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二人の夫と花嫁⑤
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真っ白な空間、地面は無機質な白い床だ。
彼女は呆然と下を見ている。夢のようだ。ぼんやりとずっと下を見つめている。
不意にパッと白い床が開いた。 深い深い穴ができている。 そこに渦巻くように積み重なられた物体を彼女は十分に良く知っている。
彼女だけは宙につられたようにそこに浮いたままだ。
「クオン。イール。御免なさい。わたしもいつかはあそこにいくから・・。」
そこには、彼女と瓜二つの顔の男と女 無数の人間が壊れた人形のように山積みになっていた。腐敗もせずに凍結されたような彼らに彼女はか細い声で呟いた。
彼女は正しき選択をした花嫁だった。
ただ、失敗した、間違えた無数の選択をした敗北者は、この世界の深い穴に落とされた。
彼女はかつての同胞を虚ろに眺めながら、永遠にこの世界の一部として機能し続けた。
この世界は表向き、唯正しく選ぶだけの儀式で存続すると柔らかく言われていたが、実際はとても
過酷な世界だった。脱落者は無数の星ほどいる。
彼女、いや彼は人工的に作られた人間だった。
顔は、同一したほうが差別も産まないとシステムは判断し、バランスの取れた顔、均整の取れた姿態、穏やかな気性、そして性別さえも変換できる薬とかを発明し、徹底的に差別となる温床は取り除かれた。
しかしそれでも生存競争のための戦いや選抜は行われた。
彼ら子供たちは、この世界の母によって、シミュレーション競技や、世界の成り立ち、歴史や発展
の仕方などを学んでいた。
「わたしは・・落ちこぼれだった。本来はわたしがあそこにいるはずだったのに・・。」
彼女はおちこぼれゆえ、夢しか見れなかった。現実は失敗ばかりで、いつかは処分されることもわかっていた。
わたしだってそうした。この世界のために・・。異分子は弾かれるのだから・・。
なのにクオンやイールは何を思ったが、わたしの脳をハッキングして、正しき選択へと歩ませた。
なんという過ちをしたのか?
代償にクオンやイールは奈落へ落ちた。
わたしは欠陥脳、欠陥品から最も完璧な者として彼らから作り変えられた。
わたしは正しくそれ以上に最もよい選択をした。
二人の夫をよりよく素晴らしい世界へと飛翔させたのだ。
二人の夫は人間ではなかった。二つの翼と呼ばれる神鳥 イビスが分裂したものだった。
わたしの因子もイビスの因子が入っている。 ヒューマン形をしているのは、生存のため多様性を
与えたからだ。
この世界は、より良く、イビスと呼ばれる神族たちが生存圏を拡大するためにある。
花嫁はそれを増幅させる一部でもあるのだ。
「・・・恐らくクオンやイールは不満があったのだわ。決まった未来に従う人形であることに耐えられなかったのね・・。」
戯れに彼らは尤も不完全な醜い気持ちが悪いわたしを選んだ。 この世界の母に対する一種の反乱だとわたしはそう
理解していた。
馬鹿な彼ら・・そんなことをしてもこの世界は存在するのよ・・。
でもわたしは救われたのだからいつかはわたしも彼らを救わなければ・・。
ごめんね。イア・・貴方の涙は正しいわ。
わたしはいつかはこの世界を滅ぼすつもりだ・・。
彼女はそう決心していた。
彼女は呆然と下を見ている。夢のようだ。ぼんやりとずっと下を見つめている。
不意にパッと白い床が開いた。 深い深い穴ができている。 そこに渦巻くように積み重なられた物体を彼女は十分に良く知っている。
彼女だけは宙につられたようにそこに浮いたままだ。
「クオン。イール。御免なさい。わたしもいつかはあそこにいくから・・。」
そこには、彼女と瓜二つの顔の男と女 無数の人間が壊れた人形のように山積みになっていた。腐敗もせずに凍結されたような彼らに彼女はか細い声で呟いた。
彼女は正しき選択をした花嫁だった。
ただ、失敗した、間違えた無数の選択をした敗北者は、この世界の深い穴に落とされた。
彼女はかつての同胞を虚ろに眺めながら、永遠にこの世界の一部として機能し続けた。
この世界は表向き、唯正しく選ぶだけの儀式で存続すると柔らかく言われていたが、実際はとても
過酷な世界だった。脱落者は無数の星ほどいる。
彼女、いや彼は人工的に作られた人間だった。
顔は、同一したほうが差別も産まないとシステムは判断し、バランスの取れた顔、均整の取れた姿態、穏やかな気性、そして性別さえも変換できる薬とかを発明し、徹底的に差別となる温床は取り除かれた。
しかしそれでも生存競争のための戦いや選抜は行われた。
彼ら子供たちは、この世界の母によって、シミュレーション競技や、世界の成り立ち、歴史や発展
の仕方などを学んでいた。
「わたしは・・落ちこぼれだった。本来はわたしがあそこにいるはずだったのに・・。」
彼女はおちこぼれゆえ、夢しか見れなかった。現実は失敗ばかりで、いつかは処分されることもわかっていた。
わたしだってそうした。この世界のために・・。異分子は弾かれるのだから・・。
なのにクオンやイールは何を思ったが、わたしの脳をハッキングして、正しき選択へと歩ませた。
なんという過ちをしたのか?
代償にクオンやイールは奈落へ落ちた。
わたしは欠陥脳、欠陥品から最も完璧な者として彼らから作り変えられた。
わたしは正しくそれ以上に最もよい選択をした。
二人の夫をよりよく素晴らしい世界へと飛翔させたのだ。
二人の夫は人間ではなかった。二つの翼と呼ばれる神鳥 イビスが分裂したものだった。
わたしの因子もイビスの因子が入っている。 ヒューマン形をしているのは、生存のため多様性を
与えたからだ。
この世界は、より良く、イビスと呼ばれる神族たちが生存圏を拡大するためにある。
花嫁はそれを増幅させる一部でもあるのだ。
「・・・恐らくクオンやイールは不満があったのだわ。決まった未来に従う人形であることに耐えられなかったのね・・。」
戯れに彼らは尤も不完全な醜い気持ちが悪いわたしを選んだ。 この世界の母に対する一種の反乱だとわたしはそう
理解していた。
馬鹿な彼ら・・そんなことをしてもこの世界は存在するのよ・・。
でもわたしは救われたのだからいつかはわたしも彼らを救わなければ・・。
ごめんね。イア・・貴方の涙は正しいわ。
わたしはいつかはこの世界を滅ぼすつもりだ・・。
彼女はそう決心していた。
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