浮生夢の如し

第11話 ウジ虫

日にあたってない女の肢体は真っ白でまるで死体にたかる蛆虫のように白い。
医者は蛆虫のような体をまさぐっている。物好きだな。
いや医者が蛆虫なんだろうか？
蚕は絹を生み出す蟲だった。でも白い手の女は半死人で何も生み出さない。死産の子どもみたいだ。
医者は甘いお菓子のように女の乳房にむしゃぶりつく。あまり大きくないのにな。
少し垂れているけどいいのか？
陰部は毛が生えている。これに少し驚いた。全く生えないと思ったが、やはり半分生きているからか？
おかしな体だ。憑依した俺は女の体を観察した。

なんだかゆっくりと成長しているんだ。
時はとまっていないらしい。医者も白い手の子どもがゆっくりと女の体になるのをみて魔が差したんだろう。
目の前で犯してもいい身体があったら雄としては欲が増すだろう。試したい。好奇心もあるだろう。
男だったし雄だからわかる。おおっと罪人に人の心や良心やらを押し付けるなよ。
可哀相だが、これも医者と女の運命だったんだろうよ。ろくでもない生々しい営みだが生きているな。
羨ましい。どこかで俯瞰的なんだ。俺も実感を味わいたいものだ。
女の陰部は子どもなのに、もう雌の性器になっちまった。医者の雌になったからかな。あそこだけは開発されている。子どもは生まれるのかな？医者の精液は欲望と共に女の陰部、膣や子宮に打ち込まれ、白い濁液が流し込まれる。変な匂いとともにだ。子宮はびくびくと動いている。嗚呼生きているな。
何が生まれるのかな？　死人の子？　よしてくれよ。唯でさえ俺に憑依された半死人の女なのにこれ以上とんでもない運命を背負わせてどうすんだ。
でもあいつは俺も医者も受け入れてしまったし、これも女の運命かね。
俺は少しはらはらして女と医者の醜悪にも生きている営みを傍観した。

なにはらはらしているの？女が少し呆れた感じで俺の意識に囁いた。
女の意識と俺の意識は同居している。
まるで女の体が医者に嬲られているのをみるのはどこか映像を見て居るような不思議な感じなんだ。
嗚呼死んでいるからか？

医者は自分が犯している女は半分死んでいるのがわかっていないんだろうか？
いやわかっているから試しているのか？

知らないわよ。もういいわよ。　女はほっといてというように目を逸らした。
やはり少し自分の体が玩具にされるのは面白くないらしい。機嫌悪そうだ。

俺は女を宥めようかと思った。まあお前も少しは快楽を味わったし、受け入れてしまったし。
女は目をふせた。やめときゃよかったかなと死んだ魚の目をした。

諦めな。これがお前の運命なんだよ。

女が深いため息をついたような気がした。

それにしても医者はお前に飽きないな。ずっと犯している。
女はうん・・・と頷いた。これからどうなるのかなと女は男を見た。
なかなか可愛い顔立ちだ。中の上ってとこかね。俺も女を売り飛ばしたことがあるからまあ素人の目利きで女の品定めをしたことがある。
体は貧相だが、ちゃんと女の体になろうとしている。良かったな。俺は女に笑いかけた。
女は半眼で医者と俺を交互に見て、男って・・と呻いた。なんだよ。

まあお前も半分死んでいるし、何も起こらないよりましだろ。なんのために半分生きているのか分からないし。
そうかなああと女はましなのかなあ。でもこういう運命もあるのね。
がっくりと肩を落とした。

そうだよ。こういう奇妙な運命もあるんだ。俺は女に言い聞かせた。
だって俺と女が繋がったのも不思議だし、何もかも不思議じゃないか。

女はそれもそうだと頷いた。