微睡みの子どもたち

栗菓子

文字の大きさ
上 下
17 / 19

   二人の夫と花嫁⑤

しおりを挟む
真っ白な空間、地面は無機質な白い床だ。

彼女は呆然と下を見ている。夢のようだ。ぼんやりとずっと下を見つめている。

不意にパッと白い床が開いた。 深い深い穴ができている。 そこに渦巻くように積み重なられた物体を彼女は十分に良く知っている。 

彼女だけは宙につられたようにそこに浮いたままだ。

「クオン。イール。御免なさい。わたしもいつかはあそこにいくから・・。」

そこには、彼女と瓜二つの顔の男と女 無数の人間が壊れた人形のように山積みになっていた。腐敗もせずに凍結されたような彼らに彼女はか細い声で呟いた。

彼女は正しき選択をした花嫁だった。

ただ、失敗した、間違えた無数の選択をした敗北者は、この世界の深い穴に落とされた。

彼女はかつての同胞を虚ろに眺めながら、永遠にこの世界の一部として機能し続けた。

この世界は表向き、唯正しく選ぶだけの儀式で存続すると柔らかく言われていたが、実際はとても

過酷な世界だった。脱落者は無数の星ほどいる。

彼女、いや彼は人工的に作られた人間だった。

顔は、同一したほうが差別も産まないとシステムは判断し、バランスの取れた顔、均整の取れた姿態、穏やかな気性、そして性別さえも変換できる薬とかを発明し、徹底的に差別となる温床は取り除かれた。

しかしそれでも生存競争のための戦いや選抜は行われた。

彼ら子供たちは、この世界の母によって、シミュレーション競技や、世界の成り立ち、歴史や発展
の仕方などを学んでいた。

「わたしは・・落ちこぼれだった。本来はわたしがあそこにいるはずだったのに・・。」

彼女はおちこぼれゆえ、夢しか見れなかった。現実は失敗ばかりで、いつかは処分されることもわかっていた。
わたしだってそうした。この世界のために・・。異分子は弾かれるのだから・・。
なのにクオンやイールは何を思ったが、わたしの脳をハッキングして、正しき選択へと歩ませた。
なんという過ちをしたのか?
代償にクオンやイールは奈落へ落ちた。

わたしは欠陥脳、欠陥品から最も完璧な者として彼らから作り変えられた。
わたしは正しくそれ以上に最もよい選択をした。

二人の夫をよりよく素晴らしい世界へと飛翔させたのだ。

二人の夫は人間ではなかった。二つの翼と呼ばれる神鳥 イビスが分裂したものだった。
わたしの因子もイビスの因子が入っている。 ヒューマン形をしているのは、生存のため多様性を
与えたからだ。

この世界は、より良く、イビスと呼ばれる神族たちが生存圏を拡大するためにある。

花嫁はそれを増幅させる一部でもあるのだ。


「・・・恐らくクオンやイールは不満があったのだわ。決まった未来に従う人形であることに耐えられなかったのね・・。」

戯れに彼らは尤も不完全な醜い気持ちが悪いわたしを選んだ。 この世界の母に対する一種の反乱だとわたしはそう

理解していた。

馬鹿な彼ら・・そんなことをしてもこの世界は存在するのよ・・。

でもわたしは救われたのだからいつかはわたしも彼らを救わなければ・・。

ごめんね。イア・・貴方の涙は正しいわ。

わたしはいつかはこの世界を滅ぼすつもりだ・・。

彼女はそう決心していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁ドンの壁

田×四
BL
壁ドンの壁はどんな壁?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

君が願うこと、私が願うこと

藤間背骨
BL
「実験したら体も記憶も名前もなくしたので誰か私の存在を証明してください!」の続編。色々あって結ばれたコスティとクルキの二人。しかし旅の途中、魔物退治をしている際にコスティの矢がクルキを掠めてしまう。恋人を傷つけてしまった、自分にもっと力があればと思い悩むコスティ。そこに、教会に協力しないかと誘われる。それを受けた二人は早速力試しと魔物退治に赴いた。しかし、コスティはまだ悩んでいる。味方の攻撃に巻き込まれて満身創痍のコスティに、悪魔が囁いた――。※全18話・毎日18時更新

【完結】この手なんの手、気になる手!

鏑木 うりこ
BL
ごく普通に暮らしていた史郎はある夜トラックに引かれて死んでしまう。目を覚ました先には自分は女神だという美少女が立っていた。 「君の残された家族たちをちょっとだけ幸せにするから、私の世界を救う手伝いをしてほしいの!」  頷いたはいいが、この女神はどうも仕事熱心ではなさそうで……。  動物に異様に好かれる人間っているじゃん?それ、俺な?  え?仲が悪い国を何とかしてくれ?俺が何とか出来るもんなのー?  怒涛の不幸からの溺愛ルート。途中から分岐が入る予定です。 溺愛が正規ルートで、IFルートに救いはないです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

処理中です...