黄金の狼の傭兵団

栗菓子

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第23話 母と子の話

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サーラも、セレストを一目で伴侶と見抜き、夫婦としての交合を行った。

普通の人は、敵国や他国の者と交わった股の緩い女と偏見の目で見てなじるだろうが、サーラは名前が水の女神の意味だけあって、どこか神秘的な能力、超常的な感覚を持っていた。そんな巫女のようなサーラが、カーラ姫のような稀有な娘を生み出したのだ。


今回も、月の女神や、何かに導かれて、夫婦としての交合をして、子を成す儀式をしたのだろう。

サーラを良く知っている人たちは、彼女が決して愚かな事はしない聡明な女であることを知っていた。
するとすれば上位の神に命じられた時だけだ。

やはり稀な子が産まれるかもしれない。このサイカ国に必要な子が生まれるかもしれない。

そして、カーラ姫も娘特有の潔癖さと不安定な危うさがいつの間にか薄れ、女として成長しつつあった。

処女らしき潔癖さは薄れ、妖艶さが増した。


「カーラ・・貴方も運命の伴侶を見つけたのかしら・・前にもまして美しくなったわ。母である私でさえも見惚れるほどよ・・。それに少し体もまろやかになってきたわね・・。子を孕んだのかしら・・相手は?」


サーラは愛する娘の変容を鋭く観察して、嗚呼・・この娘も伴侶を見つけたのだと悟った。


「お母様・・よく分かるわね。お母様には叶わないわ。 相手はお母様の伴侶のセレストの上官・・ゴルデアよ。
始めて見たわ。男を美しいと思ったことは初めてよ。私の何かがあの方の子を孕みたいと欲を覚えたの。
一夜だけど確実に何かが宿ったわ。
お母様とわたくしは、ともに黄金のゴルデアとそれに関連する男と関係を結んだのよ。
もはや運命としか言いようがない。」


「わたくしたちの生まれる子はいかなる子であろうか?このサイカ国に凶を齎す子でなければよいのだが・・。」

サーラはかすかな憂いを帯びて、娘に縋るような目をした。
カーラは嫣然と微笑んだ。
「お母様・・それもまたサイカの宿命でしょう。また新しい何かが生まれるかもしれません。元々このサイカ国は弱肉強食の国。弱い者にとっては地獄の国ではごさいませんか?
もしかしたら弱い者が力を持つ者になるかも知れません。これも歴史の必然かもしれません。」

カーラは母親のように、心細けな娘の顔をした母サーラに微笑みかけた。

時に、娘は母のようになり、母は娘のようになるのだ。

彼女らは、トオカにもたらした女傑のように、ここサイカで東と西の血が混じりあった稀有な子らを生み出し、サイカに禍福を齎す運命を紡ぐ母親たちなのかもしれない。


時間が、いずれ何かを示す。時のままに任せよう。母親と娘はそう語らった。



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