黄金の狼の傭兵団

栗菓子

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第19話 カーラ姫Ⅱ

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カーラは、母親に裏切られたと幼稚な心が叫んでいたが、次第に鳴りを潜めた。
生き残るためには、敵には弱みをさらけ出してはいけない。

どこかでカーラは母親を恨んでいたが、やはり慕わしくも思っていた。

カーラは淡々と内心は嵐のように荒れ狂っていたが、必死に制御して、有能な姫としてシン将軍に仕えた。

その位カーラは大人になっていた。

ある日、カーラにとって絶対逆らってはいけないシン将軍が、酒で酔っているのか、戯れにカーラに話した。

遠方の国に、『黄金の狼の傭兵団』という強大な軍があるという。それを率いるゴルデアという男は、黄金の長い髪を流して、戦場で戦う男だという。
一癖も二癖もある強者たちをまとめ、率いる統率力や、カリスマ性は見事だという。

是非会ってみたいものよ。一度戦ってみたいとシンは子どものように笑った。

カーラはふうんとやり過ごしたが、美しい金の髪か・・何故かその印象が残って脳裏から離れなかった。

あのシン将軍が興味がある男か・・。


カーラはふと溜息をつきたい思いになった。時々、憂鬱になるのだ。女はこういう時がある。気分にムラがあったり、気候に左右されるところがある。

そして、数か月後、カーラにとって衝撃的な事を最愛の母に告げられた。

「カーラよ。わたしは子を孕みました。わたしはこの子を産みます。これがわたしの運命でしょう。内密に出産します。」

カーラはふっと冷笑したくなった。戯言を。サーラは有能な侍女だ。やはりそんな女の腹が膨らんだら目ざとい女や男が見逃すはずはない。と言った。おろせば良いではないですか。と邪魔な子どもなど・・とカーラは忌々しく呟いた。

母親を奪われたようでカーラは気に入らなかった。

「いいえ。カーラ。わたしはとある縁で呪力者を知っています。わたしの姿を普通に擬態させる術をかけてくださいます。わたしは臨月になるまで働きます。そして信頼できる乳母に頼んで、産みます。もう用意はできています。」

「この子は何か役目があるのでしょう。あまりにも運命的に結ばれて宿した子ですから。」


カーラはみえない何か。運命の神とやらにありとあらゆる罵倒をしたかった。

なんで引き合わせたのか?カーラには理解できないことばかりであった。

カーラは頭痛を抱えながらも、母親の言葉には逆らえなかった。

カーラは、唯、生き延びるために母親にもシン将軍の言葉にも逆らえない娘だった。

運命ね。運命って何なの・・。カーラはうんざりとした。

それに翻弄されながら生き抜いていく女達は多い。中には溺れて救えない女も居る。

カーラとサーラは生き抜く術と才能を持っていたから、なんとか生き延びた。

カーラはあまり変化を好まないが、サーラの言葉には逆らえない。渋々とカーラは弟や妹とやらの赤子の誕生を見守った。






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