或る主婦のおかしなおかしな憂鬱

第3章 神に愛されし者

第8話 子どもたち

宗教施設に生まれて育った第1世代の子ども達は幸福だった。
ホンモノの力がある神母シズナ様の力と加護を分けていただいていることを無意識に悟っている。

シズナ様の以前の教祖はまがい物でこどもや他の人は虐待されていたそうだ。

シズナ様の過去を子どもたちはダリア様から秘密で伝えられている。

シズナ様も虐待された人だったのだ。殺されて蘇った女神。

まるで夢のようだ。シズナ様の人生そのものが神話と言っていい。

シズナ様が本当は邪神の眷属であることはどうでも良かった。シズナ様の過去やダリア様の過去や外の世界を知るにつれどうやらろくでもない人。欲望のままに人を傷つける奴らが多いらしい。


ダリア様とシズナ様がいてくれてよかった。子ども達はじみじみと幸福を実感した。

そんなひどい目にあいながらも彼女らは生き延びたのだ。

そして、わたしたちの傍にいる。この幸運を聡明な子ども達は悟っていた。

ここなら、必要な人を除いて、悪い人を邪神に与えるだけで幸福になれる。

どこにいっても生き延びられるよう教育と、暗殺の術、護身術　そして母の愛を得た。

ここはホンモノの家族もあれば疑似家族もいるが、シズナ様を中心に結ばれている。

信仰の元に、共有する価値観がある。


弱者も生き延びる価値があるということ。　なんでも学び努力すること。必要な人になること。

一方的に深く人を傷つける奴は不要と言うこと。


彼らはそれを深く価値観に刻まれた。



セルシーオ・ナミ。至高の華。とてもいい響きだ。

子ども達は競った。そしていつの間にか、誰が一番の華になるか順位を決めた。


ダリア様はそんな様子をみて、器量や技量、容姿、教育　それらを試験して、格付けを決めようとした。

第1位　称号『華の王』『華の女王』
第2位　称号『華の姫』『華の王子』
第3位　称号　『華の臣』

それ以下は『華』のつく称号はない。

他の通り名がつくだけだ。
ミモザも『白の婦人』とか『地獄の道化師』といわれる女もいる。
彼女らは親友だ。

ミモザの子スターシスは特異体質をして子どもなのに老人のようにかさかさと乾燥していた。
しかもあまり水や食物をとらなくても生きていけた。
だが、容姿は美しかった。瞳は鮮やかな紫色で、はっとさせるほど魅力的だった。

髪は灰色だが、スターシスは子どもたちの中でも十分にもカリスマ性があった。

ダリアは次期の後継者に十分な器だと思っている。

ダリアは子どもたちが実戦の前に訓練をしているのを眺めながら、有力な子どもを候補者として選別していた。


奇しくもローマの奴隷の競技のように彼らは己の存在をかけて闘おうとしていた。