5つの花の物語

栗菓子

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馬酔木の章

第5話 男の考察

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男は、それから多くの人々の人生を観察するようになった。
嫉妬と卑屈で根性がひねこびたり、虐待で精神が抑圧され破壊されて狂った奴もいた。
自己肯定感が必要だと男は思った。何か一つでも社会に役に立ったと思うことが大事だとシスターは言った。
破壊衝動は収まった。恐らくストレスだろう。
あの頃は、本当に何もかもうまくいかなくて頭が痛かった。
時折、男はシスターに作った作物を分ける。シスターはありがとう。これで今夜の料理に使えます。
貴方は十分に社会の役に立っていますよ。少しでも助け合うことが出来たら十分です。
シスターは人としての当たり前を言っていた。それが分からない。難しい人も居るのだとシスターは言った。
当たり前は当たり前じゃない。
男は今更ながらに思い知った。
慎ましくもささやかな幸福を味わって、男は少しずつ人生も捨てたものではないと思うようになった。

時折、仲間とささやかな宴会をしたり、女と戯れたり、少しずつ楽しいことが増えて男は嬉しかった。
男は以前より、人生について学ぶようになった。

そんな折、遠くの世界にいる貴族の人々が結婚式を開くと聞いた。
男は興味半分で見て見たかったが、まだ病気がぶり返すかもしれないのでやめておいた。
逆恨みや嫉妬などで身を滅ぼしたくない。

男はなるべく身の危険を避けた。
結婚式がある時、なるべく男は信頼できるシスターや娼婦と一緒にいた。
後ろ暗い傷や、過去の失敗もあるけど、その分人生について色々学んだなと男は、心地いい関係を楽しんだ。
そうか。妬まなくても心地いい関係や仲間はできるんだ。

男はどんどんまっとうな心を取り戻しつつあった。
静かで平穏な穏やかな時、男は安らぎを得た。


翌朝、外が騒がしいなと男は思った。シスターが蒼白になって、大変です。結婚式に出た人々が殺されて、これは大量殺人ですと叫んでいた。
え?男は一瞬、思考停止した。大量殺人?ウソだろ?
まさか俺が?いや。俺じゃない。俺は治りつつあるし。シスターと娼婦と一緒にいた。
男は自分を疑ったが、そうではないとすぐに判断できた。
心身喪失ではない。 まさか俺以外にも異常な心理状態に陥った人が逆恨みで?
男は内心どきりとなった。


シスターに、男は犯人は?と問いかけた。シスターは首を振ってまだ見つかっては居ない。
でも貴方ではないから安心しなさい。これからはなるべく私たちと一緒にいた方が良い。
信頼できる人といる事。なるべく怪しまれないように。

シスターは男の心の脆さを知っていた。男も頷いた。冤罪はごめんだ。

ねえ。シスター、まさか俺のような奴が逆恨みでやったんじゃ?

男は疑惑をシスターに言った。
分からないわ。でも弱い者はなるべくそれを言ってはいけない。災いが降りかかるかも知れないから。
娼婦も蒼白になって頷いた。
シスターの言う通りだよ。大人しくしていよう。すぐに見つかるはずだよ。
震えながら、娼婦は言った。多分、気に入らない奴らが報復として結婚式の人々を殺したんだよ。
そういうところあるもん。貴族って。

絶対、貴族がらみだよ。これは。

娼婦は頭のおかしな貴族にあったことがあると言った。そいつは、犯罪者だったけど罪を償った人をもう一度捕えて
奴隷として売ったと娼館で面白おかしく言っていた。
それは犯罪じゃないのかとある人は言ったけど、大丈夫大丈夫と貴族は根拠のない自信で満足げに言ったそうだ。
どこかずれがあるなと娼婦は思ったそうだ。
どうして大丈夫と思えるのか?家族も居るし、勝手に奴隷として売るなんでいいのかなとも思った。
それは合法じゃないと確信できたとも思った。


あの貴族は非合法的な事をやっても、自分だけは大丈夫と思っていたんだよ。頭が本当におかしいよ。
他にも自分だけは大丈夫と思う奴らが一杯いるんじゃないかな。

娼婦は語った。男はなるほどなあと思った。どうも恵まれすぎた奴らは驕りがでるようだ。
幼児じみた万能感があるらしい。 それが本当はいけない事とわからないらしい。

そういうやつらが多分、大量殺人をやったんだ。

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