5つの花の物語

栗菓子

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馬酔木の章

第1話 純粋な娘

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とあるところに、美術や哲学、天文学を嗜む貴族夫婦がいた。
夫人はピエリアといい、主はルノーと言った。彼らは知識欲に溢れていた。
自国のみならず、他国の美術、感性、哲学などあらゆるものを吸収したがっていた。

彼らは知識欲に溺れていた。そんな彼らが何の弾みか、白い結婚のはずが、ベッドインしてしまった。
彼らは童貞と処女だった。本能のままに彼らは足りないところをあわせて一つになった。

愛より同胞と思っていた彼らだったが、実質的に彼らは夫婦となってしまった。
その愛の結晶は、純粋な娘だった。
彼らはアセビと名付けた。馬でも酔いしれる愛で生まれた娘という意味で名付けた。

アセビは大変愛らしい清純な娘に育った。

夫婦は、アセビの顔を見ては、ここは君に似ているとかここは貴方にとか親馬鹿のように褒めたたえた。
彼らは夫婦愛と子ども愛に馬鹿のように酔いしれていた。

アセビは父母の仲が良いことは良いと思っていた。
ともあれ、アセビの人生は大層恵まれ平穏だった。
いつまでもこの時が続くとアセビはそう思っていた。

アセビが年ごろの娘になったごろ、結婚の相手探しが始まった。
一応貴族だから、それなりに釣り合った地位の貴族の丁度いい男と結婚させなければならない。
これが難しかった。 独身は居ても病気もちだったり、浮気性だったり難ありの人たちが多かった。
無理矢理、嫌な人と結婚させるよりは手元に置こうかとアセビと父母は相談しあった。

結婚相手探しに嫌気がさす頃、好ましい相手が現われた。
なかなか優秀で、美術が好きな貴族の男性である。アセビより5才年上で丁度良かった。
顔立ちもそれなりに整っていて、性格も好ましいひとであった。

相手もアセビを見て気にいったようである。アセビのような清純で穢れなき娘は、頬を染めて結婚相手を見た。
仲が良い夫婦になるだろうと彼らは思った。

数年間、婚約期間を経てアセビと婚約者はどんどん仲が深くなった。

お互いを良く知るにつれ、彼らは安らぎに満ちた家族になれるだろうと確信した。

婚姻も間近になって、母は自分の花嫁衣裳を仕立て直し、天文学の星と月と太陽の刺繍が見事な白い絹の鮮やかな
花嫁衣裳が作られた。

それは、見る目が肥えた他の貴族でさえも注目するほどの出来映えであった。
これは流行るかも知れないと目ききの商人はデサインや刺繍を凝視した。

アセビは愛する母の花嫁衣裳を着れて喜んだ。アセビは当時の結婚した母より数倍美しく華やかに見えた。
これも私たちの良いところを受け継いたのね。母は喜んで誇りに思った。

これからも良くなるだろう。幸いにも素晴らしい婚約者も見つかった。
あとは孫だけだ。母はまだ見ぬ孫を思った。

父も満足そうに美しい娘を眺めた。あとは結婚式だ。



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