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馬酔木の章
第2話 酩酊の結婚
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結婚式は内輪で済ませた。専門馬鹿である貴族夫婦は、友人が少なかった。派閥にも権力闘争にも巻き込まれたくなかった彼らは、ごくわずかな友人と、親しい親戚と使用人だけで結婚したがった。
婚約者もそれに否はなかった。
婚約者も本当に親しい友人と父母、祖父母や親戚、使用人のみだけにした。
しかしそれを面白くない良からぬ奴らもいた。
新しい夫婦となる彼らの姿は光り輝いて見えた。
彼らはチーズや、パン、とっておきのシチュー、 狩ってきた獣の肉を焼いたジビエ料理など、家庭料理が少し贅沢になった料理を堪能した。
途中、葡萄酒が、彼らにふるまわれた。親せきや友人の誰かが結婚祝いにと贈られたのだ。
それをうのみにした彼らは、愉快気に飲んでは、食べたり、踊ったりした。
本当に無防備で一番楽しい結婚だった。
翌朝、起きると奇妙な静寂があった。アセビは体中が痛んだ。中でも一番痛いのは下半身の鈍痛だった。
多量の出血がシーツにあった。どうみても破瓜の血である。それにしては体中打撲の痣だらけだった。
記憶が朧気だったが、かすかに抗った記憶がある。
断片的な記憶を思い出そうと必死になりながら、体の異常と館の奇妙な静寂に胸騒ぎがした。蒼白になりながらもアセビは父母や夫となるはずだった男の名を必死に呼んだ。
必死に結婚式があった大広間へよろよろと壁を支えにして歩いた。嫌な予感がどんどん高まった。
異様なほど静かだった。
震えながら大広間の扉を開くと、無数の結婚式に訪れた客たちの亡骸があった。
青白く血を吐いて彼らは息絶えていた。
毒だ。直感的にアセビは悟った。父は?母は? 夫は?
父母は大広間の片隅で夫婦で抱きしめあって息絶えていた。
夫は。嗚呼・・大広間の結婚式の中央、贅沢な料理が並べている中に、生首があった。
苦悶に満ちた顔は夫であって夫じゃないようだった。
客や死体からは金目のものは無くなっていた。盗賊だ。それも大きな賊だ。でなければ仮にも貴族の館や使用人にこんな非道な事をするはずがない。他の貴族とはなるべく争わず中立派を示していた父だ。あまり恨まれる性質ではなかったのに・・
アセビは泣きながら夫であった生首に触ろうとした瞬間、下半身に疼痛が走った。
アセビは夫は殺された。では、私とまぐわったのは・・下劣にも無防備な皆を殺した賊たちが面白がって犯したのだ。そう思うとアセビは吐きそうになった。記憶がないのがせめてもの救いだった。
アセビは崩れ落ちて気を失った。これが悪夢ならどうか醒めて。現実なら目覚めたくない。
アセビはそう祈りながら目を閉じた。
かすかに、悲鳴と怒号が聞こえた。
婚約者もそれに否はなかった。
婚約者も本当に親しい友人と父母、祖父母や親戚、使用人のみだけにした。
しかしそれを面白くない良からぬ奴らもいた。
新しい夫婦となる彼らの姿は光り輝いて見えた。
彼らはチーズや、パン、とっておきのシチュー、 狩ってきた獣の肉を焼いたジビエ料理など、家庭料理が少し贅沢になった料理を堪能した。
途中、葡萄酒が、彼らにふるまわれた。親せきや友人の誰かが結婚祝いにと贈られたのだ。
それをうのみにした彼らは、愉快気に飲んでは、食べたり、踊ったりした。
本当に無防備で一番楽しい結婚だった。
翌朝、起きると奇妙な静寂があった。アセビは体中が痛んだ。中でも一番痛いのは下半身の鈍痛だった。
多量の出血がシーツにあった。どうみても破瓜の血である。それにしては体中打撲の痣だらけだった。
記憶が朧気だったが、かすかに抗った記憶がある。
断片的な記憶を思い出そうと必死になりながら、体の異常と館の奇妙な静寂に胸騒ぎがした。蒼白になりながらもアセビは父母や夫となるはずだった男の名を必死に呼んだ。
必死に結婚式があった大広間へよろよろと壁を支えにして歩いた。嫌な予感がどんどん高まった。
異様なほど静かだった。
震えながら大広間の扉を開くと、無数の結婚式に訪れた客たちの亡骸があった。
青白く血を吐いて彼らは息絶えていた。
毒だ。直感的にアセビは悟った。父は?母は? 夫は?
父母は大広間の片隅で夫婦で抱きしめあって息絶えていた。
夫は。嗚呼・・大広間の結婚式の中央、贅沢な料理が並べている中に、生首があった。
苦悶に満ちた顔は夫であって夫じゃないようだった。
客や死体からは金目のものは無くなっていた。盗賊だ。それも大きな賊だ。でなければ仮にも貴族の館や使用人にこんな非道な事をするはずがない。他の貴族とはなるべく争わず中立派を示していた父だ。あまり恨まれる性質ではなかったのに・・
アセビは泣きながら夫であった生首に触ろうとした瞬間、下半身に疼痛が走った。
アセビは夫は殺された。では、私とまぐわったのは・・下劣にも無防備な皆を殺した賊たちが面白がって犯したのだ。そう思うとアセビは吐きそうになった。記憶がないのがせめてもの救いだった。
アセビは崩れ落ちて気を失った。これが悪夢ならどうか醒めて。現実なら目覚めたくない。
アセビはそう祈りながら目を閉じた。
かすかに、悲鳴と怒号が聞こえた。
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