15 / 19
二人の夫と花嫁③
しおりを挟む
イアは甘いショートケーキを食べながらふあっと口内に広がる余韻を噛みしめながら、幸福に浸っていた。
嗚呼幸福だわ。まあ少し食べ過ぎたら走らなきゃいけないけど・・。
イアは幸福だった。 これもすべてはお母様が正しく二人の夫を選択したから、幸福な人生を得られたのだ。
こどもは分かっていた。この幸福は、お母様が選びとったもの。そしてわたしという子どもが生まれた。
幸いにも、わたしはお母様によく似て、家族としての愛も得た。
「こんな幸福はないですわ。これも全てお母様が正しくお父様たちを選んだ結果ですね。」
無邪気にイアは母親を褒めたたえた。 イアにもその恩恵がきて、まずまずの幸福を得ている。
外敵に脅かされない人生。家族運が良い。衣食住も十分な満ち足りた生活。
イアには何の不足もなかった。
するとお母様は妙な顔をした。
「選んだねエ・・。あれはどちらかというと結末は決まっていたような・・。選ぶしかなかったような・・。」
どこか納得のいかぬ風情で、お母様は苦笑しながら、にっこりと娘に微笑んだ。
「まあ。こんな可愛い娘を授かったから良いよ。でも 君は本当はお兄ちゃんになるかもしれなかったんだ。
あべこべに生まれただけさ。」
「??」
お母様は時折わからないことを言う。わたしがお兄ちゃんになるはずだった?何を馬鹿な事をいっているのだろう?
「・・そういう未来もあったということさ・・。」
お母様は三日月のような笑いをした。目も月のようでわたしは戦慄した。
お母様は謎めいた女で、別人のような顔ももっていた。いつかお母様がわかるだろうか?
お父様も優しいけど子どものわたしにはわからないこともあった。
「ねえ。イア。この世界はお母様だけじゃなく前のそのまた前の花嫁さんが選んできた結果なんだよ。でもね。イア
全てわかって選んだ花嫁もいれば何も知らないで選んだ花嫁もいる。薄々気づいていた花嫁もいたよ。
全ては選択した結果だけど、過程もあったよ。それは大事だと思う。」
「よくわからないけどお母様はこの世界が嫌いですか?ではわたしも間違いだったのですか?」
そう思うとリアは悲しくなった。大好きなお母様がこの世界は間違っているかもと思っただけで、リアのようなちっ
ぽけな子どもは胸が張り裂けたようになってしまう。
だってそれはリアの生や根幹を否定されたような気がするから。
「オオ・・リア。そうではないよ。ごめんね。悲しませてしまったね。いや。リアは生まれてきてよかったとおもう
だけで十分に価値があるよ。僕もリアが楽しく生きているのをみるだけでほっとする。」
それだけでリアは幸福に満たされた。
お母様の愛が十分に伝わったから・・。でもお母様にはどこか迷いもあったみたいだった。もしかしたらもう一つの
選択もあったのだろうか?そう思うとリアは悲しくなった。
わたしではない子どもが生まれたかも知れない可能性があったのだ。
リアの足元が崩れていくようだった。でもお母様はそんなリアを見透かし、そっと抱きしめる。
「ごめんね。リア。貴方はここにいるよ。大丈夫。あなたは世界に祝福された存在だから・・。」
リアは頷いた。大好きなお母様がいったのだ。
リアはここにいてもいいのだ。
たとえ、リアがいることで、消えたかもしれない子どもたちがいる可能性をリアは打ち消した。
わたしは幸福だ。私は幸福だ。俺は幸福だ。 あたしは幸福だ。
リアの背後で子どもたちがその言葉をリフレインして繰り返されているようだった。
嗚呼‥幸福ってなんだろう。リアはこの滑稽な幸福を舌で感覚で味わった。
甘い‥甘すぎて苦いわ。リアは僅かに涙した。
嗚呼幸福だわ。まあ少し食べ過ぎたら走らなきゃいけないけど・・。
イアは幸福だった。 これもすべてはお母様が正しく二人の夫を選択したから、幸福な人生を得られたのだ。
こどもは分かっていた。この幸福は、お母様が選びとったもの。そしてわたしという子どもが生まれた。
幸いにも、わたしはお母様によく似て、家族としての愛も得た。
「こんな幸福はないですわ。これも全てお母様が正しくお父様たちを選んだ結果ですね。」
無邪気にイアは母親を褒めたたえた。 イアにもその恩恵がきて、まずまずの幸福を得ている。
外敵に脅かされない人生。家族運が良い。衣食住も十分な満ち足りた生活。
イアには何の不足もなかった。
するとお母様は妙な顔をした。
「選んだねエ・・。あれはどちらかというと結末は決まっていたような・・。選ぶしかなかったような・・。」
どこか納得のいかぬ風情で、お母様は苦笑しながら、にっこりと娘に微笑んだ。
「まあ。こんな可愛い娘を授かったから良いよ。でも 君は本当はお兄ちゃんになるかもしれなかったんだ。
あべこべに生まれただけさ。」
「??」
お母様は時折わからないことを言う。わたしがお兄ちゃんになるはずだった?何を馬鹿な事をいっているのだろう?
「・・そういう未来もあったということさ・・。」
お母様は三日月のような笑いをした。目も月のようでわたしは戦慄した。
お母様は謎めいた女で、別人のような顔ももっていた。いつかお母様がわかるだろうか?
お父様も優しいけど子どものわたしにはわからないこともあった。
「ねえ。イア。この世界はお母様だけじゃなく前のそのまた前の花嫁さんが選んできた結果なんだよ。でもね。イア
全てわかって選んだ花嫁もいれば何も知らないで選んだ花嫁もいる。薄々気づいていた花嫁もいたよ。
全ては選択した結果だけど、過程もあったよ。それは大事だと思う。」
「よくわからないけどお母様はこの世界が嫌いですか?ではわたしも間違いだったのですか?」
そう思うとリアは悲しくなった。大好きなお母様がこの世界は間違っているかもと思っただけで、リアのようなちっ
ぽけな子どもは胸が張り裂けたようになってしまう。
だってそれはリアの生や根幹を否定されたような気がするから。
「オオ・・リア。そうではないよ。ごめんね。悲しませてしまったね。いや。リアは生まれてきてよかったとおもう
だけで十分に価値があるよ。僕もリアが楽しく生きているのをみるだけでほっとする。」
それだけでリアは幸福に満たされた。
お母様の愛が十分に伝わったから・・。でもお母様にはどこか迷いもあったみたいだった。もしかしたらもう一つの
選択もあったのだろうか?そう思うとリアは悲しくなった。
わたしではない子どもが生まれたかも知れない可能性があったのだ。
リアの足元が崩れていくようだった。でもお母様はそんなリアを見透かし、そっと抱きしめる。
「ごめんね。リア。貴方はここにいるよ。大丈夫。あなたは世界に祝福された存在だから・・。」
リアは頷いた。大好きなお母様がいったのだ。
リアはここにいてもいいのだ。
たとえ、リアがいることで、消えたかもしれない子どもたちがいる可能性をリアは打ち消した。
わたしは幸福だ。私は幸福だ。俺は幸福だ。 あたしは幸福だ。
リアの背後で子どもたちがその言葉をリフレインして繰り返されているようだった。
嗚呼‥幸福ってなんだろう。リアはこの滑稽な幸福を舌で感覚で味わった。
甘い‥甘すぎて苦いわ。リアは僅かに涙した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる