或る主婦のおかしなおかしな憂鬱

栗菓子

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第3章 神に愛されし者

第6話 主婦の憂鬱④

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奇神シズナはいままさに恋の甘味を堪能していた。
ゆっくりと肉体がほぐされていく様は快楽に蕩けるようで、シズナはこのまま水のように流れるか、アイスのように溶け落ちるのではないかと不安になるほど快楽に満たされた。

エンデイミオンは最高の男であった。

しかし、自我が強いエンデイミオンはシズナのように溺れ切ることはできない。それが少しシズナには不満だった。

ダリアには感謝している。

しかし、シズナにまたある不安の種が生じた。

リコリス部隊に属しているミモザと言う女が孕んだらしい。それは良いのだ。昏い仕事をしていても愛は芽生える。
自然の摂理だ。
でも、このところ特異体質がある子どもが生まれていると聞いて、シズナはどきりとなった。

このシズナが棲む宗教施設は、シズナの力で結界が生じている。だから敵には脅かされない。
それは良いが、シズナはそこに住む彼らの体質に異変はないかと思った。
シズナは制御しているつもりだが、ここは或る意味聖地だ。
邪神の力は満ちている。 特に赤ん坊はどうなるのか?

聞いたところ、特にとてもおかしな特徴を持つ子供はうまれていない。

唯、本当に植物のような特徴を見せる子どもや、獣のような特徴をみせるこどもなどが増えたのだ。


シズナはもしかしたら人間も変異亜種となる子どもたちが生まれるのかもしれない。

通常の摂理と違って、神の力が宿る摂理の子らだ。


既に研究者とその可能性は話しあっている。子ども達はあまり痛い目にあわせないよう、そっと調査してほしいと
シズナは願った。

子ども達が長じるにつれ、特異な才能を見せるようになった。
狂信者や、研究者は目を輝かせて、シズナの力のお陰だと漠然と気づいている人らもいた。
なかには拒絶反応や、嫌悪を見せる者もいた。
そういう者達は、追放をそれとなく誘導した。ほとんどが去ったが、不思議と利益になるかも知れないと邪心を抱えて止まろうとする者もいた。しかし直接子どもや、聖地に住むものたちに害意を与えなければ、生き延びられる。
害意を与えたものは、容赦なく裁かれ処分された。

シズナは深い溜息をついた。
不思議な力が宿った子ども達。彼らの運命はどうなるのだろうか?
未来は不確定だ。
シズナは願った。わたしも一介の女にすぎない。でも祈ろう。ここで生まれ育った子らに祝福を与えよう。
それが教祖の女神の仕事だ。
かのじょやかれらが幸福になるようシズナは願った。


僅かだが、子どもたちには加護が宿った。

無意識に子どもらはシズナを理解し、神母と崇めていた。

ここで生まれ育った子らにとってシズナは始祖ともいえる母であった。

彼らは特殊な力や、不思議な体質をもつようになっても平気だった。ここはかれらにとって聖地だった。

第1世代の子たち。ここで生まれ育った生粋の神の力が宿った子ども達。

みらいはどうなるのか。僅かに親は不安を抱きながらも、歩き始めた。

自分のために、こどもたちのために歩き始めた。


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