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第3章 神に愛されし者

第1話 美しい人

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普通の人が泥人形として、創造主に作られたなら、その人は、なにか別の光や宝石やもっと綺麗なものを入れられたに違いないと思わず埒もない妄想をしてしまうほど、その人は美しかった。

雰囲気も、清浄で他の汚濁に満ちた人と違うのだ。オーラが美しく鮮明だった。

美しい。こんなはっとさせるような人は始めて見る。ダリアとゴルデアも美しいが、別種の美だ。
硬質な宝石の美。

美の一族と呼ばれるほど、彼らは美しかった。 
彼らは、権力者の愛人や、正妻として婚姻を為し、優雅な生活を送っていた。

無理もない。この美は、権力者や、美を愛する者が保護されるべき対象だ。

芥のような人が迂闊に近寄っていい人ではない。

シズナはほおっと思わず見惚れた。

シズナも女だ。美しいもの。光るものには惹かれる。

彼らが一番恐れていたのは、老いだった。 シズナは哀れに思った。
しかし、彼らは権力者に愛されている。他にも美の老いを止める力を持つものが居るだろう。

シズナはあまり関わりたくなかった。何故かはわからないが、ふと予感があった。
「我が薬は、猛毒にもなります。せっかくそんなに美しいのに、副作用でかえって老いやすく醜くなったりします。」


「老いても十分に美しい方はいらっしゃいますよ。」

シズナは本当の秘密は言わずに、薬の服用をためらった。こんなに美しい人たちだ。邪神の力でなにか崩れて
かえって醜くならないだろうか?流石にシズナは何回も危険だと、副作用とか猛毒になるかもしれないと警告した。

だが、彼らは執拗だった。
うんざりとシズナは一人だけ試験ケースとして被験者になる覚悟があるのならと言った。

その中の弱い儚げな美しい女が被験者となった。

薬が服用される。結果はシズナが恐れていた通りだった。はじめは若くなったように見えたが、次第に前より醜くなった。嗚呼。やはり通常の人でさえも副作用はあるから、変な成分を入れると、劇的に効果があるんだ。


シズナは思っていた通り、副作用が激しいことに溜息をついた。

女は鏡を見て、絶叫した。

シズナは落ち着いてと宥めながら、なんとか元に戻しますからもううちの薬はやめてくださいと警告した。


シズナは1週間、その女を治療した。勿論邪神の力を使ってだ。

なんとか女はかつての美を取り戻した。 その時、女は身勝手にも恨んでいた。薬で醜くなった時が忘れられないらしい。シズナに敵意を向けるようになってシズナは辟易した。


美の一族はこどものように恐ろしく幼稚で、思い通りにならないと醜い顔をする・・。
心までは美しくないようだ。


シズナは内面の美もあるのだと美について考えさせられた。

身も心も美しいものがいたら、それこそ天のものではないか・・とシズナは嫌・・生きている限り人間は醜悪からは逃がれることはできない・・。

生そのものが醜悪かもしれないのだから・・。

シズナは死を味わったので、奇妙にも透明な洞察を得た。

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