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第10話 犯人 貴族リースサイド①
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私、リース・デイランは、男爵という一番貴族としては位は低くても、貴族としての矜持は忘れないつもりである。
我が麗しき母は、絶世の美姫といってもいい女だった。
しかし性格に難ありで我儘で癇癪持ちだった。己の意のままにならぬと気が狂ったように喚き散らすのだ。
彼女は自分が一番でないと我慢できない性格だった。
しかし世界は彼女を否定し敬遠する。哀れな美しい母よ。
親戚はこの厄介者の母をなんとかして片付ける策を考えた。
商人でしかない父が、多額の婚礼金をもって厄介者の母と結婚したのは、貴族との縁もできたら商人として大成するかもしれないと思ったからだろう。
そして、母の美貌にも惑わされたに違いない。
しかし母は大層自尊心が高かった。厄介払いとばかりに侮蔑している平民の商人に押し付けられて、母は密かに親戚や父に復讐を誓ったに違いない。
数年後、押し付けた親戚が謎の不審死を遂げた。犯人はいまだ不明であるが、母は濃厚な容疑者だった。
彼女はそんな視線にも動じず、己の道を進んだ。父の愛と金を食いつぶしながら、母は病気で亡くなったが、最期には貴族らしくなく汚い言葉で「クソッタレ。畜生。あたしが一番正しいんだ。一番なんだ。いい気味だ。あの男。
早く死にやがってさ・・皆嫌いだよ。あたしはあたしが一番正しいんだよ。」
彼女は喚き散らして、侍女や使用人を手酷く扱って誰からも恨まれながら死んでいった。
見事な末路であった。彼女は息子である私を少し戸惑いながらも愛していた。
しかし彼女は己が一番の子どもだった。子どもは母親にはなれない。
私は母が息子を苦手にしていることを知っていた。
私も母親によく似たらしい。癇癪こそは起こさないが、一番良いものや他者の幸福が妬ましくてたまらない時がある。 私こそが一番なのに!私こそが特別なのに!
その欲望はなかなか尽きることが無い。
ある時、目障りな格上の貴族が、金の運営回りがまずくなり、金銭に苦労している事を知った時、これはチャンスだと思った。目障りな格上の貴族の面目を潰し、大切なものを奪う機会である。
私は幸いにも、母の美貌を受け継ぎ、父によく似た商才を持っていたため、金だけは豊富にあった。
私は巧妙に、苦労している格上の貴族を罠にはめ、いつのまにか莫大な借金を背負わせた。
そして、彼が一番大切にしている高価な犬と猫を借金のカタに奪った。
彼はその二匹だけはやめてくれえと泣きながら土下座したが、私は気に入らなかった。仮にも貴族とあろうものが
希少な高価なものとはいえ、泣くなど恥さらしとしか思わなかった。
私は遠慮なく彼から全てを奪った。
なるほど、確かに良い血を持っているなと思わせる気品あふれる猫と犬だ。
だがな。私より気品があって、貴族らしい面をみせる人は嫌いなのだよ。畜生でもな。
私は何か月も犬と猫をボロボロになるまで痛めつけた。
嗚呼‥私はこれほどまでに残虐な性質も持っていたのか?
私はかつてない欲と解放に満たされた。これこそが私の本質なのだ。
気分が爽快であった。気持ちがいい。もっと素晴らしいものを壊したい。そうすれば私リース・デイランが一番、素晴らしい存在になるのだ。
私はそう信じて疑わず、馬車から用済みになった犬と猫を容赦なく打ち捨てた。
私は微笑みながらその死骸を見て、馬車でくつろいだ。
馬車の御者、使用人が気持ちが悪そうな顔で彼を密かに見ていたことも知らずに、
私リース・デイランは私が一番という夢に酔いしれた。
犬と猫はとうに忘れた。
我が麗しき母は、絶世の美姫といってもいい女だった。
しかし性格に難ありで我儘で癇癪持ちだった。己の意のままにならぬと気が狂ったように喚き散らすのだ。
彼女は自分が一番でないと我慢できない性格だった。
しかし世界は彼女を否定し敬遠する。哀れな美しい母よ。
親戚はこの厄介者の母をなんとかして片付ける策を考えた。
商人でしかない父が、多額の婚礼金をもって厄介者の母と結婚したのは、貴族との縁もできたら商人として大成するかもしれないと思ったからだろう。
そして、母の美貌にも惑わされたに違いない。
しかし母は大層自尊心が高かった。厄介払いとばかりに侮蔑している平民の商人に押し付けられて、母は密かに親戚や父に復讐を誓ったに違いない。
数年後、押し付けた親戚が謎の不審死を遂げた。犯人はいまだ不明であるが、母は濃厚な容疑者だった。
彼女はそんな視線にも動じず、己の道を進んだ。父の愛と金を食いつぶしながら、母は病気で亡くなったが、最期には貴族らしくなく汚い言葉で「クソッタレ。畜生。あたしが一番正しいんだ。一番なんだ。いい気味だ。あの男。
早く死にやがってさ・・皆嫌いだよ。あたしはあたしが一番正しいんだよ。」
彼女は喚き散らして、侍女や使用人を手酷く扱って誰からも恨まれながら死んでいった。
見事な末路であった。彼女は息子である私を少し戸惑いながらも愛していた。
しかし彼女は己が一番の子どもだった。子どもは母親にはなれない。
私は母が息子を苦手にしていることを知っていた。
私も母親によく似たらしい。癇癪こそは起こさないが、一番良いものや他者の幸福が妬ましくてたまらない時がある。 私こそが一番なのに!私こそが特別なのに!
その欲望はなかなか尽きることが無い。
ある時、目障りな格上の貴族が、金の運営回りがまずくなり、金銭に苦労している事を知った時、これはチャンスだと思った。目障りな格上の貴族の面目を潰し、大切なものを奪う機会である。
私は幸いにも、母の美貌を受け継ぎ、父によく似た商才を持っていたため、金だけは豊富にあった。
私は巧妙に、苦労している格上の貴族を罠にはめ、いつのまにか莫大な借金を背負わせた。
そして、彼が一番大切にしている高価な犬と猫を借金のカタに奪った。
彼はその二匹だけはやめてくれえと泣きながら土下座したが、私は気に入らなかった。仮にも貴族とあろうものが
希少な高価なものとはいえ、泣くなど恥さらしとしか思わなかった。
私は遠慮なく彼から全てを奪った。
なるほど、確かに良い血を持っているなと思わせる気品あふれる猫と犬だ。
だがな。私より気品があって、貴族らしい面をみせる人は嫌いなのだよ。畜生でもな。
私は何か月も犬と猫をボロボロになるまで痛めつけた。
嗚呼‥私はこれほどまでに残虐な性質も持っていたのか?
私はかつてない欲と解放に満たされた。これこそが私の本質なのだ。
気分が爽快であった。気持ちがいい。もっと素晴らしいものを壊したい。そうすれば私リース・デイランが一番、素晴らしい存在になるのだ。
私はそう信じて疑わず、馬車から用済みになった犬と猫を容赦なく打ち捨てた。
私は微笑みながらその死骸を見て、馬車でくつろいだ。
馬車の御者、使用人が気持ちが悪そうな顔で彼を密かに見ていたことも知らずに、
私リース・デイランは私が一番という夢に酔いしれた。
犬と猫はとうに忘れた。
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