或る主婦のおかしなおかしな憂鬱

栗菓子

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第5章 戦いの後

第2話 ゴルデア視点

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置いていかれた。 その時、そう思ったのは確かだ。

今、俺は金の狼の傭兵団と呼ばれる傭兵団長をやっている。俺は、他国の貴族の援護の依頼で、国の内乱に金で
加担した。傭兵は金さえはずめば誰とでも戦う。
今俺は、傭兵団長にもなっている。傭兵に渡す金が必要だ。
今、首領になって、これほど一つの傭兵団さえもまとめるのが大変だとは思わなかった。

様々な事情があって傭兵になるしかなかった人達。それぞれ個性も生まれも違う。
軋轢や、諍いは当初は当然発生した。

数年後、やっと、力があって頭脳明晰で人心掌握というものを学ぶものが頂点に昇りつめることが多いことが分かった。相手の望みが解ることだ。
それらは貴族との交渉や、戦いで学んだ。

俺よりも天才的な手腕で相手を追い詰めたり、束ねる器量があった者もいた。でもなぜかそいつらは運がなかった。
病気で亡くなったり、敵の矢で呆気なく亡くなったりした。


俺は友人に「運だよ。」と達観したように呟かれた時はっとした。そうだ。俺にはシズナの加護がある。
忘れていた。だから俺は生き延びたのだろうか?俺は時々間が抜けているところがある。

それを補う副団長や、忠実な兵士がいてくれて俺は何とか生き残った。

そんな折、俺の故郷。セルシーオ・ナミ。宗教施設が反乱を起こして壮絶な戦いがあったと報告が来た。

シズナやダリアは行方知れずだそうだ。

それを聞いたとき、嗚呼置いていかれたと俺は子どものように思った。


シズナの恋人。エンデイミオンとか、シズナの養子ナナミが内乱の後始末をしているようだ。

敵はシズナの力を奪って、拮抗する勢力を育てていたらしい。忌々しい。腹立たしい。

何故俺は蚊帳の外なのだ。

何故家族とも思えたダリアやシズナの運命に関与できなかったのか?

俺は悲しかった。俺の知らぬところで家族の激動の運命が起き、なにもかも終わった後で知らされるとは・・。


俺はとにかくセルシーオ・ナミへ行った。
戦いの後は惨たらしい有様だった。 かつてダリアやシズナがいた美しいところはほとんど廃墟のようになって、
負傷者が多く、あちこち呻きと悲鳴が聞こえていた。

ナナミとかいう女が疲れ切った様子で、施設を整理していた。大事な情報がないか調べている途中だった。
やつれ切った顔でも目の輝きだけは失われていなかった。

エンデイミオンとかいう美しい男が、俺に語った。
「シズナは多分上位世界に行ったと思う。ダリアや他の者も・・。呼ばれたのだろう。安全な世界へ。」

俺はほっとした。じゃあシズナとダリアが死んだとは決まったわけではない。

でもどうして俺だけ教えてくれなかったんだろう。俺も家族なのに・・。
俺は子どものように拗ねてしまった。


「多分、君は君の道が戦いがあると分かったんだよ。ダリアはなんとなくそう思う節があったよ。」

俺の道?俺の戦い?

「これはシズナとダリアの戦いだったんだよ。ゴルデア。」


じゃあ俺にもいつかは運命の戦いがあるのかと俺は思った。色々と思うところはあるが、シズナとダリアがいたところは復興させたい。
いつか戻るかもしれない。

俺はそういうと、エンデイミオンとナナミも深くうなずいて、彼女らが戻るまで復興させると決意を帯びた目をしていた。
俺は今傭兵団長である自分を捨てたくなった。しかし捨てられない。俺を慕っている者もいるから。


俺は金貨を大量にエンデイミオンとナナミに渡した。
せめてものの思いだった。

俺は、未練がましく、セルシーオ・ナミを去った。 もう俺は傭兵団長なのだ。今こそそれをおもい知ったことはない。


かつての美しいダリアとシズナの幻影が見えた気がした。
俺は静かに泣いていた。


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