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第2章 宗教施設

第11話 運命の分岐

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ゴルデアは暁のように、将軍みたいに傭兵団の頭を務めた。
もう子供ではない。 彼は精悍な男性で、一筋縄でもいかない男を慕わせるカリスマ性と包容力を持っていた。
雄々しく、どこか女性的な面もあった。彼は両性具有者なのかもしれない。
ゴルデアは長く髪を伸ばすようになった。それがとても相応しかった。
風にたなびく金の髪、夕日に輝く姿はまるで女神のようだった。まさしく黄金の女神。

彼は、女になるべきだったのかもしれない。シズナはそう思いながらも男性の姿でいるのはなにか理由があるのだろうと思った。

ダリアは地獄の中で咲いた毒花のようにビビットな華やかさを持っていた。
まるで極彩色の世界にダリアは生きている。でもどこか昏く影もある。ダリアの貴族の血の冷徹さと無常さ。僅かな情。ダリアは地獄の女神に相応しかった。

両極の男と女。彼らは仲間でありながらここまで道は違った。

生きる価値のない人をダリアたちは消す。それがダリアの使命となった。

運命の分岐は性ゆえにであった。
ダリアは女ゆえに、痛めつけられた苦界の中にいる女を無視できなかった。
だがゴルデアは男ゆえに、良き道を模索し、傭兵団を創ったのだ。ゴルデアはどこかこどものように戦い続けることが目的だった。強くなること。それだけがゴルデアの目的だった。彼は純粋であった。


性とはなんなのか? ゴルデアが女だったらうまく男たちは従うだろうか?いいえ。分からない。彼が彼で或る限り従っていたかもしれない。


唯の女だったわたしにはわからないことばかりだ。シズナは溜息をついた。

私の血と肉は、やはり特異な力をもっているらしい。医者や研究者が膨大な実験をして、稀な蘇生をしたケースの患者や、動物がいた様だ。
嗚呼・・邪神の力か・・。

これは宗教施設でも最大の秘密となった。


わたしの力はどんどん増していった。わたしの凡庸な心とは裏腹に時と共に力が増す。

わたしはダリアとゴルデアに特別な患者に、わたしの血と肉をもとにした薬を破格の金額で与えたらどうかと相談した。それをもとに、ダリアとゴルデアは更に上に昇りつめるだろう。

勿論、副作用もあるかもしれないが、これは悪魔の賭けであった。

成功すれば、ダリアとゴルデアは途方もない地上での権力と栄誉を得られるかもしれない。


ダリアとゴルデアは一時は迷ったが、覚悟を決めて薬の精製にかかった。
大富豪の客や、途方もなく才能がある人間も老いや死への恐怖にわたしの薬を求めた。

死への恐怖が強いものほど求めるのだ。

わたしは彼らの命を蘇生する。それが内側では変質し未知のなにかに侵食しているかもしれないのに彼らは縋るように無防備に生への欲を見せる。
嗚呼。可哀そうに。気の毒な彼らだ。彼らは餓鬼だ。飢えたものが生を求めてわたしに蟻のように群がる。


それがとてもとても危険な道なのかも知らずに・・甘いものを求めて崖から落ちていく亡者たち。

わたしは沈む花だ。 沈む花に縋り付いても、水底に海底に落下していくだけなのに。

それが彼らの望みなのだろうか?わたしにはわからない。


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