上 下
13 / 31

第13話 放浪

しおりを挟む
わたくし。パスカ令嬢。いえ。唯のパスカに戻ったわたしは野良猫のように世界中を放浪しました。

勿論。この時のために護身術や、護身のナイフや、目つぶしやまきぶし?相手の足元に投げて、妨害する小物や、
襲われたらとんでもない音が鳴るベルのような護身道具を幾つも持っております。
ほとんどがトートが作ったものです。凄いですわね。

これって、商品化したら、弱者や女や子供も救われる確率が高いのに・・。
アールにもその事を言ったら、アールもなるほどと思案して、何か商品化してくれる会社を探しているようでした。

わたしは髪を短く男のようにきって、胸をきつく布で巻いてあまり女らしさをみせないように男性の服を着ました。スボンはわりと開放的で動きやすいですね。


わたしはたくさん世界を見たかったのです。
まずは世界をめぐる豪華船に乗りました。ま、まあ。わたし。お金はいっぱいありますの。
リーナ夫人から頂いた貴金属をアールにお願いして換金したら相当なお金になりました。
数年は、遊んで暮らせるぐらいかしら・・。勿論、一部はアールに渡しました。

そこにはカジノもあり、最初に幸運でしょうか。試してみたら勝って大金がわたしのもとへ来ました。
わたしは怖くなって、そこで止めました。

わたしは信用できる船の使用人に頼んで金庫に預けました。

それからのわたしの旅は夢のような時間でした。

北の方へ行っては、オーロラのような天空のドレスのような美しいものをたくさんみました。
凍った地面。美しい白鳥が整列して一気に舞い上がる様は圧巻でした。

白い波の花といわれる美しい海の波の泡みたいな厳かな情景。

海の神が創った芸術品のようでした。

南国へいっては、トロピカルな果実や、陽気な漆黒の肌を持った人々。奇妙な旋律をする音楽。
全てが新鮮なものでした。

ある島では、戦った跡があるのを遺跡にしていました。敵と戦ってここで戦死した人は数知れないという。
今でも海で眠っている人はいる。

今は静寂ですが、過去には壮絶な戦があったのですね。歴史をわたしは感じました。

他にも様々な美しい珍しいものを見れてわたしは童心に戻って嗚呼嗚呼と喜びました。


勿論、そんな国も目を反らすほどの汚濁に満ちたスラム街や、闇はあります。でもわたしはもう見ません。
わたしも十分に見てきたからです。それはその国がなんとかすべき問題と思うのです。

アールなら、闇社会でも表社会でも活躍するのではないかとわたしは思います。
彼はとても優秀ですから。 非合法なことも合法化されるのではないかとわたしは思っています。
人間は本当に残酷になれる動物でもありますから・・。

わたしは本当に救われない弱者も居るのは解っています。わたしたちは偶々運が良く生き延びたに過ぎないのですから・・。

わたしが今でも気になるのはセルマ。トート。アール。 タロー。 わたしの仲間たち。
そしてわたしが心を与えたドール様。 レイル。かれには雄の本質も貴族の本質も知らされた。
リーナ夫人・・。彼女はとうに喪ったものを求める死人だった。伯爵もだった。
わたしは彼らの一時の慰めになっただろうか?

わたしの思いが深い彼らはどうなっているだろうか?
わたしは柄にもなく祈りました。彼らの未来がなるべく幸あらんことを。祈りました。

わたしは放浪の間、アールに勧められた宗教施設 セルシーオ・ナミ 至高の華と言う教団を訪れました。
確かに厳粛で、美しい教会のようなものが建てられていました。
でも何故でしょう。貴族めいた意匠も刻まれています。

その当時の神官がわたしの疑問に答えました。
「ダリア様という古い貴族の血をひかれているお方も創設の一人でした。
彼女は始めは下層社会で育って虐げられた民だったのです。
彼女はとても悪い集団に入って、悪行を繰り返していたようです。
でもある女神シズナ様と出会って、彼女は、悪い仲間たちを倒して、より良き社会を創るため、暗殺集団リコリス部隊を創ったようです。虐待された奴隷女や普通の女が主に戦ったようですよ。

内乱や大きな戦が起きて彼女らが今はどうなっているのか行方知らずですよ。
ほんの数十年前ですよ。
子どもたちはここで競ったのです。よりよく素晴らしい人になるために己を磨き上げたそうです。
シズナ様は神の母とも呼ばれ、子どもたちには慕われていたようです。

創設者の一人。ゴルデアという男は傭兵団を創って一時は王国を凌ぐほど強大だったようです。
あの方は存命です。今でもこの宗教施設を守ってほしいとわたくし神官に命じられて居ります。
シズナ様の力は本物の神の力であったと言われました。」


まるで御伽話の様ですね。でもそれが本当なら、弱者も頑張ってこの居場所を築いたのですね。
それなら嬉しいです。

わたしは見も知らぬダリア様。ゴルデア様。 女神シズナ様に祈りました。

彼らも頑張って居場所を創ろうとしたのでしょう。せめて彼らの人生が幸福であることを祈ります。

わたしはここにいると不思議と心が浄化されそうな気持ちでした。

嗚呼。辛かった幼い記憶。 わたしは身の程知らずにもリーナ夫人や伯爵に親としての情を求めていた。
でも彼らの心は既に死者のものだった。
わたしは諦めたのだ。わたしは本当は欲しかった。

わたしは慰み者に過ぎなかった。 辛かった。わたしはやっとわたしの奥深く隠していた心を露わにできた。

わたしは唯、泣き続けた。両手を組んで、祈り続けました。

最後に優しそうな神官はわたしに加護になる水晶の石を渡しました。
「これは貴方を守る力が宿っています。貴方に女神シズナ様の加護が有らんことを。」

わたしは嬉しくて 袋に包んて紐を通してネックレスにしました。胸の中に水晶を入れて置きました。
何故か。わたしの心を安らげてくれるものでした。

まさか本当に女神シズナ様の力が宿るものとは思っていなかったのです。

その力が発揮されるのは随分後になってからでした。

その話はまた後の話にしようと思って居ります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~

一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。 だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。 そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

辺境騎士の夫婦の危機

世羅
恋愛
絶倫すぎる夫と愛らしい妻の話。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった

ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。 あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。 細かいことは気にしないでください! 他サイトにも掲載しています。 注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。

毒におかされた隊長は解毒のため部下に抱かれる

めぐめぐ
恋愛
分隊長であるリース・フィリアは、味方を逃がすために敵兵に捕まった。 自白剤を飲まされ尋問にかけられるところを、副長のレフリール・バースに救われる。 自国の領土に無事戻り、もう少しで味方陣営へ戻れるというところで、リースの体調に変化が起こった。 厳しく誇り高き彼女の口から洩れる、甘い吐息。 飲まされた薬が自白剤ではなく有毒な催淫剤だと知ったレフは、解毒のために、彼女が中で男の精を受けなければならない事を伝える。 解毒の為に、愛の行為を他人に課したくないと断ったリースは、自身を殺すようにレフに願うが、密かに彼女に想いを寄せていた彼は、その願いに怒り―― <全20話・約50,000字> ※2020.5.22 完結しました。たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございました! ※タイトル通り解毒と称して立場差のある二人が、ただイチャイチャする話(大体濡れ場)。 ※細かい設定(軍編成とか)はまあお気になさらず(;´∀`)

処理中です...