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第12話 アクタのかすかな影
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アクタは幸福だった。
美しい犬や猫も回復して、今は小屋の近くを歩けるようになっている。
おかっぱの幼女神やお姫様が見守っているから安心だ。
だがアクタは時折、犯人に対してやりきれない憤懣を抱くことがあった。
恋人に殺されたお姫様
何もしていないのに痛めつけられ瀕死状態になった犬と猫
いきなり追放された俺
世界はあまりにも残酷で歪なんじゃないのか?
何故そう言う奴らが多いんだろう?
アクタには信じられないことばかりだった。
今は工房でアクタの「金継ぎ師」として没頭できるからいいが、時折、憎悪が込み上げてくる。
アクタは初めて感じるこの感情に戸惑っていた。
親が、家族が流行り病で亡くなった時も仕方がないで済ませたが、これは違う。
明らかに悪意によって人生を狂わされた者ばかりたちが集まっている。
もはや、運命としか言いようがない。アクタはおかっぱの幼女神に、犬と猫を痛めつけた貴族はどんな奴だと聞いた。
『甘い声と稀に見る美貌をもった優し気な微笑をもった青年らしいぞ。そやつはおそらく擬態して、獲物を物食しているな。いるんじゃよ。畜生以下の心を持った奴らが・・。』
お姫様もかすかな声で呟いた。
『わたくしもそういうお方でした。美貌ではないけど、人望厚きお方でした。まさかあのような心をお持ちであったとは・・あれが醜悪な人の擬態なのですね。わたくしは上手く騙された獲物にすぎませんでした。』
アクタは憤然とその話を聞いていた。
アクタもいきなり唐突に追放された、被害者なのにだ。ゆるせない。
まあ。その斬ろうとした貴族の息子は仲間割れだろうか殺されたから良いが、他にも仲間がいるはずだ。
アクタはその仲間がのうのうと生きていることが時々我慢ならなかった。
犯人がのうのうと自由に人生を謳歌できることが信じられなかった。
そんな奴らは隔離や早く死刑になってほしい。
アクタはそう願わずにはいられなかった。
「天罰はくだらないのかい。そういう神様は居ないのかい?」
アクタは幼女神に問うた。おかっぱの幼女神は首を振った。
『いないよ。この世は本来弱肉強食なんじゃよ。それを抑えているのが人としての心をもった真っ当な人達がかろうじて良心がある心がある世界を生み出しているんじゃよ。わしらにできるのはせいぜい、加護を授けることぐらいじゃよ。人は人が処罰するしかないよ。まあごくまれに天罰を加えなければならない時もあるが、それは神々の掟じゃ
人間の考えの範疇には収まらぬ。』
「そうなのかい。いや加護を受けたから贅沢は言えないな。」
そう言いながらもアクタは内心畜生以下の心の持ち主、醜悪な奴らは早く罰がくださればいいいのと不満に思わずにはいられなかった。
神様は加護をくれるけど、人にはどこか冷酷で冷淡なところがあるな。
それが神様なんだろうか?
一定の冷ややかな距離がある。
それが人と神の違いかもしれない。
アクタはなんとなくそう感じずにはいられなかった。
美しい犬や猫も回復して、今は小屋の近くを歩けるようになっている。
おかっぱの幼女神やお姫様が見守っているから安心だ。
だがアクタは時折、犯人に対してやりきれない憤懣を抱くことがあった。
恋人に殺されたお姫様
何もしていないのに痛めつけられ瀕死状態になった犬と猫
いきなり追放された俺
世界はあまりにも残酷で歪なんじゃないのか?
何故そう言う奴らが多いんだろう?
アクタには信じられないことばかりだった。
今は工房でアクタの「金継ぎ師」として没頭できるからいいが、時折、憎悪が込み上げてくる。
アクタは初めて感じるこの感情に戸惑っていた。
親が、家族が流行り病で亡くなった時も仕方がないで済ませたが、これは違う。
明らかに悪意によって人生を狂わされた者ばかりたちが集まっている。
もはや、運命としか言いようがない。アクタはおかっぱの幼女神に、犬と猫を痛めつけた貴族はどんな奴だと聞いた。
『甘い声と稀に見る美貌をもった優し気な微笑をもった青年らしいぞ。そやつはおそらく擬態して、獲物を物食しているな。いるんじゃよ。畜生以下の心を持った奴らが・・。』
お姫様もかすかな声で呟いた。
『わたくしもそういうお方でした。美貌ではないけど、人望厚きお方でした。まさかあのような心をお持ちであったとは・・あれが醜悪な人の擬態なのですね。わたくしは上手く騙された獲物にすぎませんでした。』
アクタは憤然とその話を聞いていた。
アクタもいきなり唐突に追放された、被害者なのにだ。ゆるせない。
まあ。その斬ろうとした貴族の息子は仲間割れだろうか殺されたから良いが、他にも仲間がいるはずだ。
アクタはその仲間がのうのうと生きていることが時々我慢ならなかった。
犯人がのうのうと自由に人生を謳歌できることが信じられなかった。
そんな奴らは隔離や早く死刑になってほしい。
アクタはそう願わずにはいられなかった。
「天罰はくだらないのかい。そういう神様は居ないのかい?」
アクタは幼女神に問うた。おかっぱの幼女神は首を振った。
『いないよ。この世は本来弱肉強食なんじゃよ。それを抑えているのが人としての心をもった真っ当な人達がかろうじて良心がある心がある世界を生み出しているんじゃよ。わしらにできるのはせいぜい、加護を授けることぐらいじゃよ。人は人が処罰するしかないよ。まあごくまれに天罰を加えなければならない時もあるが、それは神々の掟じゃ
人間の考えの範疇には収まらぬ。』
「そうなのかい。いや加護を受けたから贅沢は言えないな。」
そう言いながらもアクタは内心畜生以下の心の持ち主、醜悪な奴らは早く罰がくださればいいいのと不満に思わずにはいられなかった。
神様は加護をくれるけど、人にはどこか冷酷で冷淡なところがあるな。
それが神様なんだろうか?
一定の冷ややかな距離がある。
それが人と神の違いかもしれない。
アクタはなんとなくそう感じずにはいられなかった。
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