交流は望んでいない。
無意識にそれが解って、理不尽にも彼は腹を立てた。
彼は思わず妻の侍女に妻の悪口や愚痴を言った。
「妻は俺との心の交流を望んていない。政略結婚といわればそれまでだがここまで拒絶されるとはな・・」
侍女は黙って意外そうにジェイムスを見て頭を下げて食器を取り下げた。
ある社交界の時、美しい女と踊った。
だが男色家であるジェイムスにとっては何も感じなかった。
とても珍しく聡明な美しい女だなと鑑賞物のようにしか思えなかった。
まさか周囲が彼らは一対のようにお似合いだと思って、アンを不相応ではないかと扇の中で陰口を叩くとは思わなかったのだ。
アン自身でさえもお似合いだと思っていたと彼女が言った時、ジェイムスは思わず頭を抱えそうになった。
「お前はつまらない女だ・。」
ある日、うんざりしてアンに不満をぶちまけたことがある。アンはいつもより大人しく黙っていた。
やがて、アンは「承知しております。何かが足りない女であることも・・離縁なさいますか・・。」
離縁。それはジェイムスにとって喜ばしい事だった。
離縁した妻は後宮へ行く。そこでひっそりと暮らすのだ。それはアンにお似合いだ。妻という女にも煩わされずに済むと彼は密かに喜んだ。
最後の別れの時、「申し訳ありません。至らぬ妻で・・どうしても合いませんでしたね。わたし達・・。お許しください。ジェイムス様。」
アンのすまなそうな声にジェイムスは不可解な気持ちがまた自分に侵入しているのを感じた。
ジェイムスは黙って妻だった女 アンが去っていく姿を見ていた。
数か月、彼は喜んで男の愛人を呼び寄せて、家で飽きもせず性交した。酒も飲み、麻薬も少しやった。
そのせいで気分が大きくなり、いつもより傲慢で加虐的な性交を好むようになった。
アンはジェイムスの頭痛の種だったが、何かを抑える女でもあった。
アンが居なくなって、ジェイムスは自分でも知らなかった加虐欲と残虐性を知った。
寵愛していた男娼が、ある日、ジェイムスとの性交は最悪だと愛人に言っていた事を聞いたのだ。
男娼はジェイムスが家にいない間、愛人を呼び寄せてジェイムスの寝台に乗せて厚顔にもまぐわっていたのだ。
ジェイムスとの性交は最悪だ。乱暴で身勝手だった。気持ち良くなかったよと愛人にべらべらと軽薄に喋っていた。
この口も頭も尻も軽い男娼め・・。
ジェイムスの心から、寵愛していた男娼への情は冷めきった。冷徹な貴族の面が露わになった。
お前が悪いのだ・・。愛人に軽薄に人との情事を話すから・・。
ジェイムスは子飼いの密偵を呼び寄せて、愛人と寵愛していた男娼を惨たらしく、最悪の運命を与えよと命じた。
彼らは泣き喚きながら、ジェイムスに命乞いをしたが、赦さなかった。
彼らは一番劣悪で最悪の暴力的な娼館へ性奴隷として連れていかれた。
運が良ければ1年。運が悪ければ数か月で命を落とすと密偵から聞いた。
ジェイムスは運がいいといいなと思った。そうすれば生き地獄も長くなるだろう。いい気味だ。
彼は薄く微笑んで壮絶な笑みを見せた。これがジェイムスの自分の加虐性と残虐性を自覚した瞬間である。
その後、彼は、優しく寵愛しようと好みの男娼を見つけては、愛人として囲った。
しかし、どの男娼もなぜかジェイムスを忌避するようになった。何も知らないはずなのに、弱者の本能だろうか?
ジェイムスの狂気を感じ取っていたのだ。
次第にジェイムスは飽きた男娼を己の残虐性と加虐性を露わにして嬲って殺した。
だれも探さない身寄りのない者や、いなくなってもいい弱くて美しい男を選んだから、ジェイムスの罪は暴かれなかった。
これは神の幸運だなとジェイムスは能天気に考えた。
殺した後は、高揚感と性欲が一番高ぶる。面白くてたまらない。
彼は水浴びをして頭を体を冷やすようしていた。共犯者は子飼いの密偵である。
彼も下衆な本能を露わにして獲物を切り刻んで殺した。その代償に、父や国王にこの事を知らせないようにした。
そんなある日、見たことがある侍女が白い便箋をジェイムスに渡しに訪問に来たと執事から連絡があった。
アン・・?かつての妻だ。どうして今ごろ・・?
彼は不思議がりながらも、何故か手紙をよこせと命じた。
白い美しい便箋。 綺麗な紋様。 良い匂い。なんだがジェイムスの荒々しい獰猛な気が穏やかになるようだった。
手紙の内容はアンらしい内容だった。
馬鹿だな。俺は男色家で女じゃ起たないんだよ。思わずジェイムスは笑いそうになった。妻として不合格と解ったと
アンは今頃分かったようだ。いや。本当は妻などいらなかったんだよ。アン。愚かな女。
嘲笑しながらも、ジェイムスは何故が心が穏やかになるのを感じた。
今頃、俺の好みとか生き方とか教えてほしいというのか。夫婦だった時は全く心の交流はなかったのに・・。
アンの離宮での生活は密偵で聞いている。聖女のように、生き方を放棄した女達を介抱して、立ち直らせたという。
離宮は修道院のように健康的で、女達は生き返ったように生き生きしているという。アンはいつも綺麗にしようと掃除したり、建物の修繕や食べ物の自給自足を試行錯誤しているようだ。
アンは修道女になるべきだったのかもしれない。
彼女は生娘だ。善良な神に愛されているのかもしれない。よかったな。アン。俺のような男に純潔を奪われなくて・・。
でもいいのか。アン。俺ともう一度交流を持つことは、自覚した悪魔や堕落した男に穢されることなんだよ・・
かつての妻にいくばくかの良心を残していたジェイムスはなるべくこの罪を隠そうと思った。
何も知らない無知な子どものようだった娘。太ももから出た鮮血。痩せた体を貪りたい。
骨までしゃぶりたい。彼は獣性がそう囁いていた。しかし良心と理性がそれを拒絶していた。
アンの筆跡や、良い匂いを嗅ぐと落ち着く。この獰猛な気性も抑えられるかもしれない。
彼は無意識にアンの安らぎと穏やかさを求めていた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる