どうやら神様は死んでから褒美を与えるらしい

栗菓子

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どうやら妹は修羅と不思議体験をしたらしい

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いつかはこうなると思っていた。
子どもの頃は、「お兄ちゃん。お兄ちゃん。」とはじゃきながら後を追いかけていた元気な俺の妹。
無垢でまだ愛らしかった。俺はちょっと煩わしいなと思っても、可愛かった。

妹との遊びは、公園とか山登りとか、母は、とても神社巡りが好きで、時々、俺たちを連れて、巡っていた。
中には、遊園地みたいなところもあった。変な仏像や、丸々太った鯉や、誰が創ったの?と笑えるぐらい下手な神様のぬいぐるみ。
今思えば、趣味が高じて、母は、「フカイ神社巡り」と本を書いてと自費出版したりもした。これが驚くほど売れた。重版するほどだった。神様の効果だろうか?


父は驚くほど影が薄かった。なにを考えているか分からない人だった。ある日、父は突然他所の女と駆け落ちした。
離婚届だけが母に寄越された。

母は、黙って見て、いつか来ると思っていたとぼつりと呟いて少し泣いたが、離婚届を書いて区役所に出した。
母と父はよく分からない関係だった。夫婦ってなんなんだ?

神様は、金運は良くして夫婦運を悪くしたのか?
俺は、そう母に言うと、違う。お互いになにか冷め切ってもう限界だっただけと淡々と呟いた。

縁が切れたのだのだと呟いた。縁ってなんなんだろ。

妹は、父が大層好きだった。あんな父でも妹は可愛がっていた。美味しい食べ物や菓子を良く与えていた。

妹は少し頭が足りない女だったが、一生懸命泣いたり笑ったり頑張って生きる女だった。

父はそういう妹が良かったのだろう。 俺と母は、大人しいし、無言な性質だから、なかなか打ち解けられなかったのかもしれない。

妹は両親の離婚がショックで少し情緒不安定になった。頑張っていた部活も止めるようになった。

妹の心の変化や心境は分からない。なんか荒々しい波や穏やか波が交互に押し寄せる海のようだった。
妹も悩んで苦しんでいたことは分かる。 それから逃れるためなのか、なんでも色々試すようになった。

大人になろうと、悪い噂がある女グループと付き合い始めたことを知った途端、俺はすぐやめさせようとした。

妹は、今迷走している子どもだ。

でも、妹は何回いっても聞く耳を持たなかった。俺も疲れてうんざりして勝手にしろと腹を立てて、痛い目に合うまでわからないだろうとしばらく様子を見ることにした。

案の定、妹は可愛い顔をしていたから、他の女の嫉妬もあった。
一番まずかったのは、女グループの狂犬みたいな女の男が、妹に恋をしたことだ。それが狂犬の怒りを買ったのだ。妹はリンチ状態にされた。
周囲を女たちに囲まれて、長い髪も切られたり、あばずれとか汚い言葉で罵られるのは怖かっただろう。

女はその気になったら男より残酷だ。妹の可愛い顔は青あざだらけで腫れ上がっていた。

血だらけでよろよろと家に帰って来た時は、嗚呼・・いつか来ると思った。当然の報いだと思いながらも、妹が可哀相で生きていてくれて良かったとも複雑な思いを感じながら、俺は妹を病院へ連れて行った。


傷害事件と警察沙汰になるかもしれない。でもいい。これも神様の与えた試練かもしれない。俺は母の影響を受けて
色々神様の教えや、生き方について独学していた。

そんな時、病室で入院した妹は、不思議なことをいった。

「あのね・・。お兄ちゃん。あたし・・もう駄目だと思ったら、何かがあいつらを攻撃していたよ。見たらね、
黒いカラスだったよ。まるであたしを守るみたいに攻撃していた。あいつらは悲鳴を上げて逃げたよ。」
「あたしは、信じられなくてカラスに尋ねたよ。あんた。あたしをたすけようとしてくれたの?って。」

すると、カラスはじっと妹を見つめて頷いて、飛び去って行ったという。

荒唐無稽な話だ。カラスが妹を守った? なんだその鳥は?普通じゃないのか?

どうやら妹は修羅体験と、不思議体験を両方味わったらしい。俺も見たかったな。

妹は嘘をつく子じゃないし、錯覚かもしれないが、もしそれが本当だったなら見てみたいな俺も。


俺は妹のために、フルーツを剥いて、食べさせた。

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