女の不可思議な人生

栗菓子

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第4章 皇国の民

皇帝の霊樹

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皇帝の住まう王宮。その中でも厳重に守られている庭園。広大な小さな島のようなところ。その中央に、淡く光る
巨大な樹 霊樹はあった。霊樹は王宮の要でもあり、霊力を集結している場でもあった。
皇帝と貴族は、霊樹からなる実と蜜で不老長寿を保っていた。
初代皇帝が霊樹を植えたともいわれる。霊樹のシステムはまだわかっていない。研究者たちが調査中である。
多くの生贄を力に変換して、創られたともいう。
古代の時代だ。今よりもっと血生臭い世界だったのかもしれない。皇国を造るには絶対な力が必要だ。
おそらく無数の敗者、生贄たちが糧となったのだろう。
きまぐれに皇帝は、別の種族と交配した。どんな生き物ができるのか見たかったのだろう。
神は恐ろしく子供のような面もある。
勿論失敗作の子どももいた。力がない子ども。奇形の子ども。醜悪な化け物のような子ども。
それらは全て廃棄された。霊樹の糧に殺された。
長い失敗を経て、初代皇帝は見目麗しい不老長寿の種族を創り上げた。それが貴族である。
イシュラエルのように寵愛された貴族は数知れない。
だが、長寿であろうと衰退する時が来る。楽園を謳歌する貴族はある日突然死の病に倒れる。
通常の死より、苦痛に満ちた死である。麗しい容貌は腐り落ち、激痛を味わいながら少しずつ病んでいき倒れる。
それが不老長寿の代償かも知れなかった。
イシュラエルはそれが我慢がならなかった。
貴族たちは、死の病を克服する術を研究し続けた。不老不死の術を探し続けた。
なまじ恵まれた種族であった故、死について病的に恐れた。
初代皇帝は何故不老不死にしてくれなかったのかとイシュラエルは不信と疑惑を持ち続けた。
己以上に力ある存在が生まれるのを恐れたのか?
それとも別の理由が?
イシュラエルには分からなかった。何故この私が死ななければならない。他の芥のごとき種族より優れているのに。
全ての者が死に絶えようとイシュラエルは己と仲間さえ存続すればいいと傲慢に思った。
ある時、イシュラエルは禁忌の書を探し当て、同族殺し、同族喰らいをすれば、だれよりも生き続けると判明した。
皇帝の血を引いているイシュラエル。だが別の種の血も引いているため不老長寿となったのだ。
ならば、同族を殺し、それを喰らえば、皇帝の血も濃くなる。霊力も高まる。
イシュラエルは、死の病を誰よりも恐れ、禁忌に触れた。
イシュラエルは密かに同族を狩り喰らった。基本的に皇帝と貴族は他者に無関心で無機質だ。
いなくなってもかまわない同族をイシュラエルは喰らった。
禁忌の書の通りイシュラエルは力が増した。誰よりも魅力的になった。
皇帝は誰よりも魅力的になったイシュラエルを寵愛厚くした。
何故、魅力的になったかとも問わずに。
その時、イシュラエルは悟った。皇帝は、自分しかいない。自分の世界。遊び場と思っている。
精神構造が貴族よりもかけ離れていた。
イシュラエルは一番愛らしい玩具なのだ。使える優秀な者でもある。
その陰で、犠牲になった人がいても皇帝はそれがどうしたというのだと不思議がるだろう。
弱いから負けたとしか思わない人であった。
イシュラエルは寵愛を享受した。その反面、不死への探求は絶やさなかった。
イシュラエルも自分を愛しているのだから皇帝だけには従った。
何かに不満をいだきながらも服従した。
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