ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第16話 アクタの受難

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深夜、いつものように、犬と猫と夕飯を済ませて、夕暮れを見ながら眠ろうとしたごろ、おかっぱの幼女神が警告した。

『アクタよ。きな臭い気配がする。夜盗や敵が来るかもしれぬ。隠れよ。』

はっと「か、神様!」とアクタは叫んで、慌てて、荷台を押して長い草に覆われた草原の中に隠れた。

猫と犬にしっと口に手を当てて、アクタも口を手で抑えた。みっとない悲鳴が出るかもしれないアクタは荒事には慣れていない。怖い。でも神様が言ったから、警告には従わなきゃ。

しばらくアクタたちは身を潜んだ。

すると遠くから馬の蹄の音と、荒々しい声が聞こえた。 悲鳴や怒号も近くなっている。

アクタは震えながら犬と猫を抱えて身を縮めた。念のために自分で自分の口に布を巻き付けて悲鳴が出ないようにした。

こうすればどこか安心する。油断は禁物だ。


げらげらと穢い恰好をした太った卑しそうな顔をした男や、厭な笑いをする男など、気味悪い男ばかりが集まっている剣呑な気配がする夜盗たちが丁度、アクタの近くに止まった。


見つかったか!?

アクタは観念したが、いや違う。なにか理由があって、止まったんだ。

アクタは茂みの中からこっそり見て後悔した。

「裏切り者。逃げようとしたな。許さん。」

お頭らしき男が、縛られた男を強かに殴った。男は呻きながらもきつくお頭を見据えた。

「へえ。こんな盗賊団にも仲間意識があるのかよ。驚いたな。あんたは実の息子でも使えないと容赦なく殺していた癖に。あんたにはついていけねえんだよ。何でも殺してしまう。うんざりなんだ。」

「言いたいことはそれだけか。じゃああばよ。」

お頭は容赦なく鉈で男の背中を斬った。男は血まみれになって絶命した。

ひいとアクタは叫びそうになったが、布があってよかった。アクタは堪えることができた。


また一人二人アクタの前で殺されていく。仲間割れだ。アクタはこの惨劇に震えながらも耐えた。

アクタにできることはない。無力なアクタは神様やお姫様に力を借りて助けてもらっている。

これほど自分が弱かったとは・・。アクタは情けない思いで唯、裏切り者と呼ばれた奴らが殺されていくのを見ていた。

荒々しい足音が聞こえる。その男と、殺した男の顔をアクタは忘れられなかった。

「人でなし!殺してやる!」

まだ幼い子供が殺された男に縋り付いて、泣きながら盗賊たちを罵った。

盗賊たちはゲラゲラと嘲り笑った。

そして真顔になると、「裏切者の子どもも同罪だ。始末しなきゃあ。」とぼつりといって、舌なめずりして男は
子どもの首を絞めた。子どもの顔が赤黒く変色する。

嗚呼。やめろ。やめてくれ。アクタは叫びたかった。でも体が動かない。声も出ない。腰が抜けて動けない。

こどもはがはっといって倒れた。嗚呼‥死んでしまった。

アクタはすまないと言いたかった。目の前で殺されてしまうなんで・・。


盗賊たちの顔は禍々しく魑魅魍魎のようだった。
彼らは用は済んだとばかりに、死体を打ち捨て馬で荒々しく遠くへ去っていった。

アクタはいつまでもそれを見ていた。

だんだん体が動くようになった。

アクタはおそるおそると子どもに近づいた。

「ああ・・ごめんな。」

アクタはなんだか辛くて謝った。すると、子どもからかすかに呻き声が出ていきなり動き始めた。
かはっとぜいぜいと呼吸を荒々しくげほげほとしていた。

生きてる!仮死状態だったんだ!

アクタは驚いて子どもに近寄って抱えた。
「お、おい。お前、大丈夫か!」

こどもはまだ意識が朦朧としてわからないようでいきなり現れた大人をぼんやりと見た。

「あ、あんたは・・?」

「通りかがりに見てしまったんだ! いますぐ逃げよう!」

アクタは子どもの介抱を荷台でして、必死で潰れた喉や、傷跡に軟膏を塗ったりして薬草をすりつぶした薬を飲ませたりした。水を少し与えた。でも声帯が傷ついてなかなか飲めないのだ。


アクタは焦燥感を抱いた。頼む。こんなところであんな奴らに簡単に殺されないてくれ!

アクタはできることはやって、荷台を押して、盗賊が去った方向とは逆に逃げた。


また命を拾ってしまった。今度は子どもだ。しかも親らしき者を殺された子ども。

アクタは泣きそうだった。

しかしこれがアクタの運命かもしれないとアクタは観念しつつあった。

「神様。これでよかったんですよね。まだ子どもだし。」

『アクタ・・そなたも苦労するのお。放っておくこともできたのに。』

『ええ・・その方法もあったのですよ。アクタ様らしいというか‥。災難を抱え込むとは・・アクタ様はお人よしですね。心配ですよ。』

おかっぱの幼女神とお姫様は冷たく放置という別の選択も言った。

アクタは思わずうぐうとなった。考えもしなかった。 

なんか女って冷たいところがあるなあ。アクタはじみじみとそう思った。



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