人生に疲れた女と殺人鬼の愛欲の末路

栗菓子

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新しいユンとの邂逅

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わたしは、キリルの命令通り淡々と、ユンが正気に戻るまで暗殺を代理で請け負った。

呆気ないほど、呆然とした表情でいつも標的は倒れる。何故なのか?わたしという娼婦は唯の欲のはけ口や人形にしか見えなかったのか?

どうしてこうも無防備な男が多いのか?もっと娼婦や女を警戒する男が居るはずでは・・

くくっとキリルが嫣然と微笑んだ。

「ここは男尊女卑が激しい世界なんだよ。大抵の女は男の玩具や、飾り物や大人しく従う者としか見られていない。
まあそこまで徹底的に女の牙を無理矢理剥ぎ取り、徹底的に痛めつけた結果だかな。だから大抵の男は油断する。
まさか虫けらのような女が男を殺すとは思わない。考えてみたら男って恐ろしく幼稚だよな。自分がどんなに酷い事をやってもされることは夢にも思わない・・。馬鹿だろう。」

可愛いものだ。キリルはそういいながら殺された男を嘲った。

あら・・キリルは男性の容姿をしているけど、なんか女そのもののような気がして来たわ。
男を侮蔑しているわ・・。わたしは生きるだけで精一杯だからそこまで考える余裕はなかったけど、やはり処女喪失だけははじめて男を憎んだものだ。

痛めつけられた女はどこかで男を憎んでいる。キリルもそうなのだろうか?

わたしはかすかにキリルに興味をもった。それに気づいたキリルはやめろ・・。と首を振った。

よくある下らない人生だ。いうほどでもない。

キリルはそれよりとユンがもうすぐ完全に回復すると言った。

わたしは嬉しかった。歓喜の顔を浮かべると、キリルは少し妙な顔をして、私に告げた。

ただし前のユンとは思うな。かなり壊れていたから新しい人格も生まれているかもしれない・・。色々妙な薬や人体を弄られたからな。気持ちが悪い医者どもに・・。

わたしはそうなの・・とうなずいた。嗚呼やはりここでは人は人ではないのだ。人でなしや、怪物や何かに作り変えられる世界なのだ。そこには多分情も良心もないのだろう。なんという荒廃しているが、或る意味本当に合理的な世界だ。


いいえ・・どんなユンであろうとユンはユンだ。わたしの主人だ。

わたしの不動の心は揺らがなかった。

さあ新しいユンとの邂逅がまもなく迫っている。

わたしは淡々とそれを待っている。主人を待つ犬のように待っている。


それが私に与えられた唯一の使命だ。わたしはユンを裏切らない・・。ユンがいつかわたしを廃棄するか、ユンが死ぬかで離れないだろう・・。

それが死人のわたしの誓いだ。


わたしはすっかり娼婦の恰好が板についた・・。麻薬のような煙管をふかしながら気だるげな退廃的な娼婦になっていった。

しかしわたしの根幹は変わっていない。わたしはユンの忠実な奴隷だ。

わたしに懸想する奇怪な男たちもいるが・・それ以上にわたしはユンの所有物なのだ。

恋愛は無い。死人にはあり得ない話だ。

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