ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第14話 夢の託宣

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アクタと真理子が再会した当日の夜半ごろ、疎開した真理子の家族全員の夢に、神々しい光を放った子どもが、冷厳な声で、託宣をした。

『此度の事は災難であったな。じゃが、これで真理子という娘の運命の相手が巡り会った。その男はゴミの金継ぎ師と呼ばれる職人だ。とても名工で、有名な職人だ。その者と、真理子は前世から深い縁で結びついている運命の二人じゃ。二度と離れてはならない二人じゃ。』

『彼ら二人を伴侶とせよ。』


一臣が厳しい顔で、「物の怪め。お前の甘言には惑わされぬぞ。前世など・・。真理子が持っているはずがない。何も言わなかった。」と非難した。

しかし、神々しい子どもはほおと言った。
『真理子は、前世の事を言わなかったのか・・。あれは秘密主義者じゃのお。現世の家族にも言わなかったとはな・。じゃが真理子は前世の仲間と一緒に居たがっているよ。』

『真理子もそれを望んている。特に長姉の死因が関わっているらしい。夫のせいで姉は殺された。女の人生とはこんなものかと嘆いていたよ。』

「何!? 安和子のことか!あれは・・。」

「それは真でございますか・・あの子が嘆いていたとは・・。そうですか安和子の死で・・。」
母は蒼白な顔で俯いた。

「し、しかしああなるとは思わなかったのだ。まさかあの男があんな風に死ぬとは・・。私たちも騙されていたのだぞ。」

父は慌てて弁解をした。

「お父様、お母様。落ち着いて・・。お兄様。真理子の真意を知りたいです。真理子はなんでおっしゃいましたか?」

次姉 満知子は穏やかな口調で家族を鎮め、神様に尋ねた。

『もう知らない人と結婚するのは嫌だと怖がっていたよ。前世も騙されて恋人に殺された哀れなお姫様だったからのお。安和子の死で余計、何も知らない人に嫁すのがとことん厭になったんじゃよ。その点。アクタは前世からよく知っている仲間じゃからのお。真理子は前世も今もアクタを男性として慕っているよ。』

『真理子の伴侶となるのはアクタ様以外考えられない。とも断言していた。』

真理子に真意を聞くがいい・・。我の託宣が真実であると解るであろう。と子どもは冷厳に託宣して神々しく消えた。

翌朝、彼ら全員は、夢の託宣を見たと話しあい、真理子当人に問い合わせた。

「嗚呼・・夢の託宣をご覧になったのね。ええ・・わたくしには前世の記憶があります。それも悲惨な殺されたお姫様の記憶が・・わたくしの前世は、亡霊となって、アクタ様とあの神様と出会ったのです。様々な冒険をしました。
その旅は、わたくしの心の深い傷を癒してくれました。あの方たちに出会わなければわたくしは今頃怨霊としてさ迷っていたかもしれません。心が浄化されて天に昇って、こうやって転生できたのは本当に奇跡としかいいようがありません。」


「お父様。お母様。今まで黙って済みません。過去のことなど言いたくなかったのです。あのような悲惨な人生・・。わたくしは今度こそ幸福になると決めて、命を精一杯生きようと決めたのです。護身術もその為です。
二度と、無惨に命を奪われたくなかったのです。強くなりたかった。でも今度は安和子姉様が・・。
もう嫌です。わたくしはもう知らない人に嫁に行きたくない。アクタ様とずっと一緒にいたい。」


「真理子・・そんな辛い過去が・・。」

満知子は哀れみの表情で妹を見た。

それでもまだ一臣は抗っていた。
「し、しかし前世は前世だ。 真理子は真理子だ。殺された姫ではない・・。そうだろう?」
真理子はきっと兄を睨んだ。
「いいえ・・過去も現在も含めてわたくし真理子という魂となったのです。決して前世は切り捨てられません。
魂は同じなのですから・・。」

「お父様。お母様。お姉様。本当に御免なさい。真理子は運命の人を見つけてしまったのです。もう今回は自分で選びたいのです。よく知っている方と幸福になりたいのです。分かって下さい。お兄様・・。」


「「「真理子・・。」」」

真理子にそんな前世の記憶があったとは・・。しかも恋人に殺された非業の姫だったとは・・。
どおりで年に似合わず聡明で醒めた雰囲気のある子どもに育ったはずよ。

それは男性不信になろうな。よほど信頼できる者でなければなあ・・。

父親は異様に深く納得した。母親もどこか母としての直感で違和感の理由が分かってホッとした。
あれはあの異様に大人びた感じは、前世の影響もあったのね。


満知子は興味深かった。まさか妹が前世の記憶をもって神様とも付き合っていたとは・・。
世の中は本当に摩訶不思議だわ。

兄、一臣は認めたくなくて歯を食いしばった。だってそうだろう。非現実的だ。可愛い真理子が前世の記憶を持って
神様とやらの超越存在と付き合っていたなんで・・どうすればいいんだ。
一臣は現実主義者のため、非合理的な運命にある真理子を認めたくなかった。

しかし現実は余りにも非情だ。
真理子の醒めきった目が、前世の記憶があることを裏付けていた。このような目は、恵まれた世間知らずのお嬢様がする眼じゃない。世界の不条理と、汚濁と醜さを知りすぎた眼だ。

嗚呼・・クソッタレ。認めるしかないのか・・。あの忌々しい神の通りに真理子を運命のアクタと言う男に嫁がせるしかない。


でなければ真理子は出家するだろう。真理子はそういう思い切った面がある。
兄としては、妹の幸福を考えて、望み通りにするしかなかった。

ぎりりと歯を食いしばって、一臣は分かったとしぶしぶと頷いた。

これが真理子と言う妹をもった兄の運命か・・。一臣は現実がガラガラと崩壊する瞬間を聞いた。


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