5つの花の物語

栗菓子

文字の大きさ
上 下
14 / 34
馬酔木の章

第9話 罪の発覚

しおりを挟む
男と娼婦たちがこっそりと遠くで見た呪力者が作った花は確かにギザギザの歯がついていた。悪魔のようだった。
あれが復讐の花か・・

しばらくしてとある貴族の館で、大量に動物のようなものに殺された遺体が発見された。
そこは、あの娼婦が言っていた頭がおかしい貴族たちの家族だった。
世間は狭いものだ。罪はますます発覚していった。なんと、自分の家族の一員、まだ幼い妹さえも強姦されて殺されていたという。まさか犯人は実の父や兄・・・?
それを思うとぞっとした。本当に家族ぐるみで隠蔽していたんだ。時々、突然、自分の家族、仲間でさえも殺害する異常者が生まれやすい家系だったそうだ。恐らく近親相姦の家系でもあったからだ。遺伝子異常者が生まれやすい。
貴族社会の負の面が露わになったようだ。
これからは、ますます近親相姦や、異常者が出やすい家系に厳しい世界になるだろう。
でなければ、被害者は報われないだろう。

弱い者が抵抗するには、呪力者や力がある者に依頼してできるだけ真実を暴いたり、復讐をすることしかできない。
シスターや、今回の件で男は色々と世界の負の面を見てきた。

まだまだ心は弱いが、もうシスターや他の娼婦たちのためにも、男は生きることにした。
強くならなければならない。少しずつ男は人生について学んでいった。
シスターにお願いした。シスターは闇の世界の住人を知っているね。俺に強くなるように斡旋してくれないかと頼んだ。
シスターは幼子が危険な道を歩もうとしていることに気づいた母親のような顔をした。でもぐっとこらえて、
「そんなに強くなりたいの?覚悟はできているの?」と男に尋ねた。

「うん。今回の件で分かった。俺は強くならなきゃいけない。」

「強くなったら、教会へ戻って来る。シスターの役に立つように頑張る。」

「まあ・・」
シスターはそう言って絶句した。
本当に良いのかとシスターは何回も言って、男を闇の住人に引き渡した。
その住人は、後継者が欲しいと男を連れて行った。

男は地獄を味わった。しかし心が耐えられたのは、自分で志願したから故と、強くなるためだった。
壮絶な修行と体験をして数年後、男は教会へ戻ってきた。
仕事があったらいつでもくるようにと誓約を書かされた。
法では裁けぬ悪人を代理で殺す仕置き人だ。人殺しに酔いしれてはいけない。正義に酔いしれてはいけない。
何事も溺れてはいけない。
これが男の新しい戒めになった。

男はシスターを助け、娼婦たちと弱者を守る会を開き、食事や衣服を準備し工面する反面、夜では、悪人を殺していた。
これが男の新しい日常になりつつあった。
多分、これがシスターと呪力者に会ったのがきっかけで、俺の運命になったんだ。
シスターも闇の住人だったのだ。今はもう抜けているが、時折昔の影がある。
男には、もう闇の匂いがする人間がわかるようになった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強靭で純粋なる殺意の塊

ツヨシ
ホラー
車から降りて来た男は、まさに殺意の塊だった。

オニが出るよ

つぐみもり
ホラー
僕は喘息の治療のため、夏休み中は田舎の祖父母の家に泊まることになっていた。 山道で出会った、狐面をした虹色の髪の少年が警告する。 「帰れ、お前のような奴が来る所じゃない」 遠くで、甲高い悲鳴のような鳴き声が響いた。

クリア─或る日、或る人─

駄犬
ホラー
全ての事象に愛と後悔と僅かばかりの祝福を。 ▼Twitterとなります。更新情報など諸々呟いております。 https://twitter.com/@pZhmAcmachODbbO

ゴースト×ライター

創也慎介
ホラー
"幽霊"が"人間"になるために――再生と復讐の物語 大女優の連載作品を影ながら執筆し、生計を立てていた作家志望の男・兵藤一樹。 自身の作品で勝負がしたい……という彼の願いは叶わず、常に著名人のために筆をとり続ける、浮かない毎日を送っていた。 世界に彷徨う”幽霊”を感じ取れる彼は、偶然にも似た境遇の女性・朝霧奈緒と出会い、誰にも打ち解けなかった自身の素性を明かす。 日陰を歩く”幽霊”としての自分を脱却すべく、一樹は作家としての戦いを挑むことを決める。

閲覧禁止

ホラー
”それ”を送られたら終わり。 呪われたそれにより次々と人間が殺されていく。それは何なのか、何のために――。 村木は知り合いの女子高生である相園が殺されたことから事件に巻き込まれる。彼女はある写真を送られたことで殺されたらしい。その事件を皮切りに、次々と写真を送られた人間が殺されることとなる。二人目の現場で写真を託された村木は、事件を解決することを決意する。

497グラム

ちみあくた
ホラー
深夜の病院で、「俺」は深い眠りから目を覚ました。 酷く記憶がぼやけており、何故、ここにいるのか、すぐには思い出せない。でも、すぐ傍にある新生児用ICU(緊急治療室)の分厚いドアのお陰で、一つだけ大切な事を思い出した。 生まれて間もない「俺」の子が、今、この扉の奥で死にかけている。 何故、こんな羽目に陥ったのか? いつの間にか、すぐ側に来ていた妻・真奈美に訊ねても、成り行きは判らない。 必死で頭を巡らせる「俺」の前に、深夜の病院を徘徊する異界の住人が姿を現し、思い出せないままでいる「俺」の罪を告発し始める。 真っ暗な病棟を逃げ惑う「俺」が最後に辿り着く真実とは……? エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しております。

怖い話ショートショート詰め合わせ

夜摘
ホラー
他サイトで書いた話の再掲や、新作ショートショートを載せて行きます。 全て一話完結です。怪談・オカルト有り、人怖有りです。 短い時間でお手軽に読めるシンプルな怖い話を目指しています。 少しでもヒヤッとして貰えたら嬉しいです。 ※ものによっては胸糞注意です。 ※同じ作品をノベルアップ+さんでも短編として掲載しています。 ※作品情報の画像は夜摘が撮った写真を写真加工ドットコム様で加工したものです。

処理中です...