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第4章 子どもたちの戦記

第3話 主婦の憂鬱⑥

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嗚呼。ダリアが苛烈な気性そのままに戦っている。
何で美しくて素敵なの。 命そのものが輝いているわ。 母親としての心配はあるけど、成長した子どもの雄姿を見るのは、母親として誇らしい。
この矛盾した思い。まるで海のようね。混沌としている。
嗚呼。海ってサンズイの母と描いていたわ。 やはり海は万物を生み出す母親なるものなのね。
それを穢したがる邪悪な子どもも居るけど、ダリアのような美しい心を持った誇り高い女も居る。

人間って不思議だわ。儚い一生なのに、鮮明な輝きを見せることがある。

わたしは唯見届けよう。
彼女の勝利を祈ろう。ゴルデアの勝利も祈ろう。

わたしは願った。願い続けていたら、いつの間にかわたしは白い空間へいた。
このところわたしの意識や体はどこかへ飛ばされる。
もう普通の肉体ではないからだろうか?

あの世界は何?わたしはふわふわと見渡す。 
ダリアは?わたしは思うと、途端に情景が浮かんだ。
嗚呼。ダリアはまだ戦っているわ。反乱軍と。ダリアよ。負けるな。わたしは祈った。
すると、今度は過去の情景が浮かんだ。
誰?見も知らぬ人が何か下品なことをいって、そうだ頭が弱い人を騙して宗教を創ろうと野蛮な人が仲間に言っていた。卑劣な・・。わたしは呆れて見守った。わたしは過去には干渉できない。

幻のように見るだけだ。本当は殴り飛ばしたいがそうはいかない。

ん?教祖?宗教? 痩せているからわからなかったけどまさかあの肥え太った教祖の若い時代・・・?
わたしは目を見開いてよく顔を見た。間違いない。以前の教祖だ。
わたしは呆然と、彼らがあくどい事をして、宗教施設と、教祖となる経緯を見た。
嗚呼・・可哀相な騙された女や子供たちが抗っているけど殺されたり、痛めつけられている。
無惨な・・。わたしもこんな風だったのね。他人事で見ると解るわ・・。

ごめんなさい。わたしは過去を変えられない。
できるのは現在の人と未来を祈ることしかできない。
わたしは唯、うんざりと下劣な彼らが優越感に浸って悍ましい所業をすることを見ることしかできなかった。

だんだん。わたしとダリアとゴルデアが出会う時が迫ってきた。嗚呼。やっと出会うことができるんだわ。
そうよ。この瞬間からわたしたちの運命が変わったんだから。

わたしはどきどきと待っていた。すると、情景が消えて今度はまだ見知らぬ人が現われた。

凡庸な女だ。質素で男装しているが、とても美しい瞳をしている。本物かと思う位黒々と輝いて光を帯びている
綺麗な瞳。その目だけで人を魅了する女だ。

わたしは何故か彼女が分かった。彼女は孤児から貴族の養女になった女だ。名前はパスカ。
彼女の過去が伝わってくる。

パスカはわたしたちのために祈ってくれた。その純粋な思いはこの白い空間にも伝わった。振動のように白い空間が歓喜に喜んでいる。なぜか色鮮やかに美しい花が生まれた。

極楽鳥花。 オレンジと黄色。青。赤み混じった茜色。 緑。極彩色の花。嗚呼。なんで美しいの。

花言葉が分かった。 輝かしい未来。 寛容。素敵な意味だわ。

幾つも美しい花が生まれた。とても良い花言葉が付く名前ばかりの花だ。

何故だろう。わたしたちは昏いところで生まれたから昏いところへ帰ると思っていたけど・・

何故か。こんなに美しいところになるとは・・。

過去。現在。未来はどこかでつながっているのだろうか?

本当はどこにでも行けるのかもしれない。

唯、人の心という檻が邪魔をするだけで・・。

パスカは仲間のことや、過去の両親のことで全てをわたしに曝け出した。
嗚呼。辛かったのね。
貴方は親の愛が欲しかった。でも得られなかった可哀相な子。
まあ・・ドール。彼は或る意味貴族の負の面を背負った子どもなのかもしれない。
パスカは何故か彼に人の心を与えたかったらしいけど・・。

人は時に予想もつかぬ行動をする。そのうねりは運命に大きな波紋を及ぼす。

アールは何故パスカをこの宗教施設に連れて行きたかったのかしら。

不思議だわ。何の接点もないと思われる子どもたちがどこかで繋がっている。この不可思議さ。

世界は本当に混沌に満ちている。

わたしはパスカに祈った。彼女の幸福を祈った。
そしてパスカ。わたしに美しい花を祈りをくれた女よ。
わたしにも祝福を。幸福を。ダリアと子どもたちにも祝福を与えてね。

神でさえも救いを求めるのだから。

またどこかで会いましょう。美しい女パスカよ。

わたしは白い空間から現世へ戻った。わたしはだんだんこの人の世界に留まれなくなっている。
わたしは上位世界へ旅立つようだ。わたしは憂鬱だった。
また。見知らぬ誰かに出会うかもしれない。戦いもあるかもしれない。

わたしは深い深い溜息をついた。


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