或る主婦のおかしなおかしな憂鬱

最終章 エピローグ

彼らのその後の話

エンデイミオンは、年齢不詳の姿で、その稀有な瞳をいつも澄み切らせ、数多の女を魅了した。
彼は、老いても尚。伝説の男娼　神に愛されし者と謳われた。

彼は、最期までシズナと言う女神をどこかで待っていた。

死んでやっとエンデイミオンは、女神に会えたのだろうか？

死の世界はわからない。

ナナミは、セルシーオ・ナミの生存者として、新生宗教施設の頂点に昇りつめた。
それでもナナミはあくまで、代理だと言い張った。この玉座は、シズナ様やダリア様だけの椅子だといいはって、
彼女は決して、その玉座の下座に侍っていた。猫のように待っていた。

空の玉座を守り続ける番人とナナミは言われた。

彼女は生涯、セルシーオ・ナミを守り続け、誰よりも信仰厚かった。
彼女は平和や、恵まれない人たちのための世界中を駆け回った。

時折、彼女の足と、背中には翼が視えると信者は、ナナミの宗教画を描いて、流行らせた。


シズナや、ダリアやゴルデア、ミモザなど、彼女らの壮絶な生涯は、ありのままにナナミの証言や、他の子どもたちの記憶で詳細に歴史の中に女英雄と女神たちとして刻まれた。


彼女らは永遠になった。像も肖像画もセルシーオ・ナミに置かれて、数百年間、民や、信者は絶えなかった。


或る権力者が、目障りと思って、民や信者を懐柔したり、抹殺したりして、ほとんど歴史から抹消されたが、
真実を知る者達は、密かに伝承や口伝でひっそりと信仰を続けていた。
それは現在にも至った。

信者は密かにセルシーオ・ナミを守り続けた。

後は美しい花畑が戦の後をかき消すように覆い隠すように風に揺れるばかりであった。



或る幻視者は、美しい妖艶な女性が白い装束で、稀有な瞳をした美貌の男を迎えに来た情景を見たと言った。

ナナミらしき姿も、彼女をみて犬のように駆けよっていった。


光り輝いて眩しくてほとんど見えなかったけど、嗚呼彼女たちだと幻視者はわかったそうだ。



彼女らはきっと幸福な世界へいったのだろうと幻視者は一筋の涙を流した。
理解できないけど胸にせまったのだ。

本当の美しさを見たような気がしたからだ。

幻視者は、羨望と僅かな悲しみを抱いて見続けていた。