ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第10話 無価値な者の反乱

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或る女と或る男の疑惑と予想通り、上の人達には、更に上の者達に、反乱を企てていた。

或る男のとおり、その主人は有能だったが、鋭利すぎて、扱いにくい妖刀のような人物だった。
不正を許さぬ潔癖すぎる性質を持って、不倫をした従弟さえも即座に「穢れし者」と現場を見た途端、そういって斬り捨てた。

だが普通の人の思いは、余りにも余りだ。親戚だから庇ってやればいいのにとたかが不倫如きで・・ともやもやした気持ちだった。

そもそも、結婚は、主人のような立場にあるのは、一種の政略結婚だ。 お互いに家や親の望みでしただけであって、本人同士の望みではない。中には上手くいく人も居るが、ほとんどが冷めきった関係だ。

密かにそれぞれの愛人を持つのが普通だ。でなければ、疲れるし、しんどい関係を続ける気力を失う人が多い。

息抜きが必要なのだ。 逃げ場が必要なのだ。

主人は潔癖すぎて、そういう弱い立場や心が分からなかった。

そのあまりにも苛烈で扱いにくい性質を疎んじた偉い人達は、主人を冤罪にかけて、処分した。
厄介払いである。 確かに主人はいつも正しいが、その正しさが鼻につく人もいるのだ。

主人は、冤罪をかけられ、処分を言われた後、しばらく黙って家に謹慎していた。

或る男は、主人の不気味な沈黙が気持ちが悪かった。

ある日、主人は或る男のような者はいないと無関心な目で、ぼつりと呟いた。

「こんな世界。下らぬわ。 私を言われもない罪をなすりつけ、処分した愚物ども。 今に見ているがいい。」

眼は冷え冷えとして、抑揚も死人のようだった。

ぞっと或る男は、背筋が凍りそうだった。 やる。この男は必ず復讐すると確信した瞬間だった。


奇妙な不気味な平穏に満ちた時間が過ぎた。しかし或る男にはこれが仮初の平穏であると気づいていた。



数年後・・、大きな大きな反乱が起きたと友人や知り合いが叫んで来た時、嗚呼来るべき時が来たと思った。

世界に無価値な者として捨てられた人たちが反乱したんだ。

復讐だ。大きな大きな復讐が始まったんだ。


主人はとうに消えていた。しばらく前に、仲間らしき者と同行して、或る男は、この空き家の番人のような立場になった。

反乱が始まったから、この家も危険かもしれない。或る男は、逃げようかと思い、友人に頼んでしばらく避難することにした。

家族も一緒に避難することにした。

ちょっと離れた郊外、田舎のほうだ。温泉もある。安らぐのには丁度良いだろう。

今まで貯めた賃金は、丁度ある。この機会に人生を楽しもう。

どうせいつかは死ぬのだ。主人も相当悔しい思いをしたからああなったのだ。

或る男は、気づかなかった。この事が原因で、離れ離れになった姉 或る女ととある温泉街で再会することになろうとは夢にも思わなかった。


或る男と或る女は、やはり特殊な嗅覚とか共通するものを持っていたのである。

実の姉と弟だったからである。奇しくも、反乱によって再会する運命にあった。


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