40 / 49
第8章 新世界
サラ(王妃)の決断
しおりを挟む
サラは無知な貴族の娘であった。唯、父に従い、麗しきエンデイミオンの子を為すため、婚約者として定められた。
サラにはそれには不満はなかった。それが貴族の娘として生まれた義務だと思った。
エンデイミオンは、感情が希薄なサラにとっても魅力的な男だった。彼のためなら子を為してもいいと思えるほどであった。
エンデイミオンとイシュラエルの闘争にはサラにはどうして戦うのかよくわからないままであった。
何故、貴族同士が戦うのだろう。本来、貴族は皇国を守るためにあるのではないのか?
イシュラエルが、エンデイミオンの命を奪い、新しい神になるための儀式を行っていると父に聞かされてもサラには全く理解できないことばかりだった。
唯、エンデイミオンが死ぬ?私の番が?
彼女は途方に暮れた。レイナ。母親の様に慰めた女。彼女のお陰で、サラは心が少し安定した。
サラは皇国を守る貴族として冷静な思考を取り戻しつつあった。
エンデイミオン。彼は皇国を守護する者として戦った。敗れたとは言えまだ生きている。
サラはエンデイミオンの病室へ駆け寄った。心配ではない。彼の因子を残すために、儀式を行うのだ。
唯の子作りじゃない。エンデイミオンの精神、魂そのものをサラの子どもとして生まれ直すのだ。
輪廻転生の儀式。サンサーラ。サラは貴族として、神の能力も有している。
エンデイミオンの僅かな命をサラの力と合わせて転換し、サラの子宮に赤子として孕ませることができる。
イシュラエルの思うままにはさせない。
サラは、その名前の意味の通り、王妃として目覚めつつあった。
シリン、父上、ごくわずかな者達にエンデイミオンをサラの子として輪廻転生させると告げた。
王が居なければ、王妃は何の意味もない。王を支えてこそ王妃なのだ。
サラ、王妃の決断に彼らは驚愕したが、エンデイミオン、彼らの王が再生できるならやろうと儀式に加担した。
サラの腹に儀式を行うものによって光る紋が〇くかかれた。淡く光っている。
エンデイミオンのところに、彼らは無表情に近づき、胸をはだけた。かすかに動いている鼓動。
ある男は、剣をそっと胸に突き刺した。これにはサラも驚愕し、止めようとしたが、父に肩を捕まえられた。
まさか・・とサラはある予想を抱いた。
予想通り、男はお許しをといい、エンデイミオンの胸を切り裂き、肉をつかんで中の心臓を取り出した。
サラは呆然とそれを見守った。心臓。エンデイミオンの脈打つ心臓が男の手元にあった。
男たちは、詠唱を行い、光る手で少しずつ心臓を変えた。赤子のような形に。
「王妃よ。貴方の力で。この赤子を王妃の胎内に。」
サラは無意識に、赤子を抱いた。そしてゆっくりと光る紋がある腹へ近づけた。
エンデイミオン。我が王よ。我が夫よ。戻って。我が胎内で生まれ直して。彼女は必死で神の能力を使った。
赤子は、光の粒子となり、サラの胎内に吸い込まれた。力を使い果たしたサラは膝をついた。
儀式は成功した。胎内に赤子が宿っている。生きている。鼓動がする。
かつてのエンデイミオンの亡骸も光の粒子となって、サラの胎内に吸い込まれた。
イシュラエルが覚醒する前に、赤子の成長を早めなければと彼らは神の力を使い、詠唱をし始めた。
嗚呼、エンデイミオン。まだ潰えてはいない。貴方はまだ敗北してはいない。
イシュラエルを倒すのは貴方。そうでなければならない。サラはかつてなく強い心で赤子が早く成長するように祈った。私の命をあげてもいい。皇国の敵を倒すためなら。神よ。お願いします。
彼女は目をつぶって祈り続けた。祈りは通じる。
彼女は、みるみる消耗し、老婆のようになったが、赤子の急成長は凄まじかった。
胎内が膨れあがる。破水する。ずるずると胎盤と共に、赤子が出た。
エンデイミオンそのものだった。
彼女は良かった。嬉しい。これで役目は果たせた。王妃として。神よ。ありがとうございます。
意識が消失した。赤子はサラ、王妃の命さえも奪って、転生した。
彼女は安堵したように息絶えた。
赤子は急成長して、エンデイミオンの姿になった。前より若々しい青年の姿として蘇った。
息絶えた王妃、サラの姿を見て、エンデイミオンは信じられないと言った。
「何で愚かな事を。輪廻転生の儀式を行うなど。」
「代償はそなたの命を奪うこと。」
サラの父は僅かに沈鬱な表情をした。
「王よ。エンデイミオンよ。これで良かったのです。サラは王妃として役目を果たしたのです。
皇国の敵イシュラエルを倒すために王が居なければ何の意味もない。」
「我らもイシュラエルに倒されるでしょう。」
エンデイミオンは僅かに目を見開いたが、「サラ。そなたの命は無駄にはせぬ。」
彼は誓った。王妃のためにも、イシュラエルを滅しなければと戦いの天使の心を取り戻した。
シリンは嬉しそうに蘇ったエンデイミオンを見た。
「巫女マナミもまつろわぬ者達と戦いの準備を始めている。皇国の敵イシュラエルを倒すために。」
「エンデイミオン。今一度戦おう。」
エンデイミオンはシリンに深く頷いた。待っていろ。イシュラエル。お前を必ず倒してやる。
悪鬼の形相で彼は固く誓った。
サラにはそれには不満はなかった。それが貴族の娘として生まれた義務だと思った。
エンデイミオンは、感情が希薄なサラにとっても魅力的な男だった。彼のためなら子を為してもいいと思えるほどであった。
エンデイミオンとイシュラエルの闘争にはサラにはどうして戦うのかよくわからないままであった。
何故、貴族同士が戦うのだろう。本来、貴族は皇国を守るためにあるのではないのか?
イシュラエルが、エンデイミオンの命を奪い、新しい神になるための儀式を行っていると父に聞かされてもサラには全く理解できないことばかりだった。
唯、エンデイミオンが死ぬ?私の番が?
彼女は途方に暮れた。レイナ。母親の様に慰めた女。彼女のお陰で、サラは心が少し安定した。
サラは皇国を守る貴族として冷静な思考を取り戻しつつあった。
エンデイミオン。彼は皇国を守護する者として戦った。敗れたとは言えまだ生きている。
サラはエンデイミオンの病室へ駆け寄った。心配ではない。彼の因子を残すために、儀式を行うのだ。
唯の子作りじゃない。エンデイミオンの精神、魂そのものをサラの子どもとして生まれ直すのだ。
輪廻転生の儀式。サンサーラ。サラは貴族として、神の能力も有している。
エンデイミオンの僅かな命をサラの力と合わせて転換し、サラの子宮に赤子として孕ませることができる。
イシュラエルの思うままにはさせない。
サラは、その名前の意味の通り、王妃として目覚めつつあった。
シリン、父上、ごくわずかな者達にエンデイミオンをサラの子として輪廻転生させると告げた。
王が居なければ、王妃は何の意味もない。王を支えてこそ王妃なのだ。
サラ、王妃の決断に彼らは驚愕したが、エンデイミオン、彼らの王が再生できるならやろうと儀式に加担した。
サラの腹に儀式を行うものによって光る紋が〇くかかれた。淡く光っている。
エンデイミオンのところに、彼らは無表情に近づき、胸をはだけた。かすかに動いている鼓動。
ある男は、剣をそっと胸に突き刺した。これにはサラも驚愕し、止めようとしたが、父に肩を捕まえられた。
まさか・・とサラはある予想を抱いた。
予想通り、男はお許しをといい、エンデイミオンの胸を切り裂き、肉をつかんで中の心臓を取り出した。
サラは呆然とそれを見守った。心臓。エンデイミオンの脈打つ心臓が男の手元にあった。
男たちは、詠唱を行い、光る手で少しずつ心臓を変えた。赤子のような形に。
「王妃よ。貴方の力で。この赤子を王妃の胎内に。」
サラは無意識に、赤子を抱いた。そしてゆっくりと光る紋がある腹へ近づけた。
エンデイミオン。我が王よ。我が夫よ。戻って。我が胎内で生まれ直して。彼女は必死で神の能力を使った。
赤子は、光の粒子となり、サラの胎内に吸い込まれた。力を使い果たしたサラは膝をついた。
儀式は成功した。胎内に赤子が宿っている。生きている。鼓動がする。
かつてのエンデイミオンの亡骸も光の粒子となって、サラの胎内に吸い込まれた。
イシュラエルが覚醒する前に、赤子の成長を早めなければと彼らは神の力を使い、詠唱をし始めた。
嗚呼、エンデイミオン。まだ潰えてはいない。貴方はまだ敗北してはいない。
イシュラエルを倒すのは貴方。そうでなければならない。サラはかつてなく強い心で赤子が早く成長するように祈った。私の命をあげてもいい。皇国の敵を倒すためなら。神よ。お願いします。
彼女は目をつぶって祈り続けた。祈りは通じる。
彼女は、みるみる消耗し、老婆のようになったが、赤子の急成長は凄まじかった。
胎内が膨れあがる。破水する。ずるずると胎盤と共に、赤子が出た。
エンデイミオンそのものだった。
彼女は良かった。嬉しい。これで役目は果たせた。王妃として。神よ。ありがとうございます。
意識が消失した。赤子はサラ、王妃の命さえも奪って、転生した。
彼女は安堵したように息絶えた。
赤子は急成長して、エンデイミオンの姿になった。前より若々しい青年の姿として蘇った。
息絶えた王妃、サラの姿を見て、エンデイミオンは信じられないと言った。
「何で愚かな事を。輪廻転生の儀式を行うなど。」
「代償はそなたの命を奪うこと。」
サラの父は僅かに沈鬱な表情をした。
「王よ。エンデイミオンよ。これで良かったのです。サラは王妃として役目を果たしたのです。
皇国の敵イシュラエルを倒すために王が居なければ何の意味もない。」
「我らもイシュラエルに倒されるでしょう。」
エンデイミオンは僅かに目を見開いたが、「サラ。そなたの命は無駄にはせぬ。」
彼は誓った。王妃のためにも、イシュラエルを滅しなければと戦いの天使の心を取り戻した。
シリンは嬉しそうに蘇ったエンデイミオンを見た。
「巫女マナミもまつろわぬ者達と戦いの準備を始めている。皇国の敵イシュラエルを倒すために。」
「エンデイミオン。今一度戦おう。」
エンデイミオンはシリンに深く頷いた。待っていろ。イシュラエル。お前を必ず倒してやる。
悪鬼の形相で彼は固く誓った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる