どうやら神様は死んでから褒美を与えるらしい

栗菓子

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どうやら悪人は、悪辣な女神の糧になっているらしい。

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数多の命を私利私欲で、享楽と愉悦で無惨に奪い続けた邪悪な男は、忌々しい善人が蘇るたびに、より純粋に神々しい気配を醸し出ていることに気づいていた。

本能で、魂の位階が上がっていることに気づいた。ならば悪人は? 魂は? 
死ぬ度に、イカレ具合が上がっている悪人たち。でも顔は生ける死人のように蒼白だ。

魂がすり減っている。ヘドロのようにドロドロと溶けている。なんだこれは? その魂の残滓はどこへいく?

不意に、完全に溶けた魂が、跡形も無く黒い牙だけある巨大な赤い唇に吸い込まれるのを見た。

あの時の悪辣な女神だ。 そうかやはり魂はどこにいくのかと思っていたが・・。

美味しい話には代償が或る。 それは悪党が身に沁みついている話だ。

どうやら悪人の魂は、悪辣な女神の糧になっているらしい。


男は、異様に納得した。家畜や奴隷を無駄にしないシステムだな。

所詮この世は弱肉強食だ。まえから道徳などは馬鹿馬鹿しいと思っていた。あれは弱者が復讐のために創った奴隷道徳だ。
貴族の掟もあるだろうが、結局、復讐のために道徳に従っている奴らも馬鹿だ。

本当に強いものは、世の中を簡単に作り変える。それに弱者は翻弄される藁や葉のようにひらひらと流されるだけだ。


男は本当にそれを実感していた。 偶々この世には弱者が多くて、どんな屑でも束になってかかれば、少数派がいかに正しくてもそれは抹殺される。

そんな世界に男は苛々していたが、やっと本物の世界があらわれて嬉しかった。


醜悪だが、赤裸々で何もかも露わになる世界だ。それぞれが本能と怒りだけで殺しあう世界だ。


下らぬ偽善や、普通の凡庸な愚劣な奴らはいない。唯純粋に戦いあうだけだ。

嗚呼、なんで素晴らしいことか。 魂など糧になってもいい。面白い世界をありがとうよ。女神様。


男は、魂がすり減るまで戦いあった。楽しい。愉快だ。どんどん嫌な奴が惨めに這いつくばる。


おかしいな。そろそろ消えるはずだが・・。男は妙に冷静に己の魂を把握していた。


あれ?逆流している?  へえ女神は俺を愉快なキャラとして創ったのかな?


溶けた魂が、逆流して男の中を廻っている。 男は永遠に戦い続ける死人となり果てた。


それを愉快そうに、笑う女神の赤い唇が天空に現れた。


嗚呼・・女神面白いんだな。良かったな。俺も嬉しいぜ。こんなに楽しくて愉快で最高な気分は初めてだ。

そうだよな。本当に力ある者は、何をしたっていいんだ。

下らない偽善や哀れみに翻弄される脆弱な者達に邪魔され続ける世界は地獄より地獄だった。


女神は本当に正しい世界を創ったんだ。 邪悪な男は、女神をその時だけ深く信仰した。


邪悪な男も、善人も神々の玩具としてショーに出演しているにすぎない。

この舞台で愉快に踊り続けようか? 神々に捧げる愉快な最後のショーだ。


踊り続けよう。壊れ果てるまて。邪悪な男は歪んた心で笑い続けた。








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