ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第3話 アクタの足に刺さった欠片

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アクタはふらふらと、血が足りないなと思いながらも必死で歩いた。

1時間も歩いたごろ、アクタは少し汗が出た。病み上がりだけあって息切れもしてきた。

もう少しだけ歩こうとアクタは決めていたが、不意に足裏に痛みが走った。

今度は何だ! もういい加減にしてくれ!


アクタは痛みを我慢して靴の裏を見た。小さなガラスの欠片が刺さっていた。幸いにもかすり傷だった。
アクタは急いで、老婆の頂いた水で洗い流した。
布できつくまいて、これ以上酷くならないよう用心した。

何故こんなところにガラスの欠片が?

アクタは不審に思って周囲を見回した。あった。窓が割れたボロボロの家だ。どうも夫婦喧嘩をしているようだ。

親父らしき人が、何かを投げて窓がまだ割れてガラスが飛び散った。

アクタのほうまで飛んで行った。だからか。アクタは納得した。

アクタはむらむらと怒りが沸き上がって、大声で家まで叫んだ。

「いい加減にしてくれ。窓のガラスがこっちにまで飛んできたんだ。危ないだろうが!」

ぴたりと静寂がやってきた。
しばらくして、家の玄関から親父らしき人が現われた。

「あんたか。大声を出したのは。放っておいてくれ。これは家族の問題だ。」

アクタは呆れてまた叫んだ。

「あんた。何言ってんだ。硝子の欠片を踏みそうになったんだそ。怪我になるところだったんだ。
危ないじゃないか! 知らないぞ。これは下手したら罪になるかもしれないんだぞ!気を付けろ!」

親父は目をぱちくりしていった。

「え?そうなのか? それじゃあやめるわ。悪かったな。じゃあな。」

親父はそう言ってガラガラと玄関を閉めた。

あまりにもあっさりした言葉にアクタは呆れてものもいえなかった。

妻らしき人が割れた窓からすまなそうに謝っていた。


アクタはもう心底疲れ果てた。なんとなく割れたガラスの破片を少し集めて頑丈な袋に入れてまた歩いた。

ガラスは忌々しいが光の反射で綺麗だった。勿体ないと迂闊にも職業柄集めてしまったのだ。

くそったれ。あの奥さんも気の毒に。別れればいいのに・・。

どこにもいろんな人生があるとアクタは思い知った。


夜は野営をすることにした。
寝袋とあまり人に見つからないように、大きな木の影に潜んだ。獣になったようだった。

婆が創ってくれた握り飯が美味しかった。水はまだある。大丈夫だ。


アクタはほっとぐっすりと眠りについた。

何故か蚊や蟲に噛まれなかったな?アクタは目が覚めた時、体を点検したらなんともなかった。

アクタはそれを不思議がっていた。もしかしたらあの白い土地神の加護を頂いたのかも・・

アクタはなんとなくそれを知った。

盗賊らしき人も見かけたが、アクタは見つかるなと念じて身を潜めていた。

そのせいかなぜか盗賊には会わなかった。

アクタはやはり加護があるらしいと思った。




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