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第7章 夢の終わり 真実の終わり
第13話 真実の終わりⅣ
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アイシャは、度重なる不幸に衝撃を受けながらも、必死で気丈に立ち直ろうとしていた。
強い女だ。彼女はこの試練を乗り越えたのだ。
嗚呼。嗚呼。貴女を誇りに思うわ。ひと時であっても貴女の姉であったことを嬉しく思う。
わたしは弱っていって、すっかり寝たきりになっていた。でも不思議、夢の中で、家族の状況がわかる。
わたしは幽体離脱をしているのだろうか?
「お前は死ぬのか?あの悪鬼どもに毒を飲まされてお前は弱っている。でもお前は誰も裁かない。唯受け入れるだけだ。お前は生への渇望はないのか? 生きたい。幸福になりたいと思わないのか?」
何を言うのか。彼は?わたしは唯受け入れるだけだ。
「愚かな女に何ができましょうか。わたしは全てを受け入れることを選択した女です。貴方様の生贄であることを選択した女です。わたしは愚かにも貴方様の魂に幾度も惹かれました。恋に溺れた愚かな女です。」
ハリアン様は不思議そうにわたしの影に潜むもう一人の女を見つめた。
「お前を知っている。俺は以前にもお前に会っていた。お前は俺の女だった。リナリア・・俺が殺した女の名前だ。
思い出したぞ。お前は彼女の生まれ変わりだな。そして俺もあいつの生まれ変わりだ。醜い所業を行った悪魔の名だ。スレイと言う名前だ。 俺たちは同じことを繰り返しているのか? 何故だ? ネリア・・
俺はお前を殺したいが同時に殺したくないとも思っているのに・・。」
「わたしにも分かりません。いつかわかる時が来るまでわたしは貴方と一緒にいるでしょう。また貴方と巡り会うかもしれない。わたしは再び貴方を愛するでしょう。」
ネリアはそう呟いて、ゆっくりと眠るように息絶えた。ネリアは俺の狂信者どもに殺された。
今回の運命は、前の運命と少し違う。彼女は俺を裏切らなかった。彼女は俺の全てを受け入れた。
彼女は俺の女であることを受け入れた。
俺の心の中に何かが芽生えた。悲しみと歓喜。 俺は彼女の死顔に触れ、冷たい唇に熱く接吻した。
死者への抱擁だ。
俺はまたお前を抱擁する。いつかまた出会えたら抱擁する。
俺たちは永遠の夢を見る。愛し愛される恋人が永遠の楽園にいる夢を・・
夢や幻が現実になる時を待っている。
「可愛いリナリア。ネリア。 俺は俺なりにお前たちを偽りなく愛した。でも、まだ何かが足りなかったのだろうか
いつかは満たし満たされる楽園に俺も行けるだろうか。」
俺はそう呟いて一筋の涙を流した。
ネリアの偉大なる魂が、亡骸から浮遊するのを感じた。 嗚呼。ネリア。リナリア。
また思い出したら、お前たちは俺を置いていくのか。
俺はこの退屈と孤独に耐えなければならないのか・・
ハリアン公爵はかつてない寂寥を感じた。途方もない孤独だった。
強い女だ。彼女はこの試練を乗り越えたのだ。
嗚呼。嗚呼。貴女を誇りに思うわ。ひと時であっても貴女の姉であったことを嬉しく思う。
わたしは弱っていって、すっかり寝たきりになっていた。でも不思議、夢の中で、家族の状況がわかる。
わたしは幽体離脱をしているのだろうか?
「お前は死ぬのか?あの悪鬼どもに毒を飲まされてお前は弱っている。でもお前は誰も裁かない。唯受け入れるだけだ。お前は生への渇望はないのか? 生きたい。幸福になりたいと思わないのか?」
何を言うのか。彼は?わたしは唯受け入れるだけだ。
「愚かな女に何ができましょうか。わたしは全てを受け入れることを選択した女です。貴方様の生贄であることを選択した女です。わたしは愚かにも貴方様の魂に幾度も惹かれました。恋に溺れた愚かな女です。」
ハリアン様は不思議そうにわたしの影に潜むもう一人の女を見つめた。
「お前を知っている。俺は以前にもお前に会っていた。お前は俺の女だった。リナリア・・俺が殺した女の名前だ。
思い出したぞ。お前は彼女の生まれ変わりだな。そして俺もあいつの生まれ変わりだ。醜い所業を行った悪魔の名だ。スレイと言う名前だ。 俺たちは同じことを繰り返しているのか? 何故だ? ネリア・・
俺はお前を殺したいが同時に殺したくないとも思っているのに・・。」
「わたしにも分かりません。いつかわかる時が来るまでわたしは貴方と一緒にいるでしょう。また貴方と巡り会うかもしれない。わたしは再び貴方を愛するでしょう。」
ネリアはそう呟いて、ゆっくりと眠るように息絶えた。ネリアは俺の狂信者どもに殺された。
今回の運命は、前の運命と少し違う。彼女は俺を裏切らなかった。彼女は俺の全てを受け入れた。
彼女は俺の女であることを受け入れた。
俺の心の中に何かが芽生えた。悲しみと歓喜。 俺は彼女の死顔に触れ、冷たい唇に熱く接吻した。
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また思い出したら、お前たちは俺を置いていくのか。
俺はこの退屈と孤独に耐えなければならないのか・・
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