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第16話 一臣 サイド
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前から、我が家で、真理子はどこか浮世離れしていた。
真理子と同じぐらいの子どもは、まだうるさくて、喧しい子どもで生意気な子達が多かったが、真理子だけが距離を置いて、どこか大人っぽく見えていた。
わが妹ながら不思議な雰囲気を持った女だなとさしてその時は違和感を持たなかった。しかし、まさか前世の記憶をもって神様が憑いていたとは思わなかった。
わが妹は、あやかしに縁が深き者だったとは・・。
一臣はこの非日常な事態についていけなかった。反乱だけでも驚愕なのに、更に、妹が、神様に憑かれて、花嫁へいくとは・・。よりにもよって下賤な『ゴミの金継ぎ師』とよばれるアクタと言う変な名前の見たこともない男へ嫁へやれだと・・。
冗談じゃない。いかに力をもつあやかしとはいえ、やはり妹だ。心配はある。
それに、真理子は聡明だから、良い家に娶ってもらって、我が家の有利な駒になってくれるだろうと思っていた。
一臣は、妹を可愛いと思うし、情はそれなりにあるが、家を継ぐものとしては、どこか利益を生み出す女として期待をせずにはいられないのだ。両親も多分そう思っていただろう・・。
一臣は、この理不尽な不条理な現実に憤りと癇癪を起さずにはいられなかった。
両親は、不思議と納得して、受けいれている。満知子もだ。何故なんだ?
あやかしに誑かされているのか? 一臣には、家族が理解できなかった。 俺が狭量なせいか?
後に、満知子から、「密偵を下さい。」といままでにかつてなく無表情に頼むのは、更に驚愕の事態だった。
満知子にこんな面があったとは・・。一臣はあ、ああと言いながら、満知子から、心境を吐露された時は、妹がこんなことを考えていたとは・・と思い知らされた。
それに、満知子から、「恐らくお父様とお母様は・・安和子姉様のこともあり、もう昔には戻れないと悟っていますわ。それならいっそ、神様とやらの妙な力をとりこめないかとどこかで下心もありますよ。わたくしも、安和子姉様の死でおもい知らされたのです。夫のせいで亡くなったのですよ・・。もう無知なお姫様じゃ生き残れないかもしれない・・。夫に翻弄されるのが妻の運命なのなら、それをなんとかして阻止したい・・。そう考えることはいけないことでしょうか? 女が生意気なと思うでしょうが・・わたくしは死にたくないのです・・。お兄様!。」
かつてなく、妹が、目を強く意志を持って、どこか怒りをもって、一臣を睨んだ時は、思わず怯みそうになった。
嗚呼・・そうか・・。両親も妹も本当は生き残りとか色々考えていたんだ・・。
そうか・・もう昔じゃないんだ。この激動の情勢で、両親も妹も変わらざるを得なくなったんだ。
一臣は、今更ながらに、己の鈍感さを思い知らされた。家族がやっと心変わりをしたわけが分かった。
一臣だけが、まだ、昔と今は情勢が違うことを実感していなかったのだ。
己の愚かさに一臣は失望しながら、妹の要望に従った。誰だって死にたくないからだ。
それに・・力があるのなら、真理子に情をもっていざとなったら役に立つかもしれない・・。そんな下世話な欲をもって、一臣はすまない。真理子・・。俺も生き残りたいんだ。親に見習おう。
少しうしろめたさを覚えながら、妹を得体のしれないあやかしに受け渡すことにした。
大丈夫だろう。真理子なら幸福になれるはずだ。 なにせ前世からの縁深き者だから・・。
一臣はそう自分を言いくるめて、妹たちの要望に従った。そして両親と深く話し合う必要性をひしひしと感じた。
真理子と同じぐらいの子どもは、まだうるさくて、喧しい子どもで生意気な子達が多かったが、真理子だけが距離を置いて、どこか大人っぽく見えていた。
わが妹ながら不思議な雰囲気を持った女だなとさしてその時は違和感を持たなかった。しかし、まさか前世の記憶をもって神様が憑いていたとは思わなかった。
わが妹は、あやかしに縁が深き者だったとは・・。
一臣はこの非日常な事態についていけなかった。反乱だけでも驚愕なのに、更に、妹が、神様に憑かれて、花嫁へいくとは・・。よりにもよって下賤な『ゴミの金継ぎ師』とよばれるアクタと言う変な名前の見たこともない男へ嫁へやれだと・・。
冗談じゃない。いかに力をもつあやかしとはいえ、やはり妹だ。心配はある。
それに、真理子は聡明だから、良い家に娶ってもらって、我が家の有利な駒になってくれるだろうと思っていた。
一臣は、妹を可愛いと思うし、情はそれなりにあるが、家を継ぐものとしては、どこか利益を生み出す女として期待をせずにはいられないのだ。両親も多分そう思っていただろう・・。
一臣は、この理不尽な不条理な現実に憤りと癇癪を起さずにはいられなかった。
両親は、不思議と納得して、受けいれている。満知子もだ。何故なんだ?
あやかしに誑かされているのか? 一臣には、家族が理解できなかった。 俺が狭量なせいか?
後に、満知子から、「密偵を下さい。」といままでにかつてなく無表情に頼むのは、更に驚愕の事態だった。
満知子にこんな面があったとは・・。一臣はあ、ああと言いながら、満知子から、心境を吐露された時は、妹がこんなことを考えていたとは・・と思い知らされた。
それに、満知子から、「恐らくお父様とお母様は・・安和子姉様のこともあり、もう昔には戻れないと悟っていますわ。それならいっそ、神様とやらの妙な力をとりこめないかとどこかで下心もありますよ。わたくしも、安和子姉様の死でおもい知らされたのです。夫のせいで亡くなったのですよ・・。もう無知なお姫様じゃ生き残れないかもしれない・・。夫に翻弄されるのが妻の運命なのなら、それをなんとかして阻止したい・・。そう考えることはいけないことでしょうか? 女が生意気なと思うでしょうが・・わたくしは死にたくないのです・・。お兄様!。」
かつてなく、妹が、目を強く意志を持って、どこか怒りをもって、一臣を睨んだ時は、思わず怯みそうになった。
嗚呼・・そうか・・。両親も妹も本当は生き残りとか色々考えていたんだ・・。
そうか・・もう昔じゃないんだ。この激動の情勢で、両親も妹も変わらざるを得なくなったんだ。
一臣は、今更ながらに、己の鈍感さを思い知らされた。家族がやっと心変わりをしたわけが分かった。
一臣だけが、まだ、昔と今は情勢が違うことを実感していなかったのだ。
己の愚かさに一臣は失望しながら、妹の要望に従った。誰だって死にたくないからだ。
それに・・力があるのなら、真理子に情をもっていざとなったら役に立つかもしれない・・。そんな下世話な欲をもって、一臣はすまない。真理子・・。俺も生き残りたいんだ。親に見習おう。
少しうしろめたさを覚えながら、妹を得体のしれないあやかしに受け渡すことにした。
大丈夫だろう。真理子なら幸福になれるはずだ。 なにせ前世からの縁深き者だから・・。
一臣はそう自分を言いくるめて、妹たちの要望に従った。そして両親と深く話し合う必要性をひしひしと感じた。
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