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第6話 嫁の離縁
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はるは、申し分のない女だった。こんなしがない職人の嫁に来て、随分と地味な女と思ったものだが、生き方そのものが凛として、孤高に咲く花のようだった。
はるは、こんなところに来る嫁じゃないとアクタは思った。
春は、嫁としても優秀だったが、武芸にも、ある程度教養にも嗜みがあり、もっとはるに相応しいところがあるんじゃないかとアクタは思って、何度もはると話しあった。
相性もあるし、はるはもっと仕えるに相応しい家でないと宝の持ち腐れになってしまうとアクタは言った。
俺たちは恐らく、上手くお互いに生かしあえない関係だ。どこかで距離がある。
はるもそれを薄々気づいていたようで、目を反らしながらも、アクタの言葉には心に残ることがあったようで、はるは、「一度、父と兄と話を付けます。」と思い切って実家へ帰った。
長い間、はるは兄と半ば喧嘩に近い論争をした。
「傷もすっかり癒えたし、わたしに仕える家を斡旋してください。二度とあんな娘に仕えるのは御免です。」
はるは、教育者としても、乳母としても優秀だった。
しかし、娘を矯正できないで、愚かな男に誑かされて身を崩すのを止められなかったはるの矜持と屈辱はあまりあるものだっただろう。今度あの男を見たら何をするかわからないとはるはぶつぶつと呟いた。
確かにはるにとっては天災みたいな出来事だったろう。
兄は、はるの気性を良く分かっていた。男より男らしい面があって、堅物だった。絶対に曲がったことが嫌いだった。そんな優秀なはるが職人の嫁になるのにはどこか違和感があった。
はるは、誰かを教育する勤めが向いている。
兄も良く考えて、友人たちのつてで、より上の武家の嫡子の乳母や、教育係として仕える仕事が斡旋された。
しかし、その代わり、厳しい仕事に耐えられる女で、親が死んでもなかなか実家には帰れない。そんな厳しい過酷な仕事だった。はるは、弱った父を見捨てられなく、辞めようかと思ったが、父はいつになく力強い目をして、言った。
「はるよ。これはお前にとって、高みへ行くチャンスだ。お前は、向上力がある。男のように前進力もある。
お前には普通の嫁には向いていない。思い切って、この父を捨てよ。でなければお前はもっと力を身に付けることはできない。」
はるは、その仕事に就くことを決めた。
アクタの家にいったん戻って、はるは深く謝罪した。
「申し訳ありません。アクタ様。せっかくアクタ様のような素晴らしい方の嫁になったのに・・さる武家に仕える仕事が再び来ました。今度はもっと厳しい仕事で、おいそれと帰ることもできません。わたしはその仕事に携わりたいです。しかし、そうするとアクタ様が・・。わたしは一つの事しかできません。お許しください。アクタ様・・。
わたしと離縁していただけませんでしょうか?」
力強い目で、はるはアクタに真剣に謝罪した。アクタを軽んじているわけではない。唯、自分の道をきめた男性的な目を見て、アクタはああやはり・・。はるは尋常な女じゃなかった。なにがあろうと、前を進む男より強い女だった。そんな強い女はもっと相応しいところへ行かなきゃならない。
アクタは、束の間の嫁の本来の姿を見て、納得した。
「その方が良い・・あんたはもっと力強く羽ばたける女だ。俺の嫁には向いてねえよ。」
アクタははるの離縁を受け入れた。はるは少し悲しそうな顔をしたが、きりりと凛とありがとうごさいますとお礼を言った。
これで良かったんだ。なんとなくアクタは思った。お互いの道が偶々交差しただけだ。
はると俺の関係はきっとそういうものだったんだ。
お互いに納得して、離縁は円満に為された。わずかな寂しさはあったが、はるの将来と、アクタの思い人 お姫様、
今は真理子と言う女があって、はるとアクタの婚姻は上手くいかなかった。
人と人の相性や、運命はそうやって雲のように風のように水のように流れていく・・。そうアクタは感じた。
それをせき止めても、淀むだけだ。濁って、腐るだけだ。
アクタはそれを知っていた。
はるは、こんなところに来る嫁じゃないとアクタは思った。
春は、嫁としても優秀だったが、武芸にも、ある程度教養にも嗜みがあり、もっとはるに相応しいところがあるんじゃないかとアクタは思って、何度もはると話しあった。
相性もあるし、はるはもっと仕えるに相応しい家でないと宝の持ち腐れになってしまうとアクタは言った。
俺たちは恐らく、上手くお互いに生かしあえない関係だ。どこかで距離がある。
はるもそれを薄々気づいていたようで、目を反らしながらも、アクタの言葉には心に残ることがあったようで、はるは、「一度、父と兄と話を付けます。」と思い切って実家へ帰った。
長い間、はるは兄と半ば喧嘩に近い論争をした。
「傷もすっかり癒えたし、わたしに仕える家を斡旋してください。二度とあんな娘に仕えるのは御免です。」
はるは、教育者としても、乳母としても優秀だった。
しかし、娘を矯正できないで、愚かな男に誑かされて身を崩すのを止められなかったはるの矜持と屈辱はあまりあるものだっただろう。今度あの男を見たら何をするかわからないとはるはぶつぶつと呟いた。
確かにはるにとっては天災みたいな出来事だったろう。
兄は、はるの気性を良く分かっていた。男より男らしい面があって、堅物だった。絶対に曲がったことが嫌いだった。そんな優秀なはるが職人の嫁になるのにはどこか違和感があった。
はるは、誰かを教育する勤めが向いている。
兄も良く考えて、友人たちのつてで、より上の武家の嫡子の乳母や、教育係として仕える仕事が斡旋された。
しかし、その代わり、厳しい仕事に耐えられる女で、親が死んでもなかなか実家には帰れない。そんな厳しい過酷な仕事だった。はるは、弱った父を見捨てられなく、辞めようかと思ったが、父はいつになく力強い目をして、言った。
「はるよ。これはお前にとって、高みへ行くチャンスだ。お前は、向上力がある。男のように前進力もある。
お前には普通の嫁には向いていない。思い切って、この父を捨てよ。でなければお前はもっと力を身に付けることはできない。」
はるは、その仕事に就くことを決めた。
アクタの家にいったん戻って、はるは深く謝罪した。
「申し訳ありません。アクタ様。せっかくアクタ様のような素晴らしい方の嫁になったのに・・さる武家に仕える仕事が再び来ました。今度はもっと厳しい仕事で、おいそれと帰ることもできません。わたしはその仕事に携わりたいです。しかし、そうするとアクタ様が・・。わたしは一つの事しかできません。お許しください。アクタ様・・。
わたしと離縁していただけませんでしょうか?」
力強い目で、はるはアクタに真剣に謝罪した。アクタを軽んじているわけではない。唯、自分の道をきめた男性的な目を見て、アクタはああやはり・・。はるは尋常な女じゃなかった。なにがあろうと、前を進む男より強い女だった。そんな強い女はもっと相応しいところへ行かなきゃならない。
アクタは、束の間の嫁の本来の姿を見て、納得した。
「その方が良い・・あんたはもっと力強く羽ばたける女だ。俺の嫁には向いてねえよ。」
アクタははるの離縁を受け入れた。はるは少し悲しそうな顔をしたが、きりりと凛とありがとうごさいますとお礼を言った。
これで良かったんだ。なんとなくアクタは思った。お互いの道が偶々交差しただけだ。
はると俺の関係はきっとそういうものだったんだ。
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それをせき止めても、淀むだけだ。濁って、腐るだけだ。
アクタはそれを知っていた。
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