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第5章 戦いの後

第5話 届く祈り

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上位世界でシズナは刻々と姿が変容していた。
もはや人としての痕跡はなかった。透けるアメーバ状態の何色にも光り輝く動物になったり植物になったり、得体のしれない何かになったり、シズナはもう姿を留めることができなくなっていた。

ロサ・アルバは長い眠りの後、母親ミモザの泣き顔を見て「お母さん・・。」と言って目覚めた。
彼女の姿は更に美しく神々しくなり、力も満ち溢れていた。

ダリアやミモザや届く祈りがかろうじてシズナをシズナという意識を留めていた。


ナナミの祈りもシズナには届いていた。
嗚呼・・ナナミ。良かった。貴女は最後まで人として生き切るのよ。

悍ましい価値のないかつての上層部の暗部も、貴女たちによってより良き光へ進むことができたのよ。


ナナミやエンデイミオンは素晴らしい人たちだった。
シズナは上位世界で全てを見てきた。

シズナは、エンデイミオンやナナミを誇らしく思っていた。多くの子どもや弱者を理不尽から救おうとしている命・・。平和を願っている美しい魂の祈り。

美しい・・なんで綺麗で立派なの。こんな存在たちが命がけで成し遂げようとしている世界。

嗚呼・・嗚呼・・貴女たちが創る世界が幸福に満たされることを祈るわ。神でさえも祈る。


シズナトナナミ。多くの祈りは美しく共鳴を起こし、お互いに望みを叶えあう。

ロサ・アルバは刻々と変容していくシズナ女神を見守った。
「お母さん。わたしたちはどうすればいいのでしょうね。この世界からは何でも見えます。ナナミたちが命がけで
平和を成し遂げようとしている様子も何もかもわかります。見えます。
わたしたちはもうあそこには居られない。彼らが為すべきことだと解りました。
お母さん。シズナ様はどんどん変容していきます。 お母さんももう人ではないのでしょう。ダリア様も・・。」

ロサ・アルバは残酷な真実を告げた。

「嗚呼・・娘よ。 そうね。分かっていたわ。貴女が蘇ってから、ダリアも私も本当は人ではなくなっているのかもしれないと思っていた・・。」

ダリアやミモザは花の精霊のような姿になっていた。

「お前の言う通りだ。わたしたちは一度死んだんだよ。そしてシズナ様の力によって蘇生したんだ。
もう人の世界にはいられないだろう。ここにしかいられない。 シズナ様は邪神と同化した。遥か高みへ行こうとしている意識を、辛うじて、シズナ様を慕うナナミや他の信者の祈りや思いが制止しているにすぎないんだよ。」

「わたしたちは既にシズナ様の力で生かされているにすぎないのよ。」


ロサ・アルバはこの美しくも残酷な真実を受け入れた。

わたしたちにできることは、見守る事。そしてこの変容した姿と力をどう扱うか考えることだと娘は思った。


救いは、母親であるミモザとダリアが一緒にいる事だった。

そして変容していく女神を見守るしかなかった。



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