糟糠の妻

栗菓子

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第3章 新たな糟糠の妻

第6話 姉弟 予知能力のある姉サイド

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嗚呼・・弟か。わたしの半身が苦しんでいる。可哀相に。すぐに慰めたい。でもできない。弟は男の子だから、大きくなる。そして主人のように偉大な男に憧れ羨望し劣等感も抱いている。

半身の弟の心理的葛藤は手に取るように分かった。しかし姉は女ゆえ、弟の乗り越えるべき試練を邪魔することはできない。 弟は精神的に成長しようとしているのだ。


主人は、成功者だ。しかし魂の相棒と呼ぶべき相手も見つかって更なる飛躍をするだろう。
そして、多くの原石を見つけあて、生きる機会を与える神になるだろう。だが同時に多くの芥のような命を間引きする死神にもなる。

それは主人のおおいなる運命でもある。下手したら王より巨大な権力を掴める存在にもなりうる。

予知能力のある女はそこまで主人の未来を予測できた・・。しかし未来は不確定要素もある。

下手に予言をして、その時点で未来が決まったら女は、主人の未来を決定した張本人となる。そんなたいそれた事を女はしたくなかった。女は、自分と弟のささやかな幸福を願った。

女は、矮小でどうしようもない女にすぎない。身分不相応に力を神からきまぐれに賜って、持て余しているのだ。
できることは、災厄や、死を身代わりに他者に押しつけるぐらいだ。

女はどこまでも純粋に自分と半身で或る弟を愛しているだけだ。唯生き延びたいだけの愚かな女だった。

主人にこの力を言ったらどうなるのだろうか・・?

女は不意にもしの予測をした。否。あの苛烈な主人だ。世迷言をと狂い女と処刑されるかもしれない。
それほど、奴隷女の命は鳥の羽のように軽く呆気ないものだ。

もしくはその力を利用しようとしてさらに女を苦しめるかもしれない。

主人が私を路傍の石のように見ているから救われる命や運命もあるのだ。

弱者にとっては、不都合なことは沈黙することと目を閉じる事だ。

女はそれが得意であった。

嗚呼愛おしい弟よ。そなたの成長を邪魔したくない。立派な戦士となって雄々しく人生を切り開いてほしい。


それこそが女の望みでもあるのだ。 弟の未来は今は不吉な影はない。大人になるまで生き延びるだろう。

姉として女としての予知能力がそれを確信させた。


女にとってはそれが唯一の夢であり生きがいだった。

愛しい弟よ。強く雄々しい戦士であれ。だれよりも強くなってほしい。


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