ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第30話 アクタの追跡

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犬と猫をボロボロにしてゴミのように捨てた馬車の轍がくっきりと残っている。
もう何か月も経つから無いだろうと思っていたが、アクタの目は強力な加護で犯人が逃げた跡が鮮やかに見える。

アクタは、荷台を運んで、犯人を追いかけた。


お姫様もおかっぱの幼女神も、藍とソラもいつになく神妙な雰囲気でアクタの動向を静かに見ていた。


1週間後、ようやく犯人の家を突き止めた。 アクタは加護のせいだろうか、身体能力や、色々と身体がなにもかも良くなり、万能状態のように疲れをしらずに、歩き続けた。 藍とソラのために少し休んだりして、食べ物や水を飲ませて体の健康を良好にさせた。


馬車を置いてあるところの近くにある粗末な木造の家は馬車を走らせていた御者の家だろう。


遠くに、貴族らしい邸がある。 門番もいて頑丈な門がある。
間違いない、藍とソラをボロボロにして捨てた貴族の家だ。 


深夜、アクタはそっと門に触れて、見えない金と銀の糸で強靭な錠と鎖を分解して、粗末な木造の家へ走った。

藍とソラを乗せている荷台は見えないところへ隠している。
可愛そうな彼らを再び恐怖に陥らせるわけにはいかない。幼女神が結界を張っていて、見えないようにしている。


アクタは、木造の家を見張り、馬車の御者が出でくるのを見計らった。何故か御者の顔に変な模様が見えた。犯人の証だろうか? 加護は色々と見えないものを可視化させる。

アクタは、御者を後ろから羽交い絞めにし、ナイフを首にあてた。

ひっと御者が震えて「あ、あんたは・・?」とか細く尋ねた。

家に入れろとアクタは命令した。御者は無様に泣きながらいいなりになった。

「犬と猫をボロボロにして殺したな。この邸の主人だろう。お前はそれを知っているはずだ。主人の所業を教えろ。」

無感動に淡々と縄で木造の椅子に御者は括られて身動きが出来なかった。

ナイフをちらつかせながら、アクタは冷ややかに御者に問いかけた。

御者は臆病でたわいなかった。御者は泣き喚きながら懇願した。

「俺のせいじゃねえ。俺は唯の下人でさあ。唯主人の言う通りに従うしかなかった! あの方は怖いひとでさあ。

あの方は、自分より格上の人が我慢ならなくて、そのお方が可愛がっていた犬と猫を借金のカタに取り上げて、目茶苦茶にしたんでさあ。あの方は自分が一番でないと気が済まない性質でした。
あの方の妻になった方も多分あの方に殺されたんたんでさあ。でもなにも証拠はないし、あの方は狡猾で証拠が残るようなことはなかなかなさらないんでさ。 俺のような下人の話など何も効果はねえです。俺はここで働いて金をもらっているんです。家族もいるんです。何も言えないんです。犬と猫は可哀相だと思うけど俺だって我が身が惜しい!!」


下人は偽らざる本音で叫んだ。

アクタは冷ややかにふうんと呟いた。 アクタは犬と猫が味わった痛みをこの犯人の一味に味わせた。
ナイフや暴力で徹底的に痛めつけた。ひいひいと下人は腫れあがった顔と折れた歯を残した血まみれの口を喘がせた。瀕死状態になったころアクタは、復元能力で、壊れた身体を復元した。瞬時に瀕死状態から元の状態に戻った
下人は「あ、あれ‥俺、今・・夢? 」と混乱した様子でアクタを凝視した。

やはりか。下人は無知で上の人に逆らえない動物的な男だった。動物は生きることを諦めない。
下人は生きる心が強かったのだ。アクタは自分の憶測が正しかったことを知った。

恐らく亡くなった人は生きる心があまりなかったのだ。

アクタは自分がこれほど冷酷で冷徹な心を持ったことはないと思った。

下人の罰は犬と猫と同じように一回で瀕死状態にさせたからこれでいいだろう。しかし首謀者は必ず殺さなければと
思った。これ以上被害者が出る前に殺さなければと誓った。


「お前・・すまないと思うなら、その方が馬車ででる時を知らせろ・・お前はもう罰を受けた。何もしない・・。
その主人が居ないほうがお前もすっきりするだろう‥安堵するだろう・・。」

下人ははっとしたようにアクタを見て、ゆっくりとうなずいた。

「2日後・・あの方は友人のパーティのために馬車で移動する。その時がチャンスです。俺が馬車を動かします・・。」

下人は動物的な勘で主人よりアクタのほうが力が上だと解った。
下人は嫌な主人がいなくなるなら願ったり叶ったりだと思った。

下人は良くも悪くも動物的な男だった。


数日後、ボロボロに痛めつけられた男の遺体が奇しくも犬と猫が打ち捨てられた場所に放置された。

アクタは馬車の御者と組んで、「どこに行く?この方向ではないぞ。」といぶしかむ貴族リース・デイランを襲った。
アクタは冷ややかに「思い出したか?ここはお前が犬と猫をボロボロにして捨てたところだぞ。」と告げた。
リース・デイランは愕然と目を見開いて信じられないというようにアクタを見た。

嗚呼・・こういうやつは自分がやられるとは思わないんだな。どういう思考回路をしているんだか・・。アクタは瞬時にこの男がどういう人間なのか知ってうんざりした。

「あ、あれは・・」リース・デイランが誤魔化そうとしても無駄だった。彼の顔にはくっきりと犯人の刻印があった。アクタにしか見えない刻印だ。

これは便利だな。確かな証だ。 アクタはそう思いながら無感動に痛めつけた。
藍とソラが味わった痛みを倍にして壮絶なリンチを加えた。制裁した。

彼はまだ信じられないような顔で息絶えた。
下人の裏切りも、犬や猫のための復讐者がいる事も彼の思考では予想外だったのだろう。


一体どんな思考回路をしているんだ。こういう奴らは・・。

ぼいとアクタはゴミのように捨てた。 こういう奴が一番この扱いに相応しかったのだ。

アクタは正しくそう認識した。

アクタは「他の奴らに御者に盗賊にあったと知らせろ。」と言った。御者も殴った。上手く御者も被害者と思わせるように偽装させた。

御者はふらふらとしながら何回も頷いた。


アクタの復讐は終わった。藍とソラ、そして見も知らぬ奥方への分だ。

アクタは気分が爽快であった。

彼は、走り去った。 結界をはっている幼女神とお姫様。藍とソラの元まで走った。

後を追う人はいないかと振り向いたが居なかった。


アクタはこれも加護の効果だろうかと思った。


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