女の不可思議な人生

栗菓子

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第7章 イシュラエル 神と戦う者

シンセイラン姫の動向

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斑模様の髪と、紫貴の瞳のシンセイラン姫は、筆頭士族カーズを始め、士族や奴隷をも魅了し、幽閉されても尚存在力は増した。イシュラエルとエンデイミオンの内乱が激化するにすれ、姫を筆頭に、亡命勢力が成立した。
ここ皇国は滅びるかもしれない。そんな予感があった。弱い者はできるだけ安全なところへ亡命しなければならない。もはや、皇国は動乱中で、誰が誰を裏切るかわからない醜い争いが起きていた。イシュラエルが姿をくらまし、エンデイミオンが追跡中の今、亡命のチャンスがある。彼らは一度シンセイラン姫の故国へ亡命することにした。
深夜、ひっそりと足音を潜めながら、彼らは馬車に乗り、静かにゆっくりと皇国を離れた。
亡命の長い旅が始まる。カーズもまた皇国を一度は見限った。一部の士族と奴隷は姫に従い、小国へと向かった。
シンセイラン姫はあどけない幼女の顔から、凛々しくも果敢に己の運命を見据える女王の顔となった。
疫病はすでに特効薬によって退治されている。それでも多くの民に死者が出た。シンセイランは崩壊している小国を覚悟した。
途中、シンセイラン姫は、奴隷から守護石を贈られた。夢の巫女、神霊から夢で神託を受けた者が造ったそうだ。
気休めかもしれぬが、有難くシンセイラン姫は頂いた。
シンセイランが乗る馬車や士族たちが乗る馬車たちは、長い旅の間、夜盗や、獣に襲われそうにもなったが、野営で交代で見張りも護衛も厳重につけた。シンセイラン姫たちは、立ちふさがる障害や試練をなんとか超えた。
時折、淡く光る守護石も守りになっているとシンセイラン姫は感じた。運命は、シンセイラン姫に故国へ還したかっているのではないかと彼ら一同は思った。
ようやくの思いでたどり着いた故国は思ったより、活気があった。息を吹き返したように、生存した民たちが復興への道を歩み始めていた。彼らは不思議がったが、ある民がその理由を告げた。
「忌み地。疫病の発生の地。白い病院の廃墟でまつろわぬものダンという男と、神霊を祭る巫女マナミが住居しています。巫女は、神霊に託宣された通り、鉱山の中にある霊気が凝集された岩を採掘し、守護石を生存している民たちに分けました。病を回復する力もあります。これから皇国の戦も飛び火するでしょう。その前に僅かでも生存者の人数を上げよと託宣されたそうです。」
「まつろわぬもの一族は皇国と戦う構えです。ダンと一族は繋がっています。皇国が弱体化した時に奇襲をかける見込みです。」
「シンセイラン姫様が故国に戻られたのは望外の喜び。国王陛下も待ちわびております。」
生存した民は、深く土下座をしながら、目を上げた。これからの国の行く末を覚悟してるような目だった。
「国の王。首脳幹部はまだ生きている。人質になった姫も戻った。あとは戦うか否かだ。」
民らは各々語り合った。
シンセイラン姫はその情報をよく吟味し、まつろわぬもの一族と同盟をするかも知れぬと思った。
彼女は深くうなずいた。
「わかっている。陛下。父上と話し合う。大事な報告を告げて礼を言う。」
今は、国王臣下問わず、一同となって、国の行方を決段する時だった。
彼女は、速足で国王陛下のいる居城へ赴いた。時が惜しい。

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