微睡みの子どもたち

栗菓子

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第3章 運命

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人は余程運の悪い奴意外、自分で運命を選ぶことができる。と師は言った。

思想家であり、戦士でもあるルダは悩んでいた。余程運の悪い奴とは、赤子や子供のころ判断力もないまま殺されたり死んだやつらだ。さもなければ悪人に手足を拘束して無力にさせられた状態だ。

ルダは幸運にも、良い師匠に恵まれ、健やかに育った。戦いにも備え、身体も頭脳も鍛えることを怠らなかった。

だがそんなルダにも人の愚劣さや下劣さ浅ましさどうしようもない闇には直面しきれない時があった。

母親が、酒中毒になったり、なにかに依存して我が子を無意識或いは意図的に殺害する時だ。弱い女だ。そういいきるほどルダはまだ強くなれなかった。彼もまだ幼い子にすぎなかった。

疲れ果てた弱者が、お互いに殺しあうのを見るたびにルダは運命とは何なのかと無常と悲哀を感じた。

師は、他者を救えるなどおこがましい。できることをやるだけだ。後は時の流れにまかせるしかない・・。
と深い溜息を呟いた。

師は正しい。しかしルダはまだ割り切れない感情を抱えながら生きていた。

ルダはなるべく不快なものを視ず、修行に専念した。未熟な己の心が世界の醜悪さに触れる度に
どうしようもない怒りがこみあげてくる。

時折、気が触れた子どもや、使用人などが上位の者を目の敵にし、突如殺害という蛮行をすることがあった。逆もあったが、ルダはなんとなくその漠然とした感情を察していた。
閉塞感 強迫観念 被害妄想 脆弱で敏感な精神の持ち主程この非情な世界には生きづらい。

彼らはずっと世界の抑圧や見えない精神的な暴力を受けて居たのだ。
自殺する人は、世界の闇をずっと感じていたのかもしれない。

ルダは、多少の哀れみとともに生への脱落者を悼んだ。
ルダにはまだ理解できなかった。美しく若く何かの技量に秀でていて成功した者もある日、突然
何かが切れたように死を選ぶのだ。

ルダには死に取りつかれた者にしか見えなかった。

或る女がこういった。運だよ。仕方がないよ。 運のよい奴と悪い奴 本当に何も無い奴に分かれるんだよ。人間でやつは。

運が無い奴は何をしても駄目。成功しても生きることに向いていないんだよ。

うんうんとしたり顔で薄っぺらい言葉を吐いている女を見て思わずルダは苦笑しかけたが、不意に運かもしれないと思うこともあった。
人には一定の量の運があって、それがあまりないやつもいるのではないかと薄々ルダは気づいていた。

運が常人より強く多い奴ほどルダはとんでもない偉人や英雄となる資質があると思っている。

そういうやつらは覇気や、オーラも凄く人を無意識に従える雰囲気、格もあった。


ルダはふと運命の神の顔を覗くことが或る。

異様に美しい顔と異様に醜い顔を二つもっている双子神だ。

下半身は癒着して蛇のように長い尾をもっている。


彼らは絡み合い、共食いをし、尾を食みながらぐるぐると環を形作っている。


嗚呼繰り返しているんだ。 この世界は・・


ルダは真実を垣間見る幻視者でもあった。





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