落花流水

第７話 モブ視点

ジンガイ様は偉大なだが恐ろしいお方だった。敵には女子供にも容赦なく屠り、かつての親友や恋人さえも処刑し、火あぶりにした。
「アハハハ・・あんなに綺麗だったのになあ。アブラが解けて厭な匂いしかしねえ。」

ギャアギャアと断末魔の悲鳴を上げながら、タスケテクレと無様にも裏切り者二人は暴れていた。

何たる無様な末路か・・。

そのころには、ジンガイ様の側には、奇妙なミツキという男みたいな貧相な女が妻として寄り添っていた。

ジンガイ様は、ミツキの少女のような胸をずっとまさぐっていた。

大人しい顔が好みではないが、ミツキはジンガイ様を裏切らないようだった。ミツキの腹にはまた赤ん坊が宿っている。
ジンガイ様は女に子を孕ませるのが好きだ。
他にも多くの女が孕んではジンガイ様の血をひく子を産んでいる。しかし、ほとんどの子がジンガイ様の興味を惹かず、ほんの僅か優秀で精悍な男や女を生んだものだけ手厚くしている。


なかでも、親としての情をみせているのは、ジンガイ様の長女　ハジメテノコ　マリエだ。


マリエはジンガイ様を女にしたような顔で、美しく華やかで、異能力があった。
ジンガイ様に奉仕するあどけない子はたちまちジンガイ様をオヤバカにした。

ミツキはそれ以来特別な女になった。

ミツキにも、異能力があるらしい。しかしそれはジンガイ様にだけ与えていた。

恩恵は夫と娘だけに与えられた。

それを見て、俺は冷めた。　なんだ。夫と娘にしかやらないのか・・。

邪魔な女だな。殺そうかなと思った。　そこまで考えて俺はハットシタ。

嗚呼、だからミツキハ恨まれるのだ。　ジンガイ様の特別な女であり能力もある。　でもその恩恵は与えられない。

これは身勝手な男と女に逆恨みされるのだ。


なんとなくジンガイ様を裏切った二人の気持ちが分かった。　ミツキを利用しようとした愚かな女の気持ちも・・

すぐ目の前にあるのに、上手くいけば権力も、栄誉もなにもかも手に入るであろう宝。

しかし絶対手に入らない。御することもできない。


そりゃあ腹が立つだろう・・。いっそ消したいと短絡的なやつらは考える。


嗚呼そうかそういうことか・・自分のものにならない宝は目障りなんだ。


モブはそこまで考察して、俺の考えは的はずれじゃないとなんとなくそう思った。