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第17話 蜜月

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ドールは、パスカの前では、子どものように純真無垢な表情を見せた。
「お前が私を変えたんだ。あんな親はいらなかったのだ。私は兄を手に入れた。私を騙して虚構の美しい世界を見せていた醜い親ども。彼らは私が気づかなかったら、今でも悍ましい行為をして哀れな子どもたちを生み出していただろうな。」

パスカを抱擁しながらドールは全裸で寝台で寝た。
子どもが人形に縋るようにぎゅうと抱きしめた。
ドールは私を女のように犯してくれとパスカに頼んだり、今度は男のように雄々しく責めたりした。
ドールはパスカの前では赤裸々に、純粋な不安定な子どもの面をみせた。

「お前といると、私はどんどん子どもに還っていく。」
彼は無垢な顔を見せた。 嬉しそうに無邪気に楽しく嬉し気にパスカの瞳をなで舐めたり、胸を舐めつくしたり
パスカの全てを見逃すまいと純粋に欲望と思慕を出した。


彼を見ると、パスカは嗚呼。この方は変わられたのだ。悍ましい真実を知って、彼は人の心を取り戻したのだ。

パスカは意外だった。死ぬより辛い拷問を受けるかもしれないと覚悟したのに、途方もない寵愛を受けたのだ。

パスカは母親を求めているのだと分かった。新しい親を求めている哀れな子ども。途方に暮れている子ども。

パスカは主人の言う通りにした。彼の求める全てを与えた。パスカの奉仕と思いをドールは敏感に受けて嬉しがった。夢のような時だった。
パスカは彼の母親のような思いを味わった。 時間が、ドールと兄とパスカだけの世界にいるような錯覚を受けた。

とても甘く不思議な時間。


彼らは間違いなく家族だった。奇妙な家族。

輝かしい未来をドールに与えたかった。哀れな兄にも安らぎを。 
パスカは母猫のように、ドールを子猫のように慰めた。

私は何故、あんなことをしたのか? ドールに真実を知らせたいと思ったのか?
そのせいで犠牲になった人たちがいた。でも不思議と私はこれが運命のように感じた。

因果応報。何故こんな言葉が浮かぶのか。

哀れなアンジェル。でも彼女はレイルを得た。すべては運命の女神ヤヌアの赴くままに。

わたくしは、奴隷であり、ドールの母親になった。 この不可思議な人生よ。 人の人生はわたくしにとっては夢のような幻に満ちていた。

セルマやトート。アール。彼らが辛うじてわたくしを現世につなぎとめていた。



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