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第1話 とある村
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ことのはじまりは定かではない。
とある山奥にいつしか住み着いた住人たちがいる。彼らはどこからきたのかようともしれない。
しかし、彼らは、その気は無いのに何故かいつも排他的な村といわれるようになった。
まるでなにかに外部が侵入するのを防ぐかのように、なぜか生粋の村人以外はなかなか居住できないようになっていた。
『息苦しい・・ここはなんだ。まるで沈んでいく魚のような気分だ・・。窒息しそうな感じだ・・。』
むせ返る様な濃厚な木や葉の匂い、川の息吹・・川に住み生命の奏でを紡ぎ続ける低い音、高い音でこの世界は成り立っていた。
あまりにも夜は、夜行動物の楽園でもあり、そこは人が歩く場所ではない。獲物として狩られる恐怖もあった。
それでも先祖たちが、命を懸けて開墾し、山奥の中に、田んぼや、果物 野菜の畑などを耕し続けた人々は、今も尚
子孫を残して存続を行っている。
この山奥でも稀な美しい女は、外部の人にあこがれをもって、その血を取り込みたがっていた。
『ねえ。いいでしょう。欲しいのよ。貴方がここにいてくれたなら・・。』
『ああ。ネイサン。貴方は美しい・・でも駄目だよ。ナニカが息苦しいんだよ。まるで邪魔だといわれているみたいだよ・・。ネイサン貴女はこの息苦しい村を感じないのかい? 』
『ええ・・あたしはなんともないのに・・何故かしら。よそから来る人はいつもそういうのよ。ここって何かしら?』
『さあ・・。そういえばこんな山奥にはそぐわないものもあったなあ。なんだいあれは?』
『ああ・・あれをみたのね。あれは・・ね。 秘密よ。この村の小さな・・秘密。』
『なんだい。こんな村になにか秘密でもあるのかい・・。』
『ふふ・・そりゃああるでしょう。人間は厄介だもの・・。』
『ネイサンもかい。それは好奇心旺盛な若者には惹かれるダロウ・・。よしてくれよ。ボクはもう年老いてしまった・・。 もう色々嫌な事も素敵なことも見てきた・・。味わった。ボクはあまり気力がないんだよ。安らぎだけガホシイネ。』
『まあ残念・・。そんなに疲れて・・。大変ね。外の世界も・・』
『ああ生き延びるのに精いっぱいだよ。油断したらお金も命も奪われるそういう世界だよ。 ここも安心ではないけどね・・少しネイサンと出会ってほっとしているよ。』
あらと美しい女は、悪くないとほおをほころばせて、ネコのように男にすり寄った。
一瞬男は固まったが、すぐに、女の良い匂いと柔らかな肌の感触でぐにゃりとなった。
『ふふかわいい人・・。』
わかりやすい男の反応に女は酔いしれた。とてもいい気分だった。男が女を受け入れるのは悪くはない。
できればずっとここいてもらいたかったが仕方がない。風土が合わないのだろう。
土地は人を選ぶこともある。
それに・・もう一つ女は心当たりがあった。
女が男に話していないことにある秘密の一つだ。
ここは、呪いの村ともいわれている。 過去になにかがあって呪われたという噂だ。
女も親にお伽噺のように聞かされた。半信半疑で女はその話を覚えている。
【今更呪いなんでねえ・・ダサイよ・・・でも・・昔はもっと過酷だったと聞いたしね。そりゃあ暗部もあるだろう。人間のやることだもの・・それをいうなら人間がすむかぎり残酷な歴史はある・・。あたしはもう時効だと思うけどね。否・・。呪いには思いには時効などないのかもしれない・・。 ある日瞬間 突然発動するのかもね・・】
女は子の村人だから呪われないと聞いたことが或る・・。本当にそうだろうか?もう女は既に呪われていて何も感じないんじゃないだろうか?
女には真実がわからない。唯々生きるだけだ。
束の間、男との愛ともいえぬ情を交わすのみだけが生きていると感じられる。
少し甘く、苦い人生の糧でもある。
ああ、この村の名前はイナエといった。
変な名前・・。由来はいくつもあるがぴんとこない。 女はもう退化してしまったのだろうか?
先祖は何故こんな名前の村をつくったのか?
それさえも遠い過去へ消えていった。
ほおと女は深い溜息をついた。
とある山奥にいつしか住み着いた住人たちがいる。彼らはどこからきたのかようともしれない。
しかし、彼らは、その気は無いのに何故かいつも排他的な村といわれるようになった。
まるでなにかに外部が侵入するのを防ぐかのように、なぜか生粋の村人以外はなかなか居住できないようになっていた。
『息苦しい・・ここはなんだ。まるで沈んでいく魚のような気分だ・・。窒息しそうな感じだ・・。』
むせ返る様な濃厚な木や葉の匂い、川の息吹・・川に住み生命の奏でを紡ぎ続ける低い音、高い音でこの世界は成り立っていた。
あまりにも夜は、夜行動物の楽園でもあり、そこは人が歩く場所ではない。獲物として狩られる恐怖もあった。
それでも先祖たちが、命を懸けて開墾し、山奥の中に、田んぼや、果物 野菜の畑などを耕し続けた人々は、今も尚
子孫を残して存続を行っている。
この山奥でも稀な美しい女は、外部の人にあこがれをもって、その血を取り込みたがっていた。
『ねえ。いいでしょう。欲しいのよ。貴方がここにいてくれたなら・・。』
『ああ。ネイサン。貴方は美しい・・でも駄目だよ。ナニカが息苦しいんだよ。まるで邪魔だといわれているみたいだよ・・。ネイサン貴女はこの息苦しい村を感じないのかい? 』
『ええ・・あたしはなんともないのに・・何故かしら。よそから来る人はいつもそういうのよ。ここって何かしら?』
『さあ・・。そういえばこんな山奥にはそぐわないものもあったなあ。なんだいあれは?』
『ああ・・あれをみたのね。あれは・・ね。 秘密よ。この村の小さな・・秘密。』
『なんだい。こんな村になにか秘密でもあるのかい・・。』
『ふふ・・そりゃああるでしょう。人間は厄介だもの・・。』
『ネイサンもかい。それは好奇心旺盛な若者には惹かれるダロウ・・。よしてくれよ。ボクはもう年老いてしまった・・。 もう色々嫌な事も素敵なことも見てきた・・。味わった。ボクはあまり気力がないんだよ。安らぎだけガホシイネ。』
『まあ残念・・。そんなに疲れて・・。大変ね。外の世界も・・』
『ああ生き延びるのに精いっぱいだよ。油断したらお金も命も奪われるそういう世界だよ。 ここも安心ではないけどね・・少しネイサンと出会ってほっとしているよ。』
あらと美しい女は、悪くないとほおをほころばせて、ネコのように男にすり寄った。
一瞬男は固まったが、すぐに、女の良い匂いと柔らかな肌の感触でぐにゃりとなった。
『ふふかわいい人・・。』
わかりやすい男の反応に女は酔いしれた。とてもいい気分だった。男が女を受け入れるのは悪くはない。
できればずっとここいてもらいたかったが仕方がない。風土が合わないのだろう。
土地は人を選ぶこともある。
それに・・もう一つ女は心当たりがあった。
女が男に話していないことにある秘密の一つだ。
ここは、呪いの村ともいわれている。 過去になにかがあって呪われたという噂だ。
女も親にお伽噺のように聞かされた。半信半疑で女はその話を覚えている。
【今更呪いなんでねえ・・ダサイよ・・・でも・・昔はもっと過酷だったと聞いたしね。そりゃあ暗部もあるだろう。人間のやることだもの・・それをいうなら人間がすむかぎり残酷な歴史はある・・。あたしはもう時効だと思うけどね。否・・。呪いには思いには時効などないのかもしれない・・。 ある日瞬間 突然発動するのかもね・・】
女は子の村人だから呪われないと聞いたことが或る・・。本当にそうだろうか?もう女は既に呪われていて何も感じないんじゃないだろうか?
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ああ、この村の名前はイナエといった。
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ほおと女は深い溜息をついた。
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