上 下
37 / 45
第4章 子どもたちの戦記

第10話 動揺

しおりを挟む
かつてのセルシーオ・ナミが生み出し育成した最高の華の王。
 ロサ・アルバが捕縛されたと情報がダリアとミモザにもたらされた。その情報は彼女らにはかつてなく衝撃と動揺を生み出した。

わたしの子が奪われた。その真実は何かをもぎとられた酷い感覚を伴った。
ミモザは怒りと不安と焦燥で震えていた。何かをしないと激高して叫びそうだった。だが強靭な理性がそれを留めた。


彼女らは医療部隊と地下に隠れている。食料と水や弾薬や補給す物は僅かだ。危険だが、瞬間移動できる者がロサ・アルバ以外に数人いる。
だが、力が不安定でどこに飛ばされるかまだ未確定だ。

嗚呼。シズナ。シズナ。ここまで貴方の救いの手は届かないでしょう。貴女は既に上位世界へ行ってしまった。
愚かにも私たちはこの地上へ戻って、地獄の戦いをしたけど、わたしたちは願ってしまう。誰か助けてと。でもいない。どうすればいい。 
敵も私たちを探しているだろう。 

不意にダリアはエンデイミオンを思い浮かべた。ダリアはシズナと同じように願った。エンデイミオンよ。今こそ力を貸してくれ。そなたはシズナの恋人であった。シズナの大切にしていた宗教施設が奪われた。
その報復を加担してくれ。
彼女は願った。シズナの恋人の名と、加護と力の恩恵を受けたダリアの願いは届いた。

不意に映像が空中に浮かんだ。 エンデイミオンの高貴な美しい顔だ。

彼は当初は当惑していたが、シズナの状況を知ると、みるみる鬼のように険しい顔をして、シズナの敵を排除するならばと加勢したいと応援した。
彼は即座に使用人に命じて、リコリス部隊のための武器と食料と水や様々な物や、兵士たちを集めた。

「お互いにシズナのために全身全霊をかけて祈るのだ。ダリア。そうすればわたしの今ある者達が、そなたらのところへ瞬間移動できる。能力者に命じよ。わたしもシズナの加護がある。 
セルシーオ・ナミ。宗教施設のダリアとミモザ、リコリス部隊へ運べと願い祈り命じよ。そうすれば能力は上手くなり移動できるはずだ。」

エンデイミオンは可能性の話を言った。
そううまくいくだろうか?ダリアは不安になりながらもこれしかないと彼女たちは一心不乱に祈りかつてなく集中して願った。

集中すればするほど、彼女たちから光が帯びてきた。神力の発動だ。
エンデイミオンは祈った。願った。今ここにある者や、物体を、ダリアやリコリス部隊へ運べ。シズナの敵を滅ぼすために移動せよ。と願った。

ダリアはミモザは頭がおかしくなりそうなほど祈った。 シズナよ、愚かな私たちに今一度チャンスを与えてください。エンデイミオンが用意した者達を私たちが勝利するために運んできて。

彼らは一つのことに集中した。
シズナの敵を滅ぼせ。そのための必要な者達を移動せよ。ここダリアとミモザのもとへと来い。と願った。

祈りは通じた。

ダリアとミモザ。リコリス部隊たちの前に、エンデイミオンの寄せた部隊や物体が突如現れた。

ああ。ああ。シズナよ。感謝いたします。これでまだ戦える。勝機はある。まだ負けてはいない。

彼女らは歓喜して、新しい部隊と合流して、戦略を立て始めた。

戦いの最終局面が始まろうとしていた。

ゴルデアは既に独立している。彼はシズナ以外の力を有する別の神の血を引いている。

これは、シズナ女神と子どもとその敵の戦いなのだ。

ゴルデアは、黄金の女神だ。彼の部隊は別の戦いがある。

何故がダリアはそれが解った。だからゴルデアには助けを呼ばなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

生贄

竹輪
恋愛
十年間王女の身代わりをしてきたリラに命令が下る。 曰く、自分の代わりに処女を散らして来いと……。 **ムーンライトノベルズにも掲載しています

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。 ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。 え?イザックの婚約者って私でした。よね…? 二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。 ええ、バッキバキに。 もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

処理中です...