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第11話 犯人 貴族リースサイド②
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私リース・デイラン男爵は、あれがきっかけで何かが覚醒した。それは私を満たす欲望の神だったのかもしれない。
私は表向き、母譲りの美貌と、父譲りの商才と処世術で上手く世間や、周囲のものを騙しているが、鋭い人や目ざとい人は私の本性に気づいているかもしれない。
忌々しい事だ。ふうと私は溜息をついて、私だけが一番の世界に行きたいと埒もなく夢を抱いたこともある。
理性では、リース・デイランは貴族で一番位が低く、貴族では蔑視の対象になると制止しようとしているが、私の欲望が、この世で一番の存在になりたいという欲望は止まらず、私の欲望の暴走が始まった。
初めは密かに理性を保ちながら、私は格上の令嬢を狙った。
やはり資金繰りに困っている令嬢だ。私は擬態を装って、優しく親身になる男性として、彼女に近づいた。
容姿はまあまあ。凡庸な頭をもっているどこにでもいる令嬢だ。
子爵でも、当初は、祖国に貢献した英雄の子孫でも時がたつにつれて劣化する。
その意味で、子爵は、祖国にあまり貢献をしていなかった。唯先祖の功績を食いつぶし、過去の栄誉に縋る名ばかりの子爵であった。
いまにも断絶しそうな子爵とその夫人は、格下と言っても金が豊富にある相手を金の出る木とかでも思ったに違いない。私の甘い美貌も柔らかな微笑もそれを上手く相手を侮らせ、油断させた。
私は上手く子爵令嬢を騙して、結婚して、子爵とその夫人を喜ばせた。 子爵令嬢は少し不安げだった。
彼女は正しい。私の欲望に気づいたのだろうか?
私は密かに令嬢に少量の毒物を入れた飲み物を飲ませた。無味無臭で証拠の痕跡は無い特殊な毒だ。
少しずつ、何年もかけて私は彼女の理性と判断力を弱らせた。
もう一つある。彼女が私の美貌に惑わされた初心な令嬢であったせいでもあったので、彼女はかすかな不安と疑惑を抱きながらも誰もが喜ぶ婚姻を受けいれたのだろう。
これで子爵家は助かるし、我が家も子爵の懇意の縁のある貴族たちと繋がることができる。それは商売の拡大にも必要だった。人脈は大切だ。
彼女はだんだん弱っていく自分の身体をどう思ったのだろうか?私を不審に思ったかもしれない。でも証拠はない。
彼女は、結婚して数年後、「しばらく子爵家の別邸へ療養しに行きたい。」と言って、去っていった。
その後、皮肉にも、彼女は、その別邸の池で滑って転落死したのだ。
私は驚愕の顔をして動揺している夫の顔を見せた。 私も思いもよらぬことだったから不自然には見えなかっただろう。
でも証拠はない。唯間接的に殺しただけだ。
私は彼女の死に顔を見て、嗚呼と呻いて顔を伏せた。私は笑いそうだったからだ。
子爵と夫人は私を信じて疑わなかった。それほど私の擬態は上手かった。私は彼女に対していつも優しい夫の演技をした。
殆どの人が私に騙されていた。観察眼が鋭い人や、敏感な人は私の前から遠さがっていった。
私がやったのかもしれないと不審を抱いたのだろう。しかし証拠はない。
私は、不慮の事故で妻を失った夫として振舞った。
それを信じないのは極わずかな人達のみであった。
私は私の欲を満たすために妻を毒牙にかけた。単にそうしたかったからだ。
嗚呼妻の名前だけは憶えていなければ怪しまれる。
レイラ・ド・ジーン子爵令嬢だった。 覚えていなければいけない。
私は密かにさよなら。レイラ楽しかったよ。と語った。
私は表向き、母譲りの美貌と、父譲りの商才と処世術で上手く世間や、周囲のものを騙しているが、鋭い人や目ざとい人は私の本性に気づいているかもしれない。
忌々しい事だ。ふうと私は溜息をついて、私だけが一番の世界に行きたいと埒もなく夢を抱いたこともある。
理性では、リース・デイランは貴族で一番位が低く、貴族では蔑視の対象になると制止しようとしているが、私の欲望が、この世で一番の存在になりたいという欲望は止まらず、私の欲望の暴走が始まった。
初めは密かに理性を保ちながら、私は格上の令嬢を狙った。
やはり資金繰りに困っている令嬢だ。私は擬態を装って、優しく親身になる男性として、彼女に近づいた。
容姿はまあまあ。凡庸な頭をもっているどこにでもいる令嬢だ。
子爵でも、当初は、祖国に貢献した英雄の子孫でも時がたつにつれて劣化する。
その意味で、子爵は、祖国にあまり貢献をしていなかった。唯先祖の功績を食いつぶし、過去の栄誉に縋る名ばかりの子爵であった。
いまにも断絶しそうな子爵とその夫人は、格下と言っても金が豊富にある相手を金の出る木とかでも思ったに違いない。私の甘い美貌も柔らかな微笑もそれを上手く相手を侮らせ、油断させた。
私は上手く子爵令嬢を騙して、結婚して、子爵とその夫人を喜ばせた。 子爵令嬢は少し不安げだった。
彼女は正しい。私の欲望に気づいたのだろうか?
私は密かに令嬢に少量の毒物を入れた飲み物を飲ませた。無味無臭で証拠の痕跡は無い特殊な毒だ。
少しずつ、何年もかけて私は彼女の理性と判断力を弱らせた。
もう一つある。彼女が私の美貌に惑わされた初心な令嬢であったせいでもあったので、彼女はかすかな不安と疑惑を抱きながらも誰もが喜ぶ婚姻を受けいれたのだろう。
これで子爵家は助かるし、我が家も子爵の懇意の縁のある貴族たちと繋がることができる。それは商売の拡大にも必要だった。人脈は大切だ。
彼女はだんだん弱っていく自分の身体をどう思ったのだろうか?私を不審に思ったかもしれない。でも証拠はない。
彼女は、結婚して数年後、「しばらく子爵家の別邸へ療養しに行きたい。」と言って、去っていった。
その後、皮肉にも、彼女は、その別邸の池で滑って転落死したのだ。
私は驚愕の顔をして動揺している夫の顔を見せた。 私も思いもよらぬことだったから不自然には見えなかっただろう。
でも証拠はない。唯間接的に殺しただけだ。
私は彼女の死に顔を見て、嗚呼と呻いて顔を伏せた。私は笑いそうだったからだ。
子爵と夫人は私を信じて疑わなかった。それほど私の擬態は上手かった。私は彼女に対していつも優しい夫の演技をした。
殆どの人が私に騙されていた。観察眼が鋭い人や、敏感な人は私の前から遠さがっていった。
私がやったのかもしれないと不審を抱いたのだろう。しかし証拠はない。
私は、不慮の事故で妻を失った夫として振舞った。
それを信じないのは極わずかな人達のみであった。
私は私の欲を満たすために妻を毒牙にかけた。単にそうしたかったからだ。
嗚呼妻の名前だけは憶えていなければ怪しまれる。
レイラ・ド・ジーン子爵令嬢だった。 覚えていなければいけない。
私は密かにさよなら。レイラ楽しかったよ。と語った。
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