ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第20話 アクタは特別な贄になった

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古来から、神は人を喰らう・・とどこかの伝道師の爺さんが言っていた。

アクタは馬鹿馬鹿しいと思っていた。そんなことよりとても怖い人間ばかりじゃないか。
アクタは子どもの頃、弱者ゆえに、厭な奴らから陰湿ないじめを受けたり、一時は殺されかかった。

その経験もあって、人間のほうが怖いじゃないかとアクタは幼少ながらに思って見えない神より、生きている悪人が怖い。とアクタはずっと思っていた。

でも、おかっぱの幼女神や、お姫様の亡霊などアクタには見しらぬ未知の世界に迷い込んで、アクタは少し混乱した。やはり、目に見えないけど、居る存在はいるのだ。

アクタはとても良い神様とお姫様に出会えて幸福だった。

しかし、今度の神様にあって、アクタは神の本質に触れた気がした。

嗚呼・・。これが本来の神の性質なんだ。

贄を代償に、何かを与える神も居るんだ。

アクタは不思議と怖くなかった。唯、食べるか食べられるかだ。とてもシンプルだ。

代償に強力な加護をくれるなんで素敵じゃないか。あの無惨に何もできずに盗賊に殺された子どもがアクタは忘れられなかった。あまりにも悲惨な死だった。

弱肉強食の掟によってあの子供は殺された。アクタは唯震えて動けなくて救えなかった。

あまりにも自分が無様でちっぽけな存在に感じられた。

アクタは心に空洞を抱えながら、とても怖い神様に感謝した。アクタ如きの命で、強力な力を得るなら安いものだ。

アクタは己をそれほど大したものとは見ていなかった。唯、必死に生きている弱い男だ。


アクタは助け助けられてやっとの思いで生きている者だった。

でも、どうしてもユルセナイ者を見た時、アクタはうあああああと叫びたくてたまらなかった。

こんな世界を見せた何かを恨んだり、自分を呪ったりした。でもすべてが無駄だ。世界はあまりにも広大で
無常で美しく醜い光景をアクタに見せる。

これでアクタも神様の贄として、何かの一部になるのだ。

アクタはその善良な性格と美しさと脆さを併せ持った魂を好ましいと思ったおかっぱの幼女神ととても怖い神に気に入られて、特別な贄になった。


アクタはいつか全部神様に食べられるだろう。でもいい。アクタは何かを変えたかった。

この理不尽な世界に何かを刺したかった。どうしようもないやつらを何とかしたかった。


アクタは強い心を持ちつつあった。

アクタはとても美しく強い魂を持ちつつあった。

おかっぱの幼女神は時折アクタに見惚れるようになった。変な神だ。アクタの容姿は変わらないのに。目がなくなっただけなのに。

アクタは知らないことだったが神は魂を見抜いてしまう。とても美しい純粋な魂もあれば、醜い歪んた魂もある。

アクタは稀な美しい良い魂を持った存在だった。

『アクタ・・そなたはそなたの価値を知らぬな。存在そのものに救われる命もあるんじゃよ。そなたは美しい・・。』


おかっぱの幼女神は密かにアクタの事を語った。


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