ゴミの金継ぎ師

栗菓子

文字の大きさ
上 下
30 / 58

第30話 アクタの追跡

しおりを挟む
犬と猫をボロボロにしてゴミのように捨てた馬車の轍がくっきりと残っている。
もう何か月も経つから無いだろうと思っていたが、アクタの目は強力な加護で犯人が逃げた跡が鮮やかに見える。

アクタは、荷台を運んで、犯人を追いかけた。


お姫様もおかっぱの幼女神も、藍とソラもいつになく神妙な雰囲気でアクタの動向を静かに見ていた。


1週間後、ようやく犯人の家を突き止めた。 アクタは加護のせいだろうか、身体能力や、色々と身体がなにもかも良くなり、万能状態のように疲れをしらずに、歩き続けた。 藍とソラのために少し休んだりして、食べ物や水を飲ませて体の健康を良好にさせた。


馬車を置いてあるところの近くにある粗末な木造の家は馬車を走らせていた御者の家だろう。


遠くに、貴族らしい邸がある。 門番もいて頑丈な門がある。
間違いない、藍とソラをボロボロにして捨てた貴族の家だ。 


深夜、アクタはそっと門に触れて、見えない金と銀の糸で強靭な錠と鎖を分解して、粗末な木造の家へ走った。

藍とソラを乗せている荷台は見えないところへ隠している。
可愛そうな彼らを再び恐怖に陥らせるわけにはいかない。幼女神が結界を張っていて、見えないようにしている。


アクタは、木造の家を見張り、馬車の御者が出でくるのを見計らった。何故か御者の顔に変な模様が見えた。犯人の証だろうか? 加護は色々と見えないものを可視化させる。

アクタは、御者を後ろから羽交い絞めにし、ナイフを首にあてた。

ひっと御者が震えて「あ、あんたは・・?」とか細く尋ねた。

家に入れろとアクタは命令した。御者は無様に泣きながらいいなりになった。

「犬と猫をボロボロにして殺したな。この邸の主人だろう。お前はそれを知っているはずだ。主人の所業を教えろ。」

無感動に淡々と縄で木造の椅子に御者は括られて身動きが出来なかった。

ナイフをちらつかせながら、アクタは冷ややかに御者に問いかけた。

御者は臆病でたわいなかった。御者は泣き喚きながら懇願した。

「俺のせいじゃねえ。俺は唯の下人でさあ。唯主人の言う通りに従うしかなかった! あの方は怖いひとでさあ。

あの方は、自分より格上の人が我慢ならなくて、そのお方が可愛がっていた犬と猫を借金のカタに取り上げて、目茶苦茶にしたんでさあ。あの方は自分が一番でないと気が済まない性質でした。
あの方の妻になった方も多分あの方に殺されたんたんでさあ。でもなにも証拠はないし、あの方は狡猾で証拠が残るようなことはなかなかなさらないんでさ。 俺のような下人の話など何も効果はねえです。俺はここで働いて金をもらっているんです。家族もいるんです。何も言えないんです。犬と猫は可哀相だと思うけど俺だって我が身が惜しい!!」


下人は偽らざる本音で叫んだ。

アクタは冷ややかにふうんと呟いた。 アクタは犬と猫が味わった痛みをこの犯人の一味に味わせた。
ナイフや暴力で徹底的に痛めつけた。ひいひいと下人は腫れあがった顔と折れた歯を残した血まみれの口を喘がせた。瀕死状態になったころアクタは、復元能力で、壊れた身体を復元した。瞬時に瀕死状態から元の状態に戻った
下人は「あ、あれ‥俺、今・・夢? 」と混乱した様子でアクタを凝視した。

やはりか。下人は無知で上の人に逆らえない動物的な男だった。動物は生きることを諦めない。
下人は生きる心が強かったのだ。アクタは自分の憶測が正しかったことを知った。

恐らく亡くなった人は生きる心があまりなかったのだ。

アクタは自分がこれほど冷酷で冷徹な心を持ったことはないと思った。

下人の罰は犬と猫と同じように一回で瀕死状態にさせたからこれでいいだろう。しかし首謀者は必ず殺さなければと
思った。これ以上被害者が出る前に殺さなければと誓った。


「お前・・すまないと思うなら、その方が馬車ででる時を知らせろ・・お前はもう罰を受けた。何もしない・・。
その主人が居ないほうがお前もすっきりするだろう‥安堵するだろう・・。」

下人ははっとしたようにアクタを見て、ゆっくりとうなずいた。

「2日後・・あの方は友人のパーティのために馬車で移動する。その時がチャンスです。俺が馬車を動かします・・。」

下人は動物的な勘で主人よりアクタのほうが力が上だと解った。
下人は嫌な主人がいなくなるなら願ったり叶ったりだと思った。

下人は良くも悪くも動物的な男だった。


数日後、ボロボロに痛めつけられた男の遺体が奇しくも犬と猫が打ち捨てられた場所に放置された。

アクタは馬車の御者と組んで、「どこに行く?この方向ではないぞ。」といぶしかむ貴族リース・デイランを襲った。
アクタは冷ややかに「思い出したか?ここはお前が犬と猫をボロボロにして捨てたところだぞ。」と告げた。
リース・デイランは愕然と目を見開いて信じられないというようにアクタを見た。

嗚呼・・こういうやつは自分がやられるとは思わないんだな。どういう思考回路をしているんだか・・。アクタは瞬時にこの男がどういう人間なのか知ってうんざりした。

「あ、あれは・・」リース・デイランが誤魔化そうとしても無駄だった。彼の顔にはくっきりと犯人の刻印があった。アクタにしか見えない刻印だ。

これは便利だな。確かな証だ。 アクタはそう思いながら無感動に痛めつけた。
藍とソラが味わった痛みを倍にして壮絶なリンチを加えた。制裁した。

彼はまだ信じられないような顔で息絶えた。
下人の裏切りも、犬や猫のための復讐者がいる事も彼の思考では予想外だったのだろう。


一体どんな思考回路をしているんだ。こういう奴らは・・。

ぼいとアクタはゴミのように捨てた。 こういう奴が一番この扱いに相応しかったのだ。

アクタは正しくそう認識した。

アクタは「他の奴らに御者に盗賊にあったと知らせろ。」と言った。御者も殴った。上手く御者も被害者と思わせるように偽装させた。

御者はふらふらとしながら何回も頷いた。


アクタの復讐は終わった。藍とソラ、そして見も知らぬ奥方への分だ。

アクタは気分が爽快であった。

彼は、走り去った。 結界をはっている幼女神とお姫様。藍とソラの元まで走った。

後を追う人はいないかと振り向いたが居なかった。


アクタはこれも加護の効果だろうかと思った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

処理中です...