どうやら神様は死んでから褒美を与えるらしい

栗菓子

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どうやらあたしは死んで復讐鬼になったらしい。

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あたしは死んだ。あたしは死んだ。あたしは死んだ。あたしは死んだ。あたしは死んだ。あたしは死んだ。

脳内がその言葉だけを埋め尽くす。凄惨で壮絶な痛みと共に、前のあたしは死んだ。意識がスパークして、火花が走った。

あたしの人生なんだったの。あたしはとても高貴な貴族の落ちこぼれ、出来損ないとして生まれた。人よりもできないことが多かったのだ。普通なら処分されるはずだが、あたしの家族は異常性癖をもっていた。

あたしは異常な歪んた家族のためのはけ口として、サンドバック用兼奴隷として育った。
肉体的な加害や、精神的な加害も幼少の頃から与えられた。
あたしはこんな家に生まれたことを後悔した。大外れもいいとこだよ。 神様。

恨んでいいよね。呪っていいよね。

あたしをぶん殴っておいて、外面だけはいい家族。理想的な素晴らしい貴族の家庭の仮面をかぶっている奴ら。
あたしを生贄にして成り立っている小さな小さな世界を怪物のように壊しまくりたい。

あたしの胸が膨らみかけたころ、あたしの変態の実の兄が面白半分に、あたしの胸に触ろうとした。

あたしはぺっと唾を吐きかけた。気持ちが悪い。血が繋がっているのに、拷問と、性的虐待もしようというのか。 狂っている。

だが、向こうはそう思わずに、このごみが・・とあたしを家畜以下のように見て、胸を悲鳴が上げるほど掴まれて
潰れた感触がした。嗚呼・・本気でこいつは狂っているんだ。本気であたしをゴミ以下としか見ていない。
あたしはこの狂人。化け物を挑発したことを心底後悔した。


あたしは気が失うまで殴られた。途轍もない痛みで意識が戻ったのは、あたしの足や手が切断されたからだ。
あたしは人殺しと喚きながら、化け物と罵った。
「悪い子だ。」とあたしをそういう。兄は本気であたしを悪い子と思って要る。嗚呼・・でもあたしにとってあんたたちはどうしようもない狂った奴なんだよ。

あたしは、哀れにも実の狂った兄に体中をバラバラにされて殺された。嗚呼・・男っておかしい。家族って貴族っておかしい。

おかしい。おかしい。おかしい。おかし過ぎる。でもあたしは異分子として処分された。こんな人生うんざりだ。
あたしは全てを呪いながら死んだ。

気が付いたら、白い空間にいた。あれほど痛かった苦痛はもうない。でも脳に悪夢のように焼き付いている。
何なのか。これは。こんな人生。悲惨すぎる。


光る爺がいた。またこれ以上あたしに何をするんだ。あたしは警戒をした。

「大変だったのお。もうわかっておるじゃろ。ここは死んだ後の世界じゃよ。それにしても悲惨じゃの。酷過ぎる家族もいるんじゃのお。」

あたしはもしかして・・と思った。まさかまさか神様? だとすると許せない。あたしは殺そうと飛びかかった。

でも駄目だった。見えない結界があたしを刎ねのばす。悔しい。助けてくれずに傍観していた奴がいた。神様だ。

こいつはやはりいたんだ。いたのに助けてくれなかった。あんなに苦しい思いをしたのにじっと見ていたんだ。

それがあたしはどうしても我慢できなかった。許せない。こんなやつが神様だからあたしみたいなやつがいるんだ。


『残念ながら人間は人間が何とかするしかないんじゃよ。』
『死んでからようやく手を出せるんじゃ。』

なんだ。神様もその程度か・・。あたしはもうどうでもよくなった。
あたしをどうするつもりよ。なげやりに神様を見ると、褒美をやると神様は言った。
褒美?何よ。それは? 
『あんたは転生するんじゃよ。褒美の力を持ってな。今度こそ幸福になるんじゃよ。』


あのねえ! あたしは憤慨して神様にもっと抗議しようとした。でも光に包まれてあたしは気を失った。

気が付いたら、あたしは赤ん坊になっていた。今度は、前よりまっとうな家族の中で生まれたらしい。

新しいあたしの母親は、おっとりとして優しく上品だった。母性本能もあり、あたしを娘として可愛がった。
父親も立派で、母親とあたしを守ってくれた。

でもあたしの中には凍り付いた感情と記憶があった。嗚呼。前のあたしだ。

今のあたしは愛と幸福に満たされているのに、前のあたしが呪っている。コロシテヤル。と唸っている。
やめてよね。もう・・。


あたしはあたしをまっとうに愛してくれる家族を愛した。あたしは家族のために良い娘になった。

でも時折、子どもや実の子を虐待して殺した親のニュースがテレビなどで出ると、コロシテヤルと怨嗟が溢れる。
嗚呼嗚呼駄目だ。駄目だ。あたしが前のあたしに侵食される。もう駄目だ。

気が付いたら、悪党や、子どもを深く傷つけている奴らの家や、アジトを探して、あたしは神様の褒美でもらった力で、大人たちを殺していた。
あたしの力は、並より強くなっていて、殺人できる能力が信じられなく高くなっていた。

あたしは、子どもや、赤子だけは殺さなかった。

そういう変態性癖や、異常者たちを殺して殺して殺しまくった。これで良かったんだ。あたしは仮面をつけていた。
髪も、カラフルに染めて、フリルいっぱいのドレスを着て、あたしと解らない様に変装していた。

あたしはこれが神様のご褒美だったんだと嬉しくてたまらなかった。奇声をあげながらあたしは悪人たちを殺した。あたしがされたようにミンチ状態にした。

あたしは殺した後、満足した。何かが鎮まるのだ。

ある日、あたしはいつものように殺していたら、他の殺人者があらわれた。やっぱりその人も悲惨な目にあって死んで神様の褒美をもらった人らしい。
「あなたも、もらったの。神様から?」

あたしは尋ねた。そいつはにやりと笑って、「光る爺からもらった神様の褒美か。嗚呼もらったよ。でなければこんなことするものか。」

「俺以外にもたくさんもらった奴いるはずだよ。前の記憶をもったやつもな。多分神様。人間を粛清したいんじゃねえの?でなきゃあ、悲惨な過去と記憶を消さずに、こんな力与えるもんか。」

ああ。ああそういうことか。人間は人間が何とかするしかないってことか。

神様も本気で粛清を考えたんだ。だから神様の褒美を与えて転生させたんだ。

あたしたちは神様の思惑が分かって、その通りに悪人たちを粛清した。

あたしたちはいつの間にか仲間を見つけて、あたしのような被害者が出ない様、異常者や、悪人を殺しまわった。
それしかあたしたちの魂がやすまる時は無い。

ある子どもがスプレーで落書きのように色々となにかを描いた。

神様の褒美だよ!と真っ赤なスプレーで壁に書かれた時は慌てたけどあたしはなんだか黙った。
こどものやることをじっと見ていた。


そうだ。これは神様の褒美なんだ。とてもつらい目にあった人たちのための褒美なんだ。

どうやらあたしは死んで復讐鬼になったらしい。

だって、まだ殺したりないもの。悪人たちみんなきえればいいのに。

でもあたしも悪い子といわれたから最後はあたしを殺そう。それがいいんだ。

あたしは微笑んだ。


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