ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第40話 ゴミの金継ぎ師

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アクタは、旅の終わりに、海と山の狭間にある職人街で、各国の職人が作った品物が豊富に売られているところを廻った。

なかには貴族に献上されるものとして、極上の品物も売っていた。それを見たアクタは子どものように目を輝かせて、すげえどうやったらこんな美しくて繊細なテイーカップや、食器を創れるんだ!と興奮して丹念に見た。

いつかはこんなものを創ってみたい。 アクタも地方では名職人と言われたけど、上には上が居るのだ。

アクタは井の中の蛙だなと己を思い、もっと精進して、研鑽して上を目指したいと夢を抱いた。

港には外国からの輸入された品物も豊富にある。その中で、珍しい形の陶器や、エキゾチックな神の像など奇想天外なものも見たり、有象無象の中から、煌めく極上の品物を見抜くのは、アクタのような職人にも苦労した。


中には誰が作ったのだと思う位、素人にもわかる位、見事で精緻な工芸品もあった。


アクタは、ここに来て良かったと十分に見回って、ここのちかくの山の奥に住み家を探すことにした。

その家で工房を創るのだ。

アクタのための工房。アクタの創った品物が近いうちここらへんで売られるだろう。


でもアクタは、ゴミのような欠片でも美しく仕上げる「ゴミの金継ぎ師」として宣伝した。

普通にも、美しいものは創れる。しかし、壊れたものや、ゴミのようなものからより美しく仕上げることができるのは極わずかだ。

アクタはその僅かな職人を増やそうと考えた。


1年後、アクタは、山奥でいつも忙しく何かを創っている。

傍らには藍とソラや、他にも捨て犬とか猫がアクタの家の周りでくづろいている。

楽園のように、動物たちは戯れたり、獲物などを追いかけたりしている。


でも苦情は出ない。ここは、あまり人が来ない山奥の一軒家だからだ。


アクタは鶏や、豚など家畜も育てて、畑で野菜なども創りなるべく自給自足できるようにした。


月に一回、職人街へ訪れる時、アクタは創った品物を大切そうに抱えて、旅をする。


それを見送るおかっぱの幼女神とお姫様もいた。


アクタは手を振りながら、さてこれからまた忙しくなるぞと己を奮起した。


幸いにも、懇意となった商店や、職人たちもいる。アクタも職人の組合に入って、「ゴミの金継ぎ師」と名乗った。

初めはみんなになんだそりゃと笑われたが、アクタの名手椀を見て、ほうと驚嘆の目で黙らせた。


品物を見て、アクタの技巧や技術は見事なものだと解り、職人たちも目の色を変えた。

アクタといると、色々考えたこともなかった斬新な工芸品などがイメージが浮かぶと言われたこともある。


アクタは、彼らの創作欲の触媒にもなったようだ。


1年かけて、アクタは彼らの仲間として受け入れられた。


弟子もできた。まだ幼い男の子は目を輝かせて、先輩のやり方を見様見真似でやっている。

アクタはそれを微笑ましく見守った。


本当に、こんな時が来るとは思わなかった。

追放された時はもう終わったなと思ったが、人生は何かあるか分からない。


人生の光と闇をあれほど濃厚に味わったことはないだろう。


それを乗り越えることができたのは、幼女神とお姫様、あの怖い神のお陰だとアクタは信じてやまなかった。

彼らに力を貸してやろうという気分にさせたアクタそのものの資質にもよるものだが、アクタはいつもお祈りした。


皆さまありがとう。俺はここまで来られました。 皆様の尽力のお陰です。

アクタは山や海や太陽に向けて、祈った。


彼はすっかり信心深くなった。神は理不尽だけど時々、きまぐれに優しい事をなさる。



そういうものなのだとアクタも理解できた。



これからもアクタは「ゴミの金継ぎ師」として生きていくだろう。

どんなに壊れたものも心も人も何もかも直す職人として生きていく。


それがアクタの人生だ。一瞬一瞬を噛みしめるようにアクタは生きる。 この人生はアクタにとって光に満ちたものだった。

         完




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